※本ページ内の情報は2025年9月時点のものです。

在留外国人向けの人材派遣事業を軸に、売上を伸ばすCare Earth株式会社。5期連続で200%以上の成長を達成している。同社は人材サービスにとどまらず、不動産や通信、スーパーマーケット事業まで展開。日本で暮らす外国人の衣食住を支える、独自の経済圏構築を目指している。この急成長を牽引するのが、代表取締役の中村佳史氏である。両親の背中を見て自然と経営者を志し、製薬会社での経験を経て起業した。幾多の困難を乗り越え、いかにして現在のビジネスモデルを確立したのか。その軌跡とビジョンに迫る。

食卓での会話が原点 自然と根付いた経営者としての視点

ーーこれまでのご経歴についておうかがいできますか。

中村佳史:
実家が薬局を経営していますが、継ごうとは全く考えていませんでした。いや、厳密に言うと、勉強が全くできなかったので継ぐという選択肢がありませんでした。(笑)

ただ、両親がともに経営者だったので、食事の場などでの会話はいつも仕事の話が中心だったのです。たとえば、「どこに薬局ができた」「うちはもっとこうしていく必要がある」といった会話が日常的にありました。そんな環境のお陰もあり、将来は両親を超えたい、自分で何かを創り上げ誇れる人間になりたいという想いがその頃から薄っすらありました。

大学卒業後、製薬会社に就職しました。当時は、どのような仕事が自分に合っているのか確信が持てずにいたのです。そこで、まずは実家とゆかりのある分野ということで、薬学部出身ではありませんでしたが、薬に関われる製薬会社を選びました。身近だった鉄道のようなインフラ企業など、他の業界も幅広く検討したものの、最終的には製薬会社に絞って就職活動を行いました。

不屈の精神を培ったサラリーマン時代

ーー製薬会社でのご経験で特に印象に残っていることは何でしょうか。

中村佳史:
相手が医師なので、個性的な方が多かったのが印象的です。普通の営業をしていても話を聞いてもらえませんでした。そのため、出勤前の朝6時から駐車場で待機したり、冬の寒い中、先生にお会いするためだけに3〜4時間待ち続けたりすることもありました。どんな営業にも共通することかもしれませんが、普通のことをしていても普通で終わってしまうので、とにかく人と違うことを+αでやることは徹底して継続していたかもしれません。

また、将来独立し、自分で自分の人生を切り開き、人の人生も背負えるような人間になりたいという意思もありました。総じて、サラリーマン時代の経験は大きな財産となり今を駆け抜けることができていると考えております。

ーー独立に至るまでの経緯をお聞かせください。

中村佳史:
入社2年目から、将来の独立を見据えて副業を始めました。しかし、何から手をつけるべきか分からず模索していたところ、偶然にも先輩が人材紹介の仕事をされていたご縁で、まずは業務委託という形でスタートしたのです。

しかし、その道のりは決して平坦ではありませんでした。朝から晩まで本業に取り組んだ後、副業に時間を費やす毎日で、心身ともに余裕のない日々が続きました。その上、事業は半年ほど売上が立たず、先が見えない真っ暗なトンネルをがむしゃらに走っている、そんな時期もありました。

それでも諦めずに続けた結果、事業は少しずつ軌道に乗り始め、ついには本業との両立が難しいほど多忙になりました。そこで初めて、製薬会社を辞めて事業一本でいくことを決断したのです。

苦境から生まれた外国人特化という光明

ーー人材派遣事業において外国人派遣に特化されたきっかけを教えてください。

中村佳史:
2021年7月から派遣事業を始めましたが、当初は日本人を対象にしていました。しかし、他社と同じような求人広告媒体で派遣スタッフの募集をしても全く集まらない、集まったとしてもすぐに離脱してしまう状況でなかなか上手くいきませんでした。

そんな中、ある外国人スタッフとの出会いが大きな転換点となりました。当時は日本で仕事がしたい外国人がたくさんいるので紹介させて欲しいと伝えても、まだまだ外国人の受け入れに難色を示す企業さんが大多数でした。ようやく一社外国人でも受け入れOKな企業さんとのお取引に辿り着き、そこでかなり良い評価をいただきました。そこから現在のメイン事業である派遣事業が本格的に加速していきました。ちなみに、冒頭のある外国人スタッフは現在ケアアースグループの役員にまで登り詰めています。

急拡大を支える 人を信じる組織論

ーー貴社の事業内容と強みについて教えていただけますでしょうか。

中村佳史:
弊社の主力事業は人材派遣業で、登録者のほぼ98%が外国人です。製造業や物流倉庫、飲食店、ホテルの清掃、学校給食といったサービス業などの業種の企業様とお取引をさせていただいております。

それに付随して、MVNO(格安SIM)事業、不動産事業、特定技能外国人の受け入れ支援事業なども展開しております。更に2025年8月からは外国人向けのスーパーマーケットも開始し、日本在住の在留外国人の方々が安心して日本で暮らしていただけるよう、衣・食・住のトータルサポートができる体制を構築しています。

ーー仕事で大切にされている考え方をお聞かせください。

中村佳史:
会社も人であると考えてます。呼吸もしてます、感情もあります、価値観もあります。人との唯一の違いは寿命があるかないかで、常に問題意識を持ち謙虚な姿勢でハードワークをし続ければ、会社は永続的に存在し続けることができると信じています。

誰が舵取りを行っても、しっかり回るような仕組みを作っていくことも大切です。そして何より、会社は一人一人の従業員が各自の役割を果たすことで成り立っており、その従業員一人一人は自分の生活のために、家族を守るために、なりたい自分になるために、欲しいものを買うために、色々な想いを持ち働いているはずです。

その中で会社の愚痴をはきながら働くより、「今日も会社が前に進むためにやろう」というような前のめりなスタンスで働く方が、時間が経つスピードも早く、何事にも前向きになり、会社の中でも無くてはならない存在になり、収入や役職も上がり、自己肯定感も上がり、と良い循環が生まれると思ってます。そういうスタンスの社員で溢れ返っている会社は強いと思いますし、伸び方も他とは一線を画すのではないかと考えます。このことからも従業員一人一人が、良い循環を創り出し仕事の楽しさを自分で見い出してもらうことを大切にしています。

ーー社員の主体性を引き出すために具体的に取り組んでいることはありますか。

中村佳史:
最近は、役職のない社員にも、権限を持たせるようにしています。たとえば、営業担当者が達成すべき目標数字も、会社から押し付けるのではなく自分で決めさせるのです。このように権限を委譲することで、やらされ感をなくし、より主体性が増すのではないかと考えています。現在、少しずつ試しているところです。

目指すは在留外国人のインフラ 壮大な経済圏構想

ーー今後の事業におけるビジョンと、それを実現するための具体的な戦略についてお聞かせください。

中村佳史:
弊社の中長期の目標は、日本で暮らす世界中の人々の豊かなライフスタイルを創造することです。メイン事業である派遣事業と、特定技能外国人の受け入れ支援事業において”働く”の提供、MVMO(格安SIM)事業において生活を便利にする”通信ネットワーク”の提供、不動産事業において安心して暮らせるように”住む家”のサポート、食品事業において”食”のサポートなど生活に不可欠なサービスを提供しCare Earth経済圏を創り上げ、日本経済のさらなる発展に欠かせない企業になります。また、メインの派遣事業において多くのお取引企業様が増える一方で、後継者不足に悩まれている社長様などが合えば、M&Aなども積極的に行い、その熱い想いと素晴らしい事業をしっかりと発展させていきたいとも考えております。

編集後記

幼少期から自然と根付いていた経営者への道。中村氏の言葉の端々からは、目標への純粋な探求心と、困難すらも楽しむかのような力強さがうかがえた。製薬会社時代の経験、売上がゼロだった起業の苦悩、そして一つの出会いを経て花開いた「外国人特化」という戦略。その全てが現在の急成長の礎となっていることは間違いない。単なる人材サービスではなく、在留外国人の生活を豊かにするインフラを構築するという壮大な構想は、日本社会にも新たな価値をもたらすだろう。同社が描く未来の実現に、注目していきたい。

中村佳史/1994年1月4日大阪府池田市生まれ、龍谷大学を卒業後、外資系製薬会社へ入社。3年間営業活動に従事し、2019年にCare Earth株式会社を設立。現在は200名の従業員と共に、メインの派遣事業の他にも、MVNO(格安SIM)事業、不動産事業、専門スキルを持つ外国人の就労を支援する特定技能事業、スーパーマーケット事業など在留外国人の豊かなライフスタイル創造の実現を目的に、多角的に経営を行っている。