※本ページ内の情報は2025年10月時点のものです。

千葉県を拠点に、高品質な自社施工を貫く株式会社ワイケイアート。同社を率いる代表取締役の上田晴夫氏は、飲食業での成功と挫折を経てリフォーム業界へ転身した経歴を持つ。幾多の苦難と出会いを経て確立された「社員のため」という確固たる理念は、いかにして生まれ、組織を動かしているのか。その軌跡と未来への展望に迫る。

独立への渇望と若き日に味わった事業の挫折

ーー起業への思いが芽生えた経緯をお聞かせください。

上田晴夫:
父が小さな塗装店を経営しており、中学時代から塗装の仕事をしていました。周りの友人も夏休みなどはアルバイトをしていたので、この頃から働くことはごく自然なことでした。また、中学生の頃から「いつか自分で商売をしたい」と漠然と考えていました。経営者である父の背中を間近で見て育ったことも、その一因です。当時はとにかく「お金を稼ぎたい」という気持ちが強く、周りが高校へ進学する中、私は就職の道を選びました。3年間働いた方が、お金も経験も先に手に入れられると考えたからです。

ーーその後のご経歴についておうかがいできますか。

上田晴夫:
21歳の時、友人に誘われて足を踏み入れたホストクラブが最初の転機でした。そこでの縁を活かし、スナックを間借りして深夜に営業する事業を開始。がむしゃらに働いた結果、一時は4店舗まで拡大するほど順調でした。

しかし、その裏側で当時の仕事の進め方への葛藤が常にあり、次第に仕事への情熱を失っていきました。折からの景気悪化も重なり、最終的に全店舗を閉店。この挫折経験を通して、「地に足のついた真面目な仕事で再起したい」と強く決意しました。

大きな苦難の末に辿り着いた「社員第一」という経営哲学の誕生

ーー飲食業で挫折を経験された後、どのようにして再起されていったのでしょうか。

上田晴夫:
水商売を辞めて路頭に迷っていたとき、たまたまリフォーム営業の会社の求人を見つけて就職しました。家族を養うため、とにかくお金を稼ぐ必要があったので、歩合制の営業職に懸けたのです。入社後は本をたくさん読んで勉強し、懸命に働いた結果、2カ月で営業成績トップになりました。20代半ばで月収が100万円を超える頃から、「これは自分でできるのではないか」という自信が芽生えました。そして、半年ほどで訪問販売のリフォーム営業として独立を果たします。

ーー経営者として、特に印象に残っている出来事はありますか。

上田晴夫:
創業当初は、正直なところお金を稼ぐことや会社を大きくすることしか考えていませんでした。しかし、10期目を迎える頃、社員による横領や、やることなすこと全てが裏目に出るような苦しい時期を経験。この大きな苦難が、経営に対する考え方を根本から変えるきっかけになりました。

ちょうどその頃に出会ったのが、稲盛和夫氏の経営塾「盛和塾」です。そこで経営哲学や会計学を学び、「経営とは人のためにある」という考え方に深く感銘を受けました。それまでの自分本位な考えを猛省し、お客様のため、そして何よりも「社員のため」に会社を経営しようと心に誓いました。このときの決意が、現在の社員を第一に考える経営スタイルの礎です。今では逆に、社員に寄り添いすぎてしまうくらいで、そのバランスの取り方に日々頭を悩ませています。

品質と誇りの源泉 同業他社も注目する「職人の自社雇用」

ーー貴社の主力事業における強みについてお聞かせください。

上田晴夫:
最大の強みは、自社施工を徹底している点にあります。多様な専門分野の職人を正社員として雇用しているのが、他社との差別化ポイントです。一般的なリフォーム会社のように外注に頼るのではなく、営業部と工事部が密に連携し、責任を持って施工管理まで行っています。この包括的な自社施工体制は、業界でも珍しいものです。弊社のノウハウを学ぶため、同業他社の方が見学にいらっしゃることもあります。

外注の場合、どうしても仕事への責任感やお客様への思い入れが薄くなりがちです。自分の担当箇所が終わればそれで終わり、となってしまい、品質の低下やアフターフォローの不備につながりかねません。社員として職人を抱えることは、確かにコストはかかります。しかし、それ以上にお金には代えられない価値があります。お客様に質の高いサービスを提供し、社員が仕事に誇りを持てるからです。

ーー社員の方々のために、大切にされていることは何ですか。

上田晴夫:
弊社では社員が自主性を持ち、楽しく仕事に取り組める環境を何よりも重視しています。私自身、若い頃は現場で殴られるような厳しい世界で働いてきました。だからこそ自分の社員には、絶対にそんな思いをさせたくないのです。「前の会社よりやりがいを感じる」「毎日が楽しい」といった社員の声を聞くことが、経営者として最大の喜びです。

新人育成においても、職人の世界にありがちな「見て盗め」という古い慣習ではなく、積極的に「実践」させることを意識しています。実際に現場で経験を積むことが、最も早く成長できる方法だと考えているためです。

自社の成長から業界の成長へ 仲間と共に描くリフォーム業界の未来図

ーー今後の会社の展望についてお聞かせください。

上田晴夫:
中期的な目標として、売上30億円、社員100人体制の実現を目指しています。もちろん会社の成長も大切ですが、それ以上に実現したいことがあります。社員が「仕事が楽しくて仕方ない」と思えるような組織をつくることです。

そして今後は、フランチャイズ展開にも力を入れていく方針です。弊社の強みである自社施工のノウハウを、同業の仲間たちに提供します。資材調達の仕組みなども共有し、共に成長していくことをめざします。この取り組みが、リフォーム業界の地位向上につながるものと確信しています。

ーー最後に、この記事の読者に向けてメッセージをお願いします。

上田晴夫:
もし今、明確な目標がなかったり、自分の将来に悩んでいたりするなら、ぜひ一度、弊社を見学しに来てください。学歴は関係ありません。ここには、仕事の楽しさとお金、そして何より「やりがい」があります。弊社に来れば、きっと誰もが輝けるはずです。20代、30代の若い力に大いに期待しています。

編集後記

中学卒業後、自らの腕一つで道を切り拓いてきた上田氏。利益追求に走った過去さえも率直に語る。その言葉には、大きな挫折を乗り越えた経営者だけが持つ重みがあった。苦難の末に辿り着いた「社員のため」という理念。それこそが、今の上田氏を支える揺るぎない覚悟なのだろう。社員の成長を心から喜ぶその姿勢は、多くの若者に働くことの希望を与えるに違いない。

上田晴夫/1976年生まれ、千葉県出身。21歳から飲食業で起業。紆余曲折しながら2004年にワイケイアート創業。2009年に株式会社へ組織変更。戸建て・マンションのリノベーションやリフォーム工事業を主軸に、不動産売買、公共工事、設計・企画コンサルタント業務などを手がける。現在、4つの事業の経営に従事。各SNSアカウント「ワイケイちゃんねる」「上田社長Instagram」「公式Instagram」「上田社長TikTok」「公式TikTok」はこちら。