※本ページ内の情報は2025年8月時点のものです。

「空間価値の創造と向上」をミッションに掲げ、スマートビルディングやPFI事業(※1)、カーボンニュートラルといった多角的なアプローチで未来の社会基盤づくりに貢献する株式会社Andeco。言語化できていない顧客の潜在的な要望を汲み取り、ゼロから新たな価値を企画・実装するコンサルティングを強みとする。大手総合建設会社をパートナーに、最先端のビル・街づくりを推進する同社は、建築業界の変革をリードする存在だ。大手通信会社での経験を経て同社を創業した代表取締役、早川慶朗氏に、その挑戦の軌跡と事業の核心、そして未来への思いを聞いた。

(※1)PFI事業:公共施設などの建設、維持管理、運営などを、民間の資金やノウハウを活用して行う手法

昇進試験が転機に 大手通信会社から独立した背景

ーーこれまでのご経歴と、独立を決意された経緯についてお聞かせください。

早川慶朗:
大学の建築学科を卒業後、NTTファシリティーズに入社し、当初は設計や積算業務に携わりました。その後に事業開発部門へ移り、IoT(※2)やM2M(※3)といった新規事業を担当。そこではプロジェクトマネジメントから資金調達、チームづくりまで分野横断的に経験でき、現在の事業の礎となっています。

もともと学生時代から、いつかは自分で事業をしたいという思いがありました。その中で独立を決意する直接のきっかけとなったのが、昇進試験に落ちたことです。「この会社ではこれ以上、昇格は望めない」と早い段階で見切りをつけ、かねてからの思いを実現するために自分で事業を立ち上げる決断をしました。

(※2)IoT(Internet of Things):モノのインターネット。さまざまな物体に通信機能を持たせ、インターネットに接続・連携させる技術

(※3)M2M(Machine to Machine):機械同士が人間を介さずに通信し、自動的に制御や最適化を行う技術

ーーどのようにして現在のビジネスモデルを確立されたのですか。

早川慶朗:
退職前から担当していたプロジェクトを個人で引き継げるよう調整し、最低限の収益を確保した上で事業を開始しました。しかし、現在の事業にたどり着くまでには試行錯誤の連続でした。

創業当初はキッチンカーのプラットフォームやアイスクリーム店なども手がけましたが、軌道に乗せることはできませんでした。さまざまな挑戦を経て「空間の価値向上」というテーマを見出し、2020年頃からスマートビル(※4)領域のコンサルティングへと事業が発展していきました。

(※4)スマートビル:IoTやAIなどのデジタル技術を活用して、エネルギー効率の最適化、セキュリティ強化、快適な環境の提供など、ビルの機能や価値を高めた建物。

潜在ニーズを形にする「空間価値創造」という事業の核心

ーー事業の核となる理念と、それを実現するための強みは何でしょうか。

早川慶朗:
「空間価値の創造と向上」が私たちのミッションです。これは、さまざまな事業を整理し、お客様へ提供する価値を突き詰める中でたどり着いた言葉でもあります。このミッションを実現するために最も大切にしているのは、お客様に喜んでいただくこと。お客様自身も明確に言語化できていない潜在的な要望を汲み取り、企画という形に落とし込む。まだ何もないゼロから価値を創造していくことこそ、弊社の最大の強みだと考えています。

ーー現在の事業内容について、具体的な取り組みを交えて教えてください。

早川慶朗:
空間価値を高めるエンジニアリングとデザインを軸に、スマートシティのエリアマネジメントから建物の設備設計、システム開発、施工まで一貫して手がけています。お客様はスーパーゼネコン(※5)が多く、PFI事業にも注力しています。たとえば、何もない公園にカフェとバーベキュー施設を企画段階から手がけ、今では地域に愛される場所に再生させた実績もあります。また、大規模建築における木材利用を支援する、カーボンニュートラル(※6)関連のコンサルティングも展開しています。

(※5)スーパーゼネコン:ゼネコン(総合建設業)の中でも、特に売上規模や技術力、事業領域が卓越している企業

(※6)カーボンニュートラル:温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、全体としてゼロにすること

「ビルづくりといえばAndeco」を目指す未来への展望と人材戦略

ーー今後の展望について教えてください。

早川慶朗:
将来的には「ビルづくりといえばAndecoだよね」と、業界で確固たる認知を獲得することが目標です。その実現のため、好奇心旺盛で、自ら考えて仕事を進められる方と一緒に働きたいと考えています。AIのような新しい技術を使いこなせる、次の世代が中心となる会社にしていきたいですね。

私たちは、経験が浅くても意欲のある方には責任あるポジションを任せており、たとえば弊社が運営するキャンプ場では入社3年目の社員が責任者として活躍しています。このように、実践を通して成長できる環境が弊社の特長です。

ーー最後に、読者へのメッセージをお願いします。

早川慶朗:
技術の進化に伴い、建築のあり方も大きく変わろうとしています。弊社はその最前線で、スマートビル分野におけるMSI(マスターシステムインテグレーター)(※5)という、本来なら大手企業が担うような先進的な役割を担っています。変化の激しい時代だからこそ、挑戦できることは無数にあります。未来の街の使い方を提案し、実現していくプロフェッショナル集団であり続けたいです。

編集後記

NTTグループという安定した環境から、自身の力で道を切り拓いた早川氏。キッチンカーからスマートビルまで、数多の試行錯誤の末にたどり着いた「空間価値の創造」というミッション。それは、顧客自身も気づいていない潜在的な思いを汲み取り、形にする創造的な仕事である。変化を恐れず、常に考え、挑戦し続ける同社の姿勢は、これからの時代を生き抜くビジネスパーソンにとって大きな示唆を与えるだろう。

早川慶朗/1983年大阪市生まれ。京都大学大学院工学研究科建築学専攻を修了後、2007年4月に株式会社NTTファシリティーズに入社。2014年に独立し、株式会社Andecoを創業。未来につながる空間価値の創造をテーマに、公共施設の指定管理やParkPFI事業などの施設運営と、建築×ICTの専門性を活かし、スマートビルづくりを行う。