※本ページ内の情報は2025年12月時点のものです。

バックオフィス業務は、企業の存続に不可欠である。しかし、その多くが属人化や非効率という課題を抱えている。特に地方の中小企業では、ベテラン経理担当者の経験と勘に頼る「暗黙知」が業務を支え、後継者不足という差し迫った課題に直面している。この普遍的な領域に挑むのが、BackofficeForce株式会社だ。同社は、公認会計士としての確かな知見と「仕組み化」への強いこだわりを持つ。単なるBPO(アウトソーシング)を超え、業務を「誰でも再現できる仕組み」とシステムで提供することで、バックオフィス業界の新しいスタンダードを構築しようとしている。代表取締役である筧 智家至氏に、その独自の戦略について詳しく話をうかがった。

公認会計士から独立へ 困難な道を選んだ背景とは

ーー独立・起業に至った経緯をお聞かせいただけますか。

筧智家至:
私が会計士になったのは、もともと「社会の役に立ちたい」という志があったからです。監査法人で8年間ほど働きましたが、監査法人時代のしがらみの中ではできないことが多いと感じていました。そこで、あえて独立という厳しい道を選ぶことが、自分自身の人格を一番磨いてくれる選択だと考えたのです。30代のうちに人に頭を下げる経験を積まなければ、40代の自分は確立できないという思いもありました。

ーー経営者として直面したギャップや学びは何でしょうか。

筧智家至:
最も大きな学びは、社員を雇ったことで、仕組み作りの重要性に気づいたことです。社員を抱える中で、社長は常に「いい人でなければならない」と見られていると感じる場面が非常に多くなりました。社員時代は自分の感情だけを気にしておけば良かったのですが、経営者になってからは社員の感情も気にしなければいけなくなりました。

また、独立当初は比較的順調に業務を進められましたが、社員を雇った時に、「なぜ自分と同じようにできないのだろう」というギャップに直面しました。しかし、人それぞれが異なる種類であり、同じ目線で見てはいけないと気づいたのです。そこから、阿吽(あうん)の呼吸ではなく、誰がやってもできる状態、つまり「仕組み」を作ることが重要だという考えに至りました。

認知度を飛躍させたリブランディングの裏側

ーー社名を変更した理由と、その効果についてお聞かせください。

筧智家至:
従来の「グランサーズ」という名前は悪くなかったのですが、マーケティング上「何をやっている会社か分かりにくい」という課題がありました。どんなに素晴らしいサービスがあっても、認知されなければ意味がありません。そこで、認知を高めるために、一言で表現でき、パッとイメージできる社名・サービス名が重要だと考え、リブランディングをしました。

「BackofficeForce」という名前には、「Salesforce」のようにバックオフィス業界のスタンダードを作っていくという思いが込められています。変更後は、検索されやすくなったことに加え、経営者の会合などで会社や私のことを知ってくださっている方が増えるなど、リブランディング効果を実感しています。

ーーリブランディングを機に、サービス内容でブラッシュアップされた点はありますか。

筧智家至:
従来のBPOは、人が動くことがメインでしたが、それだけでは限界があります。バックオフィス全体の力になるために、タスク管理や進捗管理、そして業務ノウハウが詰まったシステムをセットで提供するようになりました。

SaaS(※1)やAIが普及しても、それを使いこなせる人がいなければ意味がありません。私たちのサービスは、システムそのものの提供だけではありません。それらを活用し、属人化を避け、誰でも同じ品質で業務が行える「箱」(仕組み)を提供することに焦点を当てています。

(※1)SaaS:「Software as a Service(サービスとしてのソフトウェア)」の略で、インターネット経由で利用できるクラウドサービスのひとつ。

地方中小企業の課題解決と独自の仕組み

ーー現在、どのような課題を抱えた企業からの問い合わせが多いのでしょうか。

筧智家至:
最近お問い合わせが多いのは、地方の非上場企業で、従業員規模が30人から50人以上の企業様です。こうした企業様に共通するのが、「ベテラン経理担当者の後継者不足」という問題です。多くの方が長年の経験と勘に頼って業務を進めていますが、マニュアル化が進んでいないため、担当者が引退の時期を迎えると、社長は大きな不安を抱えられます。さらに、業務が依然として紙ベースでクラウド化が進んでいないという課題も抱えているのが現状です。

ーー課題に対し、貴社はどのような解決策を提供していますか。

筧智家至:
私たちは属人化の最大の原因である「暗黙知」を全て明るみに出します。単なる筆記マニュアルではありません。画面のスクリーンショット付きで詳細なマニュアルを整備します。録画データなども含め、全てを一つのシステム内に搭載して納品するのです。これによって、人が仮に入れ替わっても業務が回る状態を作ります。

競合他社はBPOサービスを提供したり、マニュアルを作成したりするところはありますが、タスクマネジメントシステムとマニュアルをセットで提供している企業は他にありません。この一貫した高品質なサービスを提供できるのが私たちの強みです。

採用戦略と「世の中を変える」という信念

ーー今後の採用において、求める人物像についてお聞かせください。

筧智家至:
私たちが今求めているのは、自分の仕事に没頭するのではなく、俯瞰的な目で業務改善や品質向上を考え、仕組みを作れるような方です。弊社の特徴として、経験者よりも未経験者の方が伸びている傾向があります。伸びる理由は、未経験者の方が質問をたくさんしてくれるからかもしれません。私たちは若い方に、自分の活動の先として、仕組みや世の中を変えていくという発想を持ってほしいと考えています。手に職をつけることも重要ですが、知識が豊富なAIには必ず負けてしまいます。重要なのは、AIにどのように指示を出し、質問をするかという能力です。

ーー最後に、特に若い世代に向けて、メッセージをお願いいたします。

筧智家至:
「世の中や社会に影響なんて与えられない」と思っている方が多いかもしれませんが、意外に簡単にできます。たとえば、YouTubeやInstagramなど、今の時代には社会に影響を与えるためのツールやプロセスが無数にあります。誰かの役に立てるような活動を続けることは、自分だけが良ければいいという発想で生きるよりも、人生をとても豊かにしてくれます。ツールを精査し、それをハックする(伸ばす)やり方を探せば、すぐに影響力を得られます。私自身、個人として世の中に影響を与えられたからこそ、次に仕組みを提供するというチャレンジに進んでいます。

編集後記

公認会計士としての確固たる知見と、経営者として経験した苦悩から見いだされた「仕組み化」の重要性が、同社の事業の核を成す。長年の経験と勘に頼ってきた属人化業務を、「誰がやっても高品質な成果を出せる普遍的な仕組み」へと進化させていくその挑戦は、まさにバックオフィス業界の新しいスタンダードを創造しようという強い意志の表れだ。今後は専門人材のネットワークを拡大し、バックオフィスの世界で生産性向上のモデルを実現することで、日本全体の新しい働き方と企業の成長に貢献していくだろう。

筧智家至/慶応義塾大学卒業。監査法人トーマツにて会計監査、株式上場支援、企業の経営改善支援に従事。2012年筧公認会計士事務所(現・税理士法人グランサーズ)を開設。2013年グランサーズ株式会社を設立し、2025年1月に現在のBackofficeForce株式会社へリブランディング。企業の成長を支援し、お客様に伴走するパートナーとして、バックオフィスから世界を変える使命に情熱を注いでいる。