※本ページ内の情報は2025年12月時点のものです。

建設工事に使われる資材の専門商社として、国内外の優れた製品を提供する藤田商事株式会社。同社は商社機能に留まらず、顧客のニーズを汲み取り、ITサポート、保険代理店業務、特許も取得したエアシャワーや輸入金物の販売、設置も手がける。この独自の事業展開を牽引するのが、営業一筋で、さまざまな試練を経験してきた代表取締役社長の前渕広之氏だ。商売を知り尽くした同氏が語る、取扱製品開発の裏側、多様な経験から得た学び、そして「ボス」ではなく「リーダー」でありたいという思いに迫る。

営業一筋のキャリアが導いた社長への道

ーー社会人としてのキャリアはどのようにスタートされたのでしょうか?

前渕広之:
大学卒業後、弊社の親会社であるフジタ工業(現・株式会社フジタ)に入社しました。入社後は、営業部門に配属されました。当時はまだ営業の仕組みが確立されておらず、上司や先輩のやり方を見よう見まねで覚えるような手探りの状態でしたが、個人的にはお客様と直接対話し、関係性を築いていく営業の仕事は楽しかったです。

本社、支店で営業として、さまざまなお客様のプロジェクトを支援した後、ゼネコンでの支店長を経験できたことは、経営の視点を持つ上で大きな財産になっています。

顧客ニーズを形に エアシャワー開発の舞台裏

ーー貴社の商品について、特徴や強みについてお聞かせください。

前渕広之:
弊社の取扱商品の一つである「エアシャワー」は、クリーンルームや食品工場の入り口などで、衣服に付着した塵や埃を強力な風で除去する装置です。弊社がメーカー、親会社と共同で開発しており、自社グループはもちろん、他ゼネコン向けにも展開しています。高い技術力を活かした製品として、多くのお客様から反響をいただいています。

最大の強みは、お客様のニーズに合わせたカスタマイズ対応力です。規格品の大量生産ではなく、設置場所のサイズや性能に応じ、オーダーメイドに近い形で1台ずつ設計・製造できる体制を整えています。お客様の「こういうものが欲しい」という声を、直接製品に反映できるのが弊社の強みです。

さらに、納品して終わりではなく、その後のメンテナンスやアフターフォローにも力を入れています。弊社はもともと商社として、さまざまなメーカーの製品を取り扱ってきた歴史があるため、メンテナンスの技術や知識も豊富です。お客様に長く、安心して使っていただくためのサポート体制を構築しています。

採用と育成 会社を支える人づくりへの思い

ーー貴社ではどのような人が活躍されているのでしょうか。

前渕広之:
会社全体には穏やかなムードがありますが、その中で目標をきちんと立てて、自ら考え行動できる人が活躍していると感じます。粘り強く、前向きに取り組む芯の強さを持っている方が、弊社の社風の中で力を発揮しています。

現在の採用では、新卒、キャリア採用にかかわらず、目標をきちんと立てて、それに向かって前向きに取り組める気持ちを持った方を求めています。弊社の穏やかな社風の中でも、そうした芯の強さや真剣さを持った方に、ぜひ来ていただけると嬉しいです。

採用方針として、新卒、キャリア採用に差はありません。新卒の方は将来の会社を支える存在としてじっくり育成しますし、キャリア採用の方、特に20代や30代の若い方であれば、新しい視点や活力を会社にもたらしてくれることを期待しています。

ーー社長が大切にしている価値観についてお聞かせください。

前渕広之:
私の中でのイメージですが、「ボス」は一方的に指示を出し、上から命令する存在。一方、「リーダー」は、自ら先頭に立って行動し、みんなを導いていく存在だと考えています。社員と一緒になって汗をかき、一緒になって考え、組織を良い方向に導いていくのがリーダーの役割です。私は後ろから「行け」と命令するのではなく、先頭に立って「こっちだぞ」と道を示し、みんなが安心してついてこられるような存在でありたい。そういう思いで、日々経営にあたっています。

編集後記

営業一筋でさまざまな建設プロジェクトを経験してきた前渕氏。その言葉の端々からは、現場を知る経営者ならではの説得力と、社員と共に汗をかく「リーダー」としての温かい人柄が伝わってきた。カスタマイズ力という独自の強みを活かし、顧客のニーズに徹底的に応える。その実直な姿勢こそが、同社の揺るぎない基盤を築いているのかもしれない。

前渕広之/1961年東京都生まれ、青山学院大学卒。1984年に当社親会社フジタ工業(現:フジタ)に入社。営業一筋で2019年フジタ執行役員大阪支店長等を歴任し、2024年に当社代表取締役社長に就任。