※本ページ内の情報は2025年9月時点のものです。

保育・子育て支援事業は、少子化という社会課題に直面し、業界全体が縮小傾向にある。そのような背景の中、全国に113の保育施設と児童発達支援施設、学童保育などを展開するHITOWAキッズライフ株式会社は、業界の常識を覆す挑戦を続けている。その中心人物が、代表取締役社長の髙石尚和氏だ。異業種でのキャリアを経て保育の現場にたどり着いた髙石氏。同氏は最前線で働く人々のために事業を成長させてきた。今回、その歩みと経営への思い、壮大なビジョンについてうかがった。

経歴の原点と保育業界への参入

ーー現在に至るまでの経歴についてお聞かせください。

髙石尚和:
私は20代で起業した後に大学へ進学するという、少し特殊なキャリアを歩みました。その後、独立系のベンチャーキャピタル、そして保育園のコンサルティングを手がける会社に転職。このときに初めて保育園のコンサルティングを担当し、保育の現場を知ることになります。

保育園のコンサルティングに携わるまで、正直に申し上げると、働く女性の姿に触れる機会があまりなく、その重要性を十分に理解できていませんでした。しかし、保育園で働く女性たちは、子どものために命がけだと感じるほど真剣でした。この経験が、私の価値観を大きく変えるきっかけとなります。そして、現場で素晴らしい仕事をしている人々を支える仕事にこそ、大きな価値があると強く感じるようになりました。

2014年に現在のHITOWAライフパートナー株式会社に入社し、保育園の開発から運営を担当。その後はHITOWAホールディングスに転籍し、経営企画として、保育とフランチャイズの経営企画を兼任しました。経営企画という立場から、グループ全体戦略の一つとして、現場支援や事業推進に努めてきました。そうした取り組みを経て、2018年にHITOWAキッズライフ株式会社の代表取締役社長に就任した次第です。

ーー現場とのコミュニケーションではどのようなことを心がけていましたか。

髙石尚和:
当時、現場との距離感が課題だったため、現場に寄り添うことを第一に考え、具体的には毎月開催している園長会でアンケートを実施。そこで出た意見はすべて開示し、一つ一つに回答していきました。私は、アンケートは現場との大切なコミュニケーションツールであると捉えています。

また、園長の採用面接は、基本的に私が必ず担当しています。なぜなら、保育園は園長次第で大きく変わるからです。入社の段階からしっかりと向き合い、日頃から密にコミュニケーションを取ることで、信頼関係を築くことを大切にしています。本社の改革も進めながら、できないことや難しいことも含め、その理由を丁寧に説明し、理解を得る努力を続けてきましたし、今後も続けていきます。

事業を支える確固たる経営哲学とDX推進

ーー事業を推進する上で、積極的に取り組まれていることはありますか。

髙石尚和:
現在、DXに力を入れています。子育て支援の事業領域を広げていく上で、デジタルの力は不可欠だと考えたためです。今後は、保育園の運営だけでなく、児童発達支援施設や学童保育など、子育てに関わるさまざまな問題をワンストップで解決できる組織に進化していく必要があります。その実現のために、システムの会社を立ち上げることは必須でした。そこで、キッズライフの事業成長とともに、グループ戦略の一環としてキッズコネクト株式会社(以下、キッズコネクト)を設立しました。

ーー仕事をする上でどんなことを大切にされていますか。

髙石尚和:
「現場最優先」と「結果を出すこと」の二つです。

「現場最優先」という点では、保育園で働く保育士や子どもたち、そして、システムをご利用いただいている自治体や施設の人々、この現場の人々を最優先に考えています。たとえば、メンバーには私とのミーティングに遅刻することや電話に出ていいと伝えています。お客様を第一に考えなければ、弊社の事業は成り立ちません。

「結果を出すこと」は、我々が担っている事業を「やりきる」ことだと思っています。良いシステムや保育を提供する、提供するまでやり続けることが一番重要です。その結果、メンバーに給与という形で報いることは、すべて事業を成長させて結果を出すからこそ実現できると考えています。

業界の常識を覆すユニークな事業と人材育成

ーー事業内容とその特徴について教えていただけますか。

髙石尚和:
キッズライフは、首都圏を中心に保育園や児童発達支援施設、学童保育を運営する子育て支援の会社です。会社の強みは、現場で働く保育士や園長です。彼らが日々の保育を支えてくれているからこそ、会社は成長できています。

キッズコネクトは、保育業界に入ったシステム会社としては最後発といってもよい会社です。保育園や幼稚園の運営に必要な補助金の請求システムや登降園システムを開発しており、約100の自治体に導入いただいています。キッズライフという現場があるため、リアルなユーザーの意見を直接聞くことができ、現場と一緒にシステムを育てていけるのが大きな強みです。

ーー貴社で活躍されている人物の特徴はありますか。

髙石尚和:
私は面接をする際に、「子どもが嫌いではないこと」「自分の考えを相手に伝える努力ができる人」「手段を目的としないこと」の3つを確認しています。たとえば、保育園をつくることやAIを使うことは社会課題を解決するための「手段」であり、良い保育を提供したり、業界を良くしたりすることが「目的」です。目的のために手段をどう活用できるかを考えられる人と一緒に働きたいと思っています。

日本の保育を世界へ そして業界全体の未来へ

ーー今後のビジョンについてお聞かせください。

髙石尚和:
子育て支援に関するあらゆるサービスをワンストップで提供できる「子育て支援業界の商社」になることが目標です。また、保育士不足という業界全体の課題を解決するべく、自社のノウハウを広く提供し、日本全体を現場の人々と一緒に支援していく所存です。

さらに、日本だけでなく世界を視野に入れ事業を推進すべきと考えています。日本の保育や療育のノウハウは、海外でも通用するはずです。弊社のノウハウやプロダクトをパッケージ化して海外に展開することで、日本の輸出産業の一つになることを目指します。

ーー最後に、読者へのメッセージをお願いします。

髙石尚和:
弊社は「子どもの未来をつくりたい」「社会課題を解決したい」という熱意を持った人にとって、さまざまな事業に携われるチャンスがある会社です。弊社のメンバーは、通常の会社ではなかなか経験できない、社会性の高い大きな仕事に挑戦し、成長しています。他の同業他社にはない領域に挑戦できるので、自分自身の仕事の幅やキャリアの可能性を広げたい方には最適な環境だと自負しています。

編集後記

社会貢献に対する強い思いと、そのための確固たる経営哲学を持つ髙石氏。同氏の言葉からは現場で働く人々への深い敬意と、業界の未来に対する情熱が強く感じられた。単に事業を拡大するのではなく、業界全体が抱える課題を解決し、日本の保育の素晴らしさを世界に広めようとする壮大なビジョンは、日本の未来を明るく照らす。この飽くなき挑戦は、「保育」というインフラのあり方そのものを変えていくだろう。

髙石尚和/20代で起業した後に東京理科大学に進学。26歳で卒業し、独立系ベンチャーキャピタルに就職。コンサルティング会社での勤務を経て、2012年にHITOWAホールディングス株式会社に入社。保育施設の開発から運営全般における業務改革を担う。その後、HITOWAキッズライフ株式会社の代表を兼任。2019年にキッズコネクト株式会社を設立し、給付管理システム事業の立ち上げや自治体向けコンサルティング事業等を展開。2025年、一般社団法人こどもDX推進協会代表理事に就任。