
乗ること自体が目的となるプレミアムカーに特化し、「共同所有」という新しい形で所有体験を提供する、株式会社RENDEZ-VOUS。高額な車両コストや維持管理の煩雑さといったハードルを取り払い、単なる移動手段ではない、車がもたらす本質的な喜びと人生の豊かさを追求している。自身の原体験から「喉から手が出るほど欲しかった」というサービスを形にした代表取締役の浅岡亮太氏。同氏が事業を通じて届けたい本質的な価値は「余白」にあるという。その独自の経営に関する考え方と、車を楽しむ文化の再構築にかける思いに迫った。
メガベンチャーでの経験が生んだ創業の確信
ーー現在の事業を始めようと思われたきっかけをお聞かせいただけますか。
浅岡亮太:
私自身が、喉から手が出るほど欲しかったサービスだったからです。新卒1年目に念願だったランドローバーの「ディフェンダー」を購入したのですが、実際に所有してみて、その維持コストの高さと稼働率の低さに衝撃を受けました。当時住んでいた場所の駐車場代は月5万円で、免許取り立てのため保険料も高い。加えて税金や車検、メンテナンス費用を考えると、所有し続ける負荷は想像以上でした。
それほどコストをかけて維持しているにもかかわらず、仕事が忙しく実際に乗れるのは週末くらいで、年間で多くても48日程度。この非合理的な状況を目の当たりにし「自分と同じように感じている人は多いはずだ」と痛感したことが、事業の原点です。
ただすぐに起業したわけではありません。早稲田大学在学中に起業してバイアウトを経験し、その後株式会社DeNAや株式会社メルカリといったメガベンチャーで新規事業の立ち上げに携わってきました。こうしたキャリアを重ねる中で、構想実現の知見が積み上がる一方、この領域に挑む人は現れませんでした。「誰もやらないのであれば、いよいよ自分がやるしかない」。そうした思いが確信へと変わり、創業を決意しました。
ーーどのようにして現在のビジネスモデルを構築されたのですか。
浅岡亮太:
まず着目したのが、車の「稼働率」です。調べてみると、全国における車の平均稼働率はわずか4.2%といわれています。つまり、9割以上の時間はガレージで眠っているのです。「一人の所有では無駄が多すぎる」というこの課題を解決するヒントになったのが、馬や船、別荘などの世界で既に存在していた「共同所有」の文化でした。この仕組みを車に応用すれば、コストを分担しつつ、誰もがもっと気軽に車を楽しめるようになる。そう確信し、現在の事業モデルを構築しました。
シェアではないオーナーシップがもたらす本質的な価値

ーー「共同所有」にこだわる理由とは何でしょうか。
浅岡亮太:
オーナーシップ、つまりモノに対する「責任と義務」を持っていただくためです。私たちのサービスは最低でも1年間の契約となり、その期間、オーナーとして車と真剣に向き合っていただきます。責任と義務を持って接するからこそ、車の本質的な魅力や深みが理解できます。時にはネガティブな部分も含めて、単発の利用では決してわからないことがある。それが、本当の意味での所有体験だと考えています。
ーー経営者として大切にされている価値観についてお聞かせください。
浅岡亮太:
人生の究極のゴールは「幸せ」であること。そしてその「幸せ」とは、お金があれば得られるものなのか?これまで様々な成功者と呼ばれる方々を見てきましたが、本当に幸せそうに見えるのは、仕事以外に夢中になれる何かを持つ人でした。つまり、人生に「余白」がある人です。私自身もそうありたいですし、事業を通じて多くの人にその「余白」を提供したいと考えています。
ーーなぜ「車」を通じて「余白」を提供しようと考えたのでしょうか。
浅岡亮太:
車は、1800年代後半から今に至るまで世界中の人々を魅了し続けてきたプロダクトです。その魅力は私が語るまでもなく、世界中で証明されてきたことです。私自身もその魅力と出会い、たくさんの「余白」をもらっています。そうであると同時に、楽しむためのハードルが非常に高いプロダクトです。金銭的な問題だけではありません。どの車を、どこで、どうやって買うのか。購入後の維持管理や売却はどうするのか。そういった知識や手間の壁があります。要するに、与えてくれるものも大きいが、得るためのハードルが高い。そのハードルを下げる意義が非常に大きいと思っています。
事業の成長を支える仲間と独自のコミュニティ文化
ーー事業における最大の強みは何だとお考えですか。
浅岡亮太:
車、インターネット、そして金融。この三つの領域すべてを高いレベルで理解しているメンバーが集まっていることです。この事業はどれか一つの知識だけでは実現できません。多様な専門性を持つメンバーが揃っていること、これこそが私たちの最大の強みであり、何よりも大切にしている資産です。
ーーオーナーとの関係性で大切にされていることはありますか。
浅岡亮太:
ブランドの核として、コミュニティを非常に大切にしています。毎月必ずイベントを開催しているのですが、そこには三つの狙いがあります。一つ目は、オーナー同士の横のつながりを育むこと。二つ目は、私たちスタッフとの交流を深めてパートナーとしての関係を築くこと。そして三つ目は、オーナーの方々がさらに「余白」を広げるための「体験」と「出会い」の場を提供することです。
「体験」としては、サーキット走行やレース観戦、クラシックカーイベントへの参加など、一人ではなかなかできないような特別な機会を提供しています。「出会い」は、コミュニティを通じて生まれる新たな人とのつながりです。年齢も職業も異なる人たちが、車という共通項でフラットにつながる。そうした出会いが新たな気づきや世界を広げるきっかけとなり、結果として人生の「余白」を広げていけると考えています。
利便性の時代だからこそ追求する車がもたらす未来

ーー今後、貴社は社会にとってどのような存在を目指しますか。
浅岡亮太:
表層的には車の所有ハードルを下げることですが、本質的には車を通じて人生の「余白」を広げていく世界の実現を目指しています。これからAIが進化し、世の中がますます便利になれば、人間には多くの時間が生まれるはずです。その増えた時間をどう使うかが問われる時代に、私たちはあえて非合理的で非効率な車との付き合い方を提案し続けていきます。合理や効率の延長線上では得られない、楽しみや喜びがあることをオーナーさん達の姿を見ていて強く感じているので。これからも私たちは、車を通じて人生の余白を広げていく人たちの”パートナー”として、寄り添い、共に分かち合える存在でありたいです。
ーー今後の事業展開で注力していきたいことは何ですか。
浅岡亮太:
短期的には、チームをより強く、大きくしていくことです。特に今のフェーズでは一人ひとりが事業に与える影響が非常に大きいので、採用には力を入れています。スキルや経験よりも、「なぜRENDEZ-VOUSなのか」「この事業を通じてどんな世界を実現したいのか」という部分への共感を何よりも重視しています。
ーー最後に、読者に向けてメッセージはありますか。
浅岡亮太:
オーナーをご検討中の方には、車種のラインナップも増えている現在、ぜひウェイティング登録にお申し込みいただきたいですね。決して利便性だけを追求したものではありませんが、心から楽しめる体験であることはお約束します。
また、私たちと一緒に働くことに関心がありながら、あと一歩を踏み出せずにいる方も、ぜひDMや公式サイトのお問い合わせフォームからご連絡ください。単に車を「借りる」のではなく、「ランデヴーする」という新しいライフスタイルを、私たちと共に創り上げていきましょう。
編集後記
効率化と利便性が浸透する現代において、手間のかかるプレミアムカーとの付き合いを通じて「余白」という価値を提案する同社。その根底には、自身の原体験から生まれた「車を心から楽しむ文化を再構築したい」という浅岡氏の純粋な思いがある。同社のサービスは、単なる移動手段としての車の価値を問い直し、人生を豊かにするパートナーとして、新たな選択肢を提示している。

浅岡亮太/早稲田大学在学中にクルマ系メディアを立ち上げバイアウト。2015年4月に株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)に新卒入社。個人間のカーシェアリングサービス「Anyca(エニカ)」の立ち上げメンバーとして、セールス/コミュニティマネージャーを兼任。2018年4月に株式会社メルカリに入社し、マネージャーとして自動車プロジェクトチームの責任者として従事。2022年5月に株式会社RENDEZ-VOUSを創業し、代表取締役に就任。