※本ページ内の情報は2025年10月時点のものです。

高品質なデザイナーズ家具を、誰もが手を伸ばしやすい価格で提供するCAGUUU株式会社。同社はメーカーが消費者に直接商品を販売するD2Cの家具ブランドを展開し、日本の家具業界に変革をもたらしている。独自のビジネスモデルを武器に、約3000点という圧倒的な商品バリエーションと高いコストパフォーマンスを両立。同社を率いるのは、代表取締役社長の中村勇輝氏だ。戦略コンサルタント、連続起業家を経て、世界的なファッションブランド「SHEIN」の日本進出をゼロから成功に導いた人物である。輝かしい経歴を持つ同氏が、次なる挑戦の場になぜ家具業界を選んだのか。独自のビジネスモデルと、業界の未来を見据えるビジョンについて話を聞いた。

プログラマーからコンサルタントへ。連続起業家・中村勇輝の原点

ーー社会人としてのキャリアはどのようにスタートされたのでしょうか。

中村勇輝:
大学院でコンピューターサイエンスを専攻した後、戦略コンサルティング会社に入社しました。そこでは業界を問わず多様なプロジェクトに携わり、ビジネスの知見を深めています。コンサルタントとして2年半勤務しましたが、大学時代から「いつか自分で事業をやってみたい」という思いが常にありました。そんな中、出張中の飛行機の中でふと事業アイデアを思いついたのが、最初の起業のきっかけです。

ーー最初の起業ではどのような事業を手がけられたのですか。

中村勇輝:
インフルエンサーのオリジナルグッズ販売事業です。当時、小ロットからでも商品を生産できる仕組みはありました。一方、自身のブランドを持つインフルエンサーはまだ少なかったため、そこにチャンスがあると考えました。企画からデザイン、生産、販売までをワンストップで担い、収益を分配するモデルを立ち上げ、初年度から黒字化を達成しています。

ゼロから仕掛けたSHEIN日本進出。成功の先に見据えた新たな挑戦

ーーその後、どのような事業を手がけられたのでしょうか。

中村勇輝:
2020年秋頃にファストファッションの通販事業「SHEIN」の存在を知り、日本市場での可能性を確信しました。当時、日本ではまだ事業展開されていなかったため、創業者に直接アプローチすることを決意します。個人的なつながりがなかったため、ビジネスSNSでコンタクトを試み、担当者に行き着きました。

その結果、当初は「日本進出の予定はない」と断られてしまいました。しかし諦めきれず、日本市場の進出戦略をまとめた詳細な事業計画書を送付。その熱意が伝わって創業者との対話が実現し、日本市場の可能性を認めてもらい、プロジェクトが始まりました。

ーーその後、再び自ら起業の道を選んだ理由をお聞かせください。

中村勇輝:
これまでの事業では、黒字化は達成できても事業規模の天井を感じることがありました。「SHEIN」では非常に大きなビジネスを経験しましたが、その経験を生かして、より自分のビジョンを実現したいという思いが強くなりました。在籍中も常に「規模が大きく、自分の経験が活きる事業は何か」を考え続けていました。

日本の家具業界が抱える課題。自身の原体験から生まれた事業構想

ーーさまざまな選択肢の中から、なぜ家具業界を選ばれたのでしょうか。

中村勇輝:
情報収集をする中で、日本の家具業界の構造が古くなっていると感じました。市場が二極化し、消費者の選択肢が極端に狭まっているのです。二極化の一つは、大量生産による低価格な巨大ブランド。もう一方は、デザイン性は高いものの非常に高価な高級ブランドです。私自身も数年前にマンションを購入した際、デザインの気に入ったソファを購入しました。しかし、非常に高価な上に届くまでに6ヶ月もかかった経験があります。

この経験から、多くの消費者が「デザイン」か「価格」のどちらかを妥協せざるを得ない状況にあるのではないかと感じました。それであれば、「高品質なものを、納得できる価格で提供する」ことができれば、大きな価値を生み出せると考えたのです。

高品質・低価格・多品種を実現する独自のビジネスモデル

ーー貴社事業の強みについて教えてください。

中村勇輝:
CAGUUU」はオンライン販売を主軸とした家具のD2C(※1)ブランドです。※楽天はこちら

最大の特徴は、ODM(※2)生産の仕組みを活用している点にあります。多くの家具ブランドは、自社開発した商品を大量に生産することが前提です。そのため在庫リスクを考慮し、どうしても万人受けするベーシックな商品に偏りがちになります。それに対し、弊社は工場側が開発した商品を仕入れるため、ごく少量の単位でラインナップできます。これにより在庫リスクを大幅に抑え、約3000点という非常に幅広いバリエーションの商品をそろえられます。

また、売れ残った在庫の処分コストといった無駄がないため、高品質・高デザインの商品をリーズナブルな価格で提供できています。最高のコストパフォーマンスと豊富な選択肢こそが、私たちの根本的な強みです。

(※1)D2C:「Direct to Consumer」の略で、企業が自社で企画・製造した商品を、卸売業者や小売店などの仲介業者を挟まずに、自社のECサイトやSNSなどを通じて直接消費者に販売するビジネスモデル。

(※2)ODM:「Original Design Manufacturing(オリジナル・デザイン・マニュファクチャリング)」の略で、委託する側が商品の企画やアイデアを提供し、製品の設計・デザインから製造までをまとめて委託先のメーカーに任せるビジネスモデル。

オンラインとオフラインの融合。日本を代表するブランドへの展望

ーー今後の事業展開はどのようにお考えですか。

中村勇輝:
ブランドの信頼度向上が不可欠です。その施策として、株主でもある本田圭佑さんにブランドアンバサダーへ就任していただきました。

もう一つの重要な戦略がオフライン展開です。「実際に見て品質を確かめたい」というニーズに応えるため、2つの方法を検討しています。1つは既存の家具販売店に商品を取り扱っていただく方法、もう1つは自社店舗の出店です。具体的には、他店の店舗を「CAGUUU」のショールーム拠点として活用させていただき、お客様に実物の品質を確かめていただく施策を進めます。実物に触れて品質に納得いただければ、展示外の商品もオンラインで安心してご購入いただける可能性が広がります。

また、ショールームをきっかけに生まれたオンライン売上を店舗と共有します。これにより、オンライン通販と店舗が共存共栄できる新しいモデルを築きたいと考えています。

ーー最後に、長期的なビジョンをお聞かせください。

中村勇輝:
「高品質な家具をリーズナブルに」提供する国民的ブランドとして、まずは日本で広く知られる存在になることを目指します。その先には、日本のブランドとして海外に進出することも見据えています。私たちが提供している価値には絶対の自信がありますので、それをいかにユーザーに伝え、信頼を築いていくか。それがこれからの使命です。

編集後記

コンピューターサイエンスを学んだプログラマーから、戦略コンサルタント、そして連続起業家へ。中村氏のキャリアは、常に論理的な思考で課題を発見し、大胆な実行力でその解決に挑んできた軌跡そのものである。自身の原体験から見出した家具業界の二極化という課題に対し、ODM生産という合理的な仕組みで風穴を開ける。その冷静な分析力と、業界の常識を覆そうとする情熱。CAGUUU株式会社が日本の家具市場のゲームチェンジャーとなる未来に、大いに期待したい。

中村勇輝/2013年、東京大学大学院 学際情報学府 総合分析情報学 修士課程に進学。2016年卒業後、Booz & Company(現・PwC Strategy&)に入社。2018年にインフルエンサーを起点としたブランドプロデュース会社を創業し、初年度から事業の収益化に成功。2020年、スマート家電領域に特化した新会社を設立。2021年にファッションブランド「SHEIN」の日本市場責任者 兼 日本法人代表に就任。2024年、家具ブランド「CAGUUU」を設立し、代表取締役社長に就任。公式SNS(InstagramX)はこちら。