※本ページ内の情報は2025年10月時点のものです。

マンションリフォームを専門に手掛け、物件探しから施工までワンストップでサポートする株式会社サンリフォーム。同社はリフォーム業界では珍しい日曜・祝日休みや労働時間管理を早期から導入し、働きやすい環境づくりを推進してきた。2025年に代表取締役社長へ就任した大西健夫氏は、大工見習いからキャリアをスタートさせ、現場経験を活かした組織づくりに取り組んでいる。生産性の向上と働きやすさの両立を掲げ、「本物の優良企業」を目指す大西氏に、その経営哲学と今後の展望を聞いた。

ものづくりへの憧れとリフォーム業界への転身

ーーこれまでのご経歴についてお聞かせいただけますか。

大西健夫:
子どもの頃から工作や日曜大工が好きで、将来はものづくりに携わりたい、手に職をつけたいと漠然と考えていました。就職活動ではハウスメーカーなど建築関係の企業を受けましたが、職人の募集は多くありませんでした。経営学部出身ということもあり、職人として技術を身につけて将来工務店の経営ができればというイメージを抱いていました。

3年ほど大工見習いを経験したものの、技術的な面で挫折を感じ、リフォーム業界へ転身しました。しかし、工務店時代に素材に関する知識や仕事の進め方を学んだことは、その後、営業としてお客様と話す際に大いに役立っています。何より、私自身が大工仕事を経験しているので、職人の気持ちや作業に必要な時間・工数が分かります。そのため、現場管理では的確な指示を出せますし、時には作業を手伝うこともありました。この現場感覚があったからこそ、入社後早い段階で成果を出せたと考えています。

アナログな旧体制を刷新した独自のDX推進

ーー貴社へ入社後、どのようにキャリアを歩まれましたか。

大西健夫:
入社後は営業職として、接客から現場管理まで一貫して担当しました。当時は固定給が少なく、インセンティブの割合が大きい給与形態でした。そのため、成果が収入に直結することにやりがいを感じ、入社2年目で社内トップの成績を収めることができました。その後、役職がつき後輩ができると、自分の成績だけを追いかけるのではなく後輩の育成に注力するようになりました。チーム全体の成果を上げ、会社を大きくしたいという思いでマネジメントに取り組むようになりました。

キャリアを積む中で、営業だけでなく管理部門の仕事にも興味を持つようになりました。特に財務や会計を学び直したことで、営業部門で売上をつくる視点と、管理部門で会社全体の数字を見る視点の両方を経験できました。この両方の視点を持てたことが、現在の経営に活きています。

ーー組織運営において課題に感じていたことは何ですか。

大西健夫:
店長になった2012年頃、社内の業務管理がアナログで、情報が分散していることに課題を感じていました。お客様の情報を何度も入力するような非効率な作業が発生していたため、弊社独自の基幹システム(業務の中核となる情報システム)の開発を決断しました。これにより業務を一元管理でき、全店舗の状況がリアルタイムに把握可能になりました。蓄積した10年以上のデータは、エリア特性の分析や戦略的な出店計画など、データに基づいた経営判断の基盤となっています。

全方位の信頼を目指す「本物の優良企業」への道

ーー会社としては、どのようなビジョンや目標を掲げていらっしゃいますか。

大西健夫:
新たに「本物の優良企業になる」というビジョンを策定しました。これは、お客様、従業員、協力業者、そして社会全体から「よい会社だ」と思っていただける存在を目指すという意味です。働きやすい環境を提供するだけでは生産性が上がりません。それでは従業員への還元も将来への投資もできないため、働きやすさと成果の追求は両立させなければならないと認識しています。

ーー働き方改革と生産性の両立について、具体的な取り組みを教えてください。

大西健夫:
離職者を減らし、長く働ける会社にするためには、働きやすい環境整備が不可欠です。弊社はリフォーム業界では珍しく日曜・祝日を休みにしています。2015年頃からは、労働時間短縮のためにパソコンを夜8時に強制シャットダウンする仕組みを導入しました。ほかにもフレックス制度や、社員が休日数を選べる「選択休日制」を取り入れています。さらに、将来の資産形成を支援する「企業型確定拠出年金」など、時代に合わせて制度を整えてきました。

専門特化戦略と関東市場への進出という展望

ーー事業の強みと今後のエリア戦略についてお聞かせください。

大西健夫:
弊社は「マンションリフォーム専門企業」としてブランディングを行っています。マンションのリフォームは自由度が高い一方で、管理規約や構造上の制約といった特有の難しさも存在します。私たちは、その制限を熟知しているからこそ、お客様の「想像通り」で終わらない、「想像以上」の空間を創造できると考えています。

専門特化することで深く蓄積してきた技術やノウハウは、特に予期せぬ事態への対応力に表れます。現場では解体後に図面になかった障害物が見つかるなど、イレギュラーな問題がつきものです。そうした不測の事態にも、豊富な経験を基に最適な解決策を迅速にご提案できる対応力が、お客様の安心感につながっていると自負しています。

また、不動産仲介も手がけており、リフォームのプロの視点から逆算した物件提案が可能なワンストップサービスも大きな強みです。今後は、関西圏で培ったこれらの強みを武器に、関東の都市圏でもシェアを拡大していく方針です。

ーー今後、どのような人材を採用していきたいですか。

大西健夫:
現在はキャリア採用に注力しています。リフォーム業界経験者はもちろんですが、個人向けの営業経験者など、何かしらの専門性をお持ちの方なら歓迎です。採用で最も重視しているのは、入社後のミスマッチを防ぐこと。お互いが正直に話し合い、会社の理念や働き方に共感した上で入社していただくことが、長く活躍してもらうために不可欠だと考えています。

弊社は人間関係が非常に良好な点が強みです。隔年で実施する社員旅行などを通じて、店舗を超えたコミュニケーションが活発になっています。人間関係が理由で退職する人が少ないことも、長く働ける環境につながっていると感じます。

ーー最後に、読者へのメッセージをお願いします。

大西健夫:
リフォームは、自分が考えたものが形になり、お客様から直接喜びの声を聞ける、非常にやりがいがある仕事です。大変な面もありますが、弊社はそのやりがいを長く感じ続けられるような受け皿でありたいと考えています。弊社の考え方に共感し、一緒に会社を盛り上げてくださる方をお待ちしています。

編集後記

大工見習いからキャリアをスタートし、営業、マネジメント、そして経営者へと歩みを進めてきた大西氏。その言葉からは、現場で培った知見と経営的な視点が見事に融合していることがうかがえる。業界の慣習に甘んじることなく、DXによる効率化と働き方改革を実行する姿勢は、まさに変革者そのものである。「本物の優良企業」を目指すという言葉には、顧客、従業員、社会のすべてに対する誠実な思いが込められていた。同社の挑戦が、リフォーム業界全体の未来を明るく照らすことを期待したい。

大西健夫/1975年大阪府生まれ。龍谷大学卒業後、3年間の大工修行を経て、2003年に株式会社サンリフォームへ入社。営業、店長、部長、役員を歴任し、2025年に同社代表取締役社長に就任。「社員が長く働ける会社こそが良いサービスを提供できる」と考え、社内制度の整備と従業員の業務効率化に力を入れている。