※本ページ内の情報は2025年11月時点のものです。

誰かと会うとき、まず立ちはだかるのは「日程調整」という小さな壁であろう。その煩わしさを当たり前のように解消し、月間800万人以上が利用するサービスがある。それが、ミクステンド株式会社が運営する日程調整ツール「調整さん」と累計登録者数が46万人を超えた「TimeRex(タイムレックス)」である。しかし、同社が目指しているのは、単なる時間短縮だけではない。彼らが本当に見据えているのは、日程調整という小さな行動の先に生まれる、人と人との新しい出会いや、未来を動かす「始まり」を創出することである。なぜ彼らは、徹底的にシンプルな操作性にこだわるのか。そして、このサービスが描く未来は、我々の日常をどう変えていくのであろうか。同社代表取締役社長の北野智大氏が語る、プロダクトに込めた熱い思いと壮大なビジョンに迫る。

プロダクト開発の原点とターニングポイント

ーーこれまでのご経歴と、起業に至るまでの経緯についてお聞かせください。

北野智大:
私は関西出身で、大学在学中からフリーランスとしてプログラミングやアプリ開発、ホームページ制作などを行っていました。しかし、一人でできることには限界があり、より多くの人に使われる大きなサービスを作るには、チームで動くことが不可欠だと感じていました。そこで、学生の身分を活かしてチームでのものづくりを学ぶため、株式会社リクルートホールディングスが募集していた新規事業のインターンに参加したことが、私の人生における最も大きな転換点であると考えています。

ーーチームでプロダクトを開発する経験から、どのような学びがありましたか。

北野智大:
それまでデザインからコーディングまでを一人で行っていましたが、リクルートのインターンでは、それぞれの分野で専門家がチームを組んでプロダクト開発に取り組んでいました。デザインのプロ、エンジニアのプロ、そしてプロダクトマネージャーや、顧客開拓・マーケティングを担うビジネスサイドのプロなど、それぞれの専門家が協力することで、初めて良いプロダクトが世に出せることを、肌で感じることができたのが大きな学びでした。

ーーその学びを経て、貴社で人材を採用される際はどのような点を重視されていますか。

北野智大:
採用の観点は複数ありますが、最も重視しているのは「この人と一緒にプロダクトを作っていけるか」という点です。これは開発者だけでなく、プロダクトが世の中に届くまでの全てのビジネスサイドのメンバーを含めて考えています。一つのチームとして、違和感なくプロダクトを提供できる「仲間」であるかを直感的に見極めるようにしています。ものづくりやサービスを通じて、人々の生活を良くしたいという思いを持つメンバーが多いですね。

「調整さん」と「TimeRex」の2軸戦略とサービスの強み

ーー貴社の事業内容について、改めてご紹介いただけますでしょうか。

北野智大:
「調整さん」は、飲み会や旅行などのプライベートな日程調整を効率化できるサービスで、月間800万以上のユーザーに利用されています。一方で、月間46万以上のユーザーに利用されている「TimeRex」は、ビジネスシーンに特化した日程調整の自動化サービスです。Googleカレンダーなどと連携し、最適な日程候補を自動で提示するなど、ビジネスにおける日程調整業務を解決します。

ーー類似サービスが複数ある中で、貴社のプロダクトがトップシェアを誇る理由は何でしょうか。

北野智大:
最もこだわっているのは、誰もが直感的に使えるシンプルな操作性です。機能の数だけで見れば競合サービスの方が多機能な場合もありますが、日程調整はITに不慣れな人でも使う可能性があるため、誰にとっても使いやすいシンプルさを徹底的に追求しています。頑張らないと日程調整ができないサービスではなく、ある程度何も考えなくても自然と日程が決まるような体験こそが重要だと考えており、その利便性が選ばれている理由だと思います。

日程調整のその先にある「出会い」の創出

ーー今後、日程調整サービスを通じて、どのような社会を実現していきたいとお考えですか。

北野智大:
私たちのミッションである「はじまりをもっと近くに」という言葉には、人と人との出会いを円滑にし、新たなきっかけが生まれる社会を作りたいという思いを込めています。日程調整を効率化することで、これまで「面倒だから」という理由で流れてしまっていた、人と会う機会を創出したいと考えています。これは、個人的な約束だけでなく、新たな仲間を迎えるための面接など、あらゆる場面で人と人との出会いを創出し、社会全体にプラスの影響をもたらすと信じているからです。

日程調整の分野は、日本だけでなく世界共通の課題であり、まだまだ大きな可能性を秘めていると考えています。私たちは、単なる効率化を超え、ユーザーが意識することなく予定が決まる状態を目指しています。将来的には、ユーザーが「ご飯に行きたい」とサービスに依頼するだけで、相手との日程調整、さらにはお店の予約まで自動で行われるような、まるで一人ひとりに秘書がついているかのような体験を提供したいと考えています。

この未来を実現するため、「調整さん」と「TimeRex」の2つのプロダクトを両軸で展開し、プライベートとビジネス両方の日程調整を効率化することで、一人の人生における出会いの機会を最大化し、社会全体を豊かにすることに貢献したいと考えています。

編集後記

今回、北野氏から「調整さん」と「TimeRex」の話を伺い、単なるツールの効率性にとどまらない、深い哲学に触れることができた。日程調整の煩わしさを解消する先に、人と人がより簡単に出会い、そこから新しい「きっかけ」が生まれる社会の実現を描いているという言葉が印象的であった。そのために、複雑な機能を追加するのではなく、徹底的にシンプルなUIを追求し、既存ユーザーの体験をより良くすることに注力するという姿勢は、真のユーザーファーストを追求する同社の強みであり、多くの企業にとって示唆に富むものであった。

北野智大/1990年、大阪府生まれ。大学4年時に株式会社リクルートホールディングスのインターンとして「調整さん」の開発チームに加わる。2年間のインターン経験後、大学を中退。フリーランスのエンジニアとして同事業に携わる。2018年2月に起業し、翌月リクルートから「調整さん」を事業譲受。