※本ページ内の情報は2025年11月時点のものです。

太陽光発電システムの設計から施工、アフターメンテナンスまでワンストップで手がける株式会社サンエー。7000件以上の豊富な実績を誇り、顧客一人ひとりに寄り添う完全オーダーメイドの提案を強みとする。同社を率いる代表取締役の庵﨑栄氏は、コロナ禍の苦境を「第二創業期」と位置づけた。そして徹底した社員教育で組織の再生を成し遂げた背景には、社員を家族のように思う独自の価値観があった。業界の先駆けとしての誇りと日本のエネルギー自給率向上という壮大な目標を胸に、新たな挑戦を続ける庵﨑氏の思いに迫る。

若き日の情熱と苦悩 そして独立に至るまでの軌跡

ーーこれまでのご経歴についてお聞かせください。

庵﨑栄:
工業高校を卒業後、電気工事業界に職人として飛び込みました。高校生の頃から漠然と「いつかは社長になる」という夢があり、当時は「親方になる」という目標を掲げ、その実現に向かってとにかく仕事に没頭していました。仕事を覚えるのが楽しく、休みの日も「どこか現場はないですか」と社長に聞いて回るほど、休日が惜しいと感じるほどでした。

ーーどのような経緯で独立に至ったのでしょうか。

庵﨑栄:
23歳の頃、ある現場でお盆から大晦日まで一日も休まず働いたことがありました。しかし、結果的にその現場は赤字に終わりました。当時の社長からは「自分の給料さえ稼げない未熟なお前が、一人前に意見や口答えをするのは生意気だ」と一蹴されてしまいます。この言葉を受け、仕事への姿勢や発言のすべてを否定されたことで、私の心は折れてしまいました。

一度会社を辞め、半年ほどサーフィンをして過ごしていたところ、以前の会社の上司から仕事の依頼を受けました。そこでの働きが評価され、次々と依頼をいただくようになり、仲間を集めて事業を拡大していったのが弊社の始まりです。

社員を家族と想う価値観 組織の再生を促した転機

ーー経営者として大切にされている価値観をお聞かせください。

庵﨑栄:
最も大切にしているのは「愛=LOVE」です。私は、社員みんなにとってのお父さんであり、お母さんのような存在でありたいと思っています。社長と社員という立場を超え、一人の人間として尊重し合う、家族のような関係が理想です。良いことも悪いことも率直に伝え合い、お互いの些細な変化に気づいて自然に声をかけ合える関係性。こうした見返りを求めない「無償の愛」に基づいた行動こそが、互いを深くリスペクトし合うことにつながると考えています。そして、この温かい環境こそが、社員一人ひとりが相手主体で考える力を養い、人間力を高める土壌になると信じています。

ーー経営における最大のターニングポイントについてお聞かせください。

庵﨑栄:
コロナ禍での売上高減少が最大の転機でした。会社が本当につぶれてしまうかもしれない、という危機感を覚えました。そのとき、まさに「企業は人なり」という言葉を痛感した瞬間でした。そこで、これまで蓄えてきた内部留保をすべて投じてでも、社員教育に注力しようと決意しました。この期間が、弊社の「第二創業期」の始まりとなりました。

ーー具体的にどのようなことに取り組まれたのでしょうか。

庵﨑栄:
まず、社員と心でつながるため、潜在意識に関するセミナーを導入しました。今では全社員の90%以上が受講しています。これによって、社員同士が本音で語り合える強固な関係性を築けました。また、旧来の人事評価制度を刷新し、営業、工事、総務といった全職種で、それぞれの役割に応じた新しい制度をつくり直しています。

さらに、社員から「これを学びたい」という声があれば積極的に支援します。「学びたいように学びなさい」というスタンスで、成長の機会を提供しています。

業界を拓いた先見性と顧客本位のワンストップ体制

ーー太陽光発電事業に転換した経緯は何だったのでしょうか。

庵﨑栄:
1994年に独立しましたが、下請け(※1)の立場では経営が安定しないと考えていました。何としても元請け(※2)にならなければならないと考えたとき、「これしかない」と確信したのが太陽光発電です。

この事業を手がけて28年になりますが、当時はまだ世間の関心も薄い状況でした。しかし、エネルギー問題が深刻化する未来を見据え、この事業で自立した経営基盤を築くと覚悟しました。この先見性が、現在の弊社の強みにつながっています。

(※1)下請け:元請けと契約を結び、仕事を請ける立場のこと。
(※2)元請け:発注者から直接仕事の依頼を請ける立場のこと。

ーー貴社の事業における最大の強みは何でしょうか。

庵﨑栄:
最大の強みは、自社で営業、設計、施工、アフターメンテナンスまですべてを行うワンストップ体制です。これまで積み上げてきた7000件以上の実績も、私たちの大きな強みです。

私たちは、お客様にとって本当に必要なものは何かを第一に考え、不要なものは「いらない」とはっきりお伝えします。そのうえで、一軒一軒の状況に合わせた完全オーダーメイドのベストな提案をすることが可能です。営業職は真に顧客のためになる提案を、施工管理職は高い品質を追求しています。

ーー社員の主体性を育むために、どのような文化を大切にされていますか。

庵﨑栄:
「とにかくチャレンジ!」を推奨する文化です。現状のやり方がベストだと満足せず、常に改善の視点を持ってほしいと伝えています。社員から出てくる新しいやり方や改善提案は積極的に評価します。このような環境が、社員一人ひとりの主体性を育み、組織全体の成長を後押ししていると考えています。

日本の未来を見据えた事業展望とリーダー育成計画

ーー今後の事業展望についてお聞かせください。

庵﨑栄:
弊社の思いや技術品質を共有できるパートナーを全国に募り、フランチャイズ展開を進める計画です。この取り組みを通じて、日本全国のエネルギー自給率向上に貢献したいと考えています。また、エネルギーという広い視野から食料自給率への貢献も目指します。その一環として、陸上での養殖事業といった未来を見据えた多角的な挑戦も始めました。

ーーそのビジョンを実現するために、特に注力されていることは何ですか。

庵﨑栄:
経営幹部と後継者の育成です。会社の未来を託せる次世代のリーダーを、社内から育てたいと考えています。ビジョンはあっても、それを実現する戦略を描き、実行できる人材がいなければ意味がありません。そのため、若いうちから必要な能力を身につけられる教育機会を提供しています。将来の代理店開発などを担える幹部候補を、積極的に育成する仕組みを整えています。

ーー最後に、これからの時代を担う若者たちへメッセージをお願いします。

庵﨑栄:
若いときに学んだことや苦労した経験は、歳を重ねてから10倍の価値を生みます。嫌なことやつらいことからは誰もが逃げたいものですが、それこそが自分を成長させてくれる最高の材料となるでしょう。困難から逃げずに、ぜひ果敢に挑戦し続けてください。

編集後記

庵﨑氏の話から強く印象に残ったのは、両極ともいえる二つの要素が固く結びついている点だ。太陽光発電の未来を28年も前から見通す事業家としての鋭さと、社員を家族のように想う人間的な温かさ。この二つは相反せず、人と会社を成長させる原動力なのだろう。愛情が未来への責任を生み、困難に挑む力を育む。その確かな信念が、日本のエネルギー自給率向上という壮大なビジョンを現実のものとしていくに違いない。

庵﨑栄/高校卒業後、電気工事の会社に就職。1994年に独立し、電気工事業を開始。下請けから脱却するため、太陽光発電事業に着目し、事業拡大したことを転機に株式会社サンエーを設立。代表取締役として「技術力×人間力」を掲げ、社員と共に成長を続けながら、脱炭素社会とエネルギー自給率向上に貢献し、次世代のための持続可能な未来づくりに挑戦している。