
株式会社デザインエイエムは、単なるグラフィックデザイン制作に留まらない、本質的なブランディングデザインを提供している。同社は、顧客の要望を遥かに超える提案をすることを信条とし、長期的なパートナーシップを通じて顧客企業の発展を支えてきた。その結果、リピート率は9割を超える。代表取締役の溝田明は、過去に過労で生死をさまよった経験と、その後の稲盛和夫の「盛和塾」での学びがターニングポイントとなったと語る。揺るぎない利他の精神と、中小企業の伴走者として掲げる成長戦略について、同氏に話をうかがった。
信頼の経営へ導いた大きな試練と学び
ーーこれまでのご経歴と、現在の経営スタイルの原点についてお聞かせください。
溝田明:
中学生の頃から美術が得意で、大学ではデザインを専攻しました。卒業後は「3年間だけの修業」のつもりで上京、都内のデザイン制作会社に就職。しかし、「東京で自分の力を試してみたい」という思いが募り、結果的に10年弱の修行をしました。
「将来はデザインの仕事で独立する」と決めて、98年に独立、約2年後の2000年、WEBデザインの需要が高まっていたことも後押しとなり、株式会社デザインエイエムを設立。ところが、会社設立から5〜6年後、過労が原因で倒れてしまうという大きな試練にも見舞われました。自律神経もおかしくなり、私の身体が完治するまでのおよそ2年間は、取締役や当時のスタッフたちが一生懸命に会社を支えてくれたのです。
この経験から、組織としての本当のあり方を知りました。そして、私が一人で業務を抱え込むのではなく、社員を信頼して任せることの重要性を痛感したのです。この出来事が、現在の経営の礎となっています。
ーーその他にも転機となった出来事はありますか。
溝田明:
危機を乗り越えた後も、まだプレーヤーの意識が抜けず、マネジメントに悩んでいました。そんな中、2018年に「盛和塾」へ入塾させていただいたのです。そこで学んだのは、「経営とは、全従業員の物心両面の幸せを追求すること」という考え方でした。さらに、「経営者の心を高めることが経営を伸ばす」という教えもありました。
この学びから、自分のためではなく他人や世の中を幸せにするという「利他の精神」を核にすると決め、揺るぎない経営の軸となっています。
見えない本質を可視化するブランディングデザイン

ーー経営者として大切にされている価値観について教えてください。
溝田明:
現在、私はデザイナーとしての役割は10〜20%程度に抑え、経営と社内育成に注力しています。その中で経営者として大切にしているのは、「顧客の要望をいかに遥かに高く超えられるか」という点です。顧客の期待を遥かに超える提案をすることを信条としています。そのために、会社の課題や背景まで深くヒアリングし、同じ目線で向き合うことを徹底しています。
企業の見えない根っこを探り、その本質を見える化することを「ブランディングデザイン」と定義しています。私たちの仕事は単にかっこいいものを作るのではありません。企業の理念や良さを徹底的に探り当て、それらを客観的な視点で、今の時代に合わせて可視化します。そうすることで、お客様の期待を大きく超えることができ、感動やリピートにつながっていると自負しています。
深いヒアリングと、同じ目線で向き合う姿勢がお客様から評価されています。「とにかく話をよく聞いて寄り添ってくれる」とご満足いただいています。その姿勢がリピート率9割超という実績となり、お客様との長期的なお付き合いにつながっているのだと思います。
社員の幸せと売上倍増を目指す未来戦略
ーー今後の戦略についてお聞かせください。
溝田明:
私たちは、事業に関わるスタッフの給与を大幅に引き上げたいと考えています。そして、誰もが誇りを持って働ける環境を築くつもりです。それを達成するために、5年後の2030年までに売上を倍増させることを目標に掲げています。
そして、特に社員の幸せを願う企業に伴走したいと考えています。ブランディングを通じてクライアントの成長を加速させることが、相乗効果を生み出すと信じています。その結果、企業と社会を共に豊かにできると考えているからです。今期は「変化と成長」をテーマに、新規取引先の開拓や地方企業へのサポートにも積極的に挑戦します。
ーー最後に、読者であるビジネスパーソンや経営者の方々に向けてメッセージをお願いいたします。
溝田明:
私たちはデザインやブランディングを通じて、単に見た目を飾るのではありません。その会社が持つ本来の価値や魅力を引き出します。そして、社員の皆様が自社に誇りを持てるような、そんな芯の通った経営の伴走者でありたいと願っています。世の中を良くしたい、社員を幸せにしたい。そんな熱い思いを持った中小企業・中堅企業の皆さま、ぜひ私たちと一緒に明るい未来への旅を始めましょう。
編集後記
溝田氏の言葉からは、「利他の精神」が経営の隅々にまで浸透していることが伝わってくる。特に、過労で生死をさまよった経験は印象深い。そこから「全従業員の幸せを追求する」という揺るぎない信念を生んだエピソードには、真の経営者としての深みが凝縮されていた。デザイナーとしての鋭い視点と、経営者としての高い視座。この二つが融合したからこそ、顧客の見えない本質まで掘り下げ、期待を超える提案ができるのだろう。リピート率9割超という数字が、その寄り添いの姿勢を何よりも雄弁に物語っている。「中小企業の伴走者」として5年で売上倍増を掲げる同社の挑戦は、日本の多くの企業にとって未来を照らす光となるに違いない。

溝田明/1966年愛媛県生まれ、高知大学教育学部デザイン専攻卒業。デザイン制作会社を経て1998年に独立。2000年株式会社デザインエイエムを設立。「ともに、明るい未来への旅を。」という理念のもと、企業のCI・VI・ロゴなどのグラフィックデザイン、ブランディングを軸に活動している。著書「本質を一瞬で伝える技術」(KADOKAWA中経出版)の出版や、NHK「クローズアップ現代」等に出演実績がある。