
世界的な屋外広告会社ジェイシードゥコーの日本法人として、2000年に設立されたエムシードゥコー株式会社。バス停や情報パネルなど、屋外の公共空間にある設備「ストリートファニチャー」と広告事業をかけ合わせ、日本国内に広めている企業だ。2022年に代表取締役社長に就任したマリック・ルマーヌ氏に、事業の強みや今後の展望をうかがった。
世界規模の広告事業と日本文化への深い理解が成功の鍵
ーー社長のご経歴や、入社のきっかけをおうかがいできますか。
マリック・ルマーヌ:
私は、まだ大学生だった1990年に初めて日本を訪れました。日本で社会人となり、20年以上のキャリアを積む中で、エムシードゥコーの成長には常々興味を持っていました。
「エムシードゥコー」は、フランス発のグローバルな屋外広告媒体社ジェイシードゥコーグループの日本法人としてスタートした会社であり、本国ではおそらくその名を知らない人はいません。フランスの屋外広告は、ジェイシードゥコーだらけなのです。
私はB2B、B2Cを問わず、様々な業界で業務に携わる機会に恵まれ、建設、食品・飲料、ラグジュアリーブランド、従業員福利厚生など、幅広い分野において貴重な知見を蓄積し、その多くは事業戦略策定に関わるものでした。この度、代表に就任したことを機に、これらの知見をジェーシードゥコーにおける職務に活かしたいと考えています。日本は島国であり、他の国とは異なる商習慣や慣習を持つため、私の多様な経験は経営に活かされると信じています。
ーー貴社はどのように事業を拡大していったのでしょうか。
マリック・ルマーヌ:
屋外広告媒体の管理と広告の提案を同時に行う弊社のビジネスモデルは、実に独特です。公道上の規制が多いことから、「広告付きバス停の設置は日本では不可能」とも言われてきました。自治体や事業者の方々に納得いただくのに時間はかかりましたが、長い目でビジネスと向き合ってきたことが成功の要因になったといえるでしょう。
この粘り強さは、一つの企業や地域に人が根付くという日本の文化に合っているとも思います。どんなに難しい事業でも諦めない姿勢が、周囲から「この会社は信用できる」と受け入れられるきっかけになりました。日本で立ち上げたプロジェクトで、中断したものは一つもありません。
また、「ジェイシードゥコー」と「三菱商事」の合弁会社として、長期的なパートナーシップを続けてきたことも重要な点です。一般的な合弁会社は、プロジェクトが一段落すると解散しがちですが、三菱商事は今も私たちの大切なパートナーです。
デジタル広告付きのバス停を中心に便利なサービスを展開
ーー貴社の事業内容と強みを教えてください。
マリック・ルマーヌ:
屋外広告媒体社として、公道やショッピングモール、空港などに広告媒体を設置しています。ただ広告を出すだけではなく、広告付きのバス停「B-Stop」をはじめとする、ストリートファニチャーを手がけていることが弊社の特徴です。
ランドロード(Landlord)はイオングループやセブン&アイグループ、国際空港といった大手企業様が中心です。広告媒体の所有者(メディアオーナー)である弊社にとって、広告会社の皆様はパートナーにあたります。
弊社の大きな強みは、インパクトと自然な接触を兼ね備えた屋外広告メディアをつくれる点です。特に大型のデジタルサイネージ広告は、出勤時や買い物へ行くときなど、意識せずとも人の目を引きます。
美しい街づくりに貢献することを第一に、バス停の清掃やメンテナンスも怠りません。さらに、ベンチや充電スポット、Wi-Fi施設といった多彩な無料サービスを提供しています。これにより、自治体側にもメリットのある広告運用を展開できるのです。
地域との連携と組織体制の強化で会社を次のステージへ

ーー今後の展望をお聞かせください。
マリック・ルマーヌ:
日本の広告市場は世界第4位の規模を誇ります。「ジェイシードゥコー」グループの子会社としては、日本国内でさらなる成長を遂げなければなりません。マーケットの規模にふさわしい会社になることが目標です。
主な戦略は、新しいサービスの導入と屋外広告のデジタル化、それに伴う取引先の強化です。パリのように、外を歩けば弊社の広告が見つかる街を日本の各都市で実現するには、地域の皆様の理解が欠かせません。
たとえば、広告の反対側が近隣の地図になっているパネルは普及させやすいでしょう。また、地域情報のポスターをデジタル広告に置き換えることで、地震発生時などの緊急速報をすぐに周知できます。街の利便性向上という観点からも、事業をアピールしていきたいですね。
ーー組織づくりの方針や、求める人物像についてもお聞かせください。
マリック・ルマーヌ:
弊社の業績は毎年伸びており、ここ3年間は2桁の成長を記録しています。20年以上かけて築いてきたネットワークが、やっと実を結んだといえるでしょう。同時に、各部署の採用に力を入れ、新しい世代を育て、組織体制を盤石にしなければならない段階でもあります。
おかげさまで、屋外広告ビジネスにおける業界を代表するリーダー企業として活動しているため、面白いプロジェクトに関われる環境であることは間違いありません。特に、若い世代の方が入社すれば、外資系ならではのハイペースで自分のキャリアを築ける会社です。
弊社は部署やオフィスの枠を越え、全社員が一丸となり、同じゴールへ向かっています。そのため、仲間が抱える課題にも目を向けつつ、自分の仕事に取り組める人柄が大切です。
ダイナミックな思考と粘り強さ、成長意欲を持ち、チームワークを重視できる方と、ぜひ一緒にエムシードゥコーを次のステージへと導いていきたいです。
編集後記
母国・フランスと異なる日本の文化にふれながら、さまざまな業界を経験してきたマリック・ルマーヌ社長。彼ならではの知見とノウハウ、外資企業という強みが合わさり、日本におけるエムシードゥコーの可能性は拡大した。そして、「街づくりに貢献する広告」の価値が世間に根付くことによって、今後さらなる飛躍を遂げるだろう。

マリック・ルマーヌ/1969年、フランス生まれ。IPAG 及びThe Franco-Japanese Management Centerを卒業。サンゴバングループ、リシュモングループ、フレンチ F&B ジャパン、エデンレッド・ジャパン等を経て、2022年にエムシードゥコー株式会社の代表取締役社長に就任。フランスと日本の架け橋となるため、フランス商工会議所及び、大使館下のフランス貿易振興機構の活動にも注力している。