※本ページ内の情報は2025年10月時点のものです。

「音楽だけでは食べていけない」。アーティストとしての夢と現実のはざまで、営業という道を選んだ髙橋一行氏。自身の個性を売り込み、顧客の信頼を積み重ねる中で、社員2名の小さな会社を成長させ、株式会社ベストクルーズの代表取締役に就任した。「やりたいことに制限をかけない社風」を掲げる髙橋氏に、これまでの歩みと未来への展望を聞いた。

「夢」も「営業」も捨てない。商品ではなく自分を売り込むことで道をひらいた

ーーどのような経緯で、入社されたのでしょうか。

髙橋一行:
私はもともと音楽をやっていて、アーティストになる夢を追いかけていました。しかし、音楽だけで生活するのはなかなか難しい状況でもありました。音楽をやり続けるためにもお金は必要だけど、就職してしまうと音楽に関わる時間が減ってしまう。そんな葛藤がある中、父が社員2名ほどの小さな広告会社を経営していたので、まずはそこで働いてみようと考え、入社を決めました。

営業として働き始めた私ですが、常に、商品を売るより、自分という人間を売り込んでいる感覚でした。そのおかげか、広告主の方々と何度もお会いしているうちに「髙橋だから頼みたい」と言ってもらえるようになりました。

さらに、「CMで使うオリジナル曲をつくりたい」というクライアントがいたのですが、当時は大きな会社に依頼すると制作費がかなり高い時代。そのクライアントにはそれまでいろいろな広告でお世話になっていたので、私が音楽活動をしている話をしたところ、「CMの曲をつくらないか」と声をかけてくださり、営業からスタートした仕事とクリエイターとしての自分がつながった瞬間でした。

自分がつくった制作物や音楽がちゃんとその世の中に見てもらえて、お金に変わるという経験をして、すごく感動したのを覚えています。

ーー社長に就任されるまでの経緯を教えてください。

髙橋一行:
社員2名の小さな会社を、営業活動を通じて10名規模まで育てた頃、父から「お前はどうするんだ」と問われました。音楽の道に進むのか、それともこのまま会社を継ぐのか。そのとき私は迷わず「会社を引き継ぐ」と決めました。

理由はシンプルで、「この仕事なら、自分のクリエイティブ魂も活かし続けられる」と感じたから。広告という仕事は、クリエイティブとビジネスが交差する場所。営業の楽しさも制作の楽しさも感じていた私にとって、この選択はいちばん自然な道だったと思います。

手段に縛られず、課題解決のパートナーへ

ーー現在の事業内容と強みについて教えてください。

髙橋一行:
私たちはもともと屋外広告の開発を得意としてきました。ですが、時代とともにお客様の課題も変わります。お客様と深く関わる中で「本当に必要なのは何か」を一緒に考えるようになると、自然と看板だけでなく、電車広告、空港メディア、テレビCM、デジタルプロモーション、インストア施策まで領域が広がっていきました。

広告というのは手段のひとつにすぎません。今は「何を伝えたいのか」「そのために最適な手段は何か」を一緒に考えるパートナーでありたいと思っています。

今、私たちが特に力を入れているのは、オフラインとオンラインを掛け合わせたマーケティング支援です。リアルとデジタル、それぞれの強みを組み合わせて、相乗効果を生み出す。これが私たちの最大の強みです。デジタル領域は今後さらに注力したい分野であり、オンライン施策の強化が会社全体の成長戦略の核になっています。

ーーどんな人と一緒に働きたいと考えていますか。

髙橋一行:
私自身が音楽と営業、二足のわらじで歩んできたからこそ、社員にも「こうでなければいけない」という枠は設けたくありません。むしろ、多様なバックグラウンドやスキルを持った人が集まることで、チームは強くなると考えています。

私自身、ゲームのドラクエが好きで、会社の組織のことをドラクエのパーティー(同じ目的のために集まった仲間)にたとえて話をすることがあります。チームメンバー全員が戦士でも、全員が魔法使いでもパーティーは成り立ちません。違う個性や役割があるからこそ、冒険は続いていきます。

ビジネスも同じです。それぞれの得意分野を持ち寄り、ときに壁を越えて支え合う。そうした仲間とともに、これからも新しい挑戦を重ねていきたいですね。

編集後記

「営業も音楽も、どちらも自分の一部」。髙橋社長の言葉は、ベストクルーズという会社の在り方そのものだ。音楽で磨いた表現力と、営業で培ったコミュニケーション力。このふたつが自然に交わる場所に、同社のクリエイティブとマーケティングの強みがある。課題解決を第一に考え、手段に縛られず最適解を探す姿勢。そして「やりたいことに制限をかけない」という自由な社風。個性を尊重し、力を発揮できる場を求める人にとって、この会社はきっと魅力的なフィールドになるだろう。

髙橋一行/1979年、千葉県生まれ。大学卒業後、ベストクルーズに入社。営業職として事業拡大に貢献し、社員2名だった小さな会社を売り上げ3倍にまで成長させる。2010年取締役就任、2015年より代表取締役を務める。現在は広告事業を軸に、オンラインとオフラインの両軸からお客様のマーケティングの課題解決に取り組んでいる。また、アーティスト・音楽クリエイターとしても活動中で、数々の楽曲を世に送り出し続けている。