
大和ハウスグループの一員としてゴルフ場運営を担う、ダイワロイヤルゴルフ株式会社。同社は今、「日本一のおもてなし」を掲げ、単なるプレー施設に留まらない「お客様の快適な体験」を最優先する場所へと変革を進めている。大和ハウスで経験した用地買収業務をはじめ、数々の現場で「人の心を動かす」ことを実践してきた代表取締役社長の原納浩二氏に、同氏が描く、誰もが快適で、地域に愛されるゴルフ場の未来について話をうかがった。
「人の心を動かす」原点 困難を極めた用地買収の経験
ーーまず、原納社長のキャリアの原点についてお聞かせください。
原納浩二:
就職活動では、特定の業界に絞らず、いろいろなところを見て、縁があるところに入ればいいという考えでした。「一業態一社」というルールで、任天堂株式会社やユニ・チャーム株式会社など、それぞれの業界のトップの会社を受けました。いくつか内定をいただきましたが、最終的に大和ハウス工業株式会社に決めたのは、面接でお会いした方々の人柄が良かったからです。
ーー入社後、最大の転機となった出来事について教えていただけますか。
原納浩二:
三重県での用地買収が転機となりました。当時、先輩たちが20名ほどの地権者のところへ伺っても、「絶対に売らない」と固辞しており、皆があきらめて手を引いてしまったような案件でした。
私はそこへ一人で行き、文字通り24時間体制で臨みました。たとえば、お店を営んでいらっしゃる地権者の方とお会いする際、忙しい時間には当然話ができません。ですから、お店がオープンすると同時に行って、ランチを食べながら顔を覚えていただく。そんなことを毎日続けました。
そして、それを実行できたのは、「誠意が通じれば思いは必ず叶う」と信じていたからです。その信念を大切にしてきた結果、これまでも実際にたくさんのことを実現してきました。
「日本一のおもてなし」を目指して

ーー貴社の社長に就任され、どのような取り組みをされていますか。
原納浩二:
社長就任時、「いい会社にしよう」という思いで着任しました。ただ、ゴルフ場は自然が相手ですし、長年の習慣もあるため、劇的に変えようとしても組織は簡単には動きません。まずは、大和ハウスグループ全体の中での「おもてなしの施設」として、その役割を明確にしていこうと考えています。
ーー「おもてなしの施設」とは、具体的にどのような場所を目指すのでしょうか。
原納浩二:
日本のゴルフ場の多くは、スコアを競うためだけに来ている場所になりがちです。しかし私たちは、競うだけではない場所づくりをしたいと考えています。そして、「こんなゴルフ場は日本にない」「おもてなしは日本一だ」と言われるような場所にすることを目標に掲げています。
ゴルフ場のコースは単なる人工物ではなく、芝生もすべて「生き物」です。まずはコース自体が、感動していただけるほど美しく手入れされていることが、前提です。そのうえで、スタッフが心のこもった明るい挨拶でお客様をお迎えすること。チェックインの際にはホテルのようなアメニティをご用意し、お帰りの際には地域の産品をお土産にお渡しする。そういった一つひとつの積み重ねが「日本一のおもてなし」につながると信じています。
ーー運営面で重視していることはありますか。
原納浩二:
とにかく快適にゴルフを楽しんでいただくことを第一に考えています。そのために、私たちはあえて組数を詰め込まないようにします。快適にプレーができれば、お客様の満足度は上がり、評価も高まります。快適な空間と最高のおもてなしを提供し、「ここのゴルフ場はすごい」と評価していただく。値段ありきの競争はしないつもりです。
ゴルフ場はプレーヤーだけのものじゃない 地域全体に開かれた財産へ
ーーゴルフ場の広大な土地について、プレー以外での活用法もお考えでしょうか。
原納浩二:
ゴルフ場は、一つの敷地が百万平米(100ヘクタール)ほどもある広大な土地です。ここをゴルファーだけが使っているのは、非常にもったいないと常々感じていました。そこで、この場所を地域の皆様に開放したいと考えています。
たとえば、思い切り凧揚げができるような広い場所はなかなかないと思います。ゴルフ場の広大な芝生の上なら、転んでもけがの心配が少ない。それに、ゴルフ場のバンカーは、子どもたちにとっては見たこともないような巨大な砂場になるわけです。このように、地域の貴重な財産として大いに開放していきたいです。
ゴルフの真髄は「団体競技」 未来を担う若い世代への言葉
ーー原納社長が考える、ゴルフの魅力についてお聞かせください。
原納浩二:
ゴルフは一人でスコアを競う個人競技に見えますが、それは違います。実は、ゴルフは団体競技なのです。一日に160人のお客様がいらっしゃる場合、それは160人全体の団体競技といえます。
いわゆる「スロープレー」で自分のプレーが遅れれば、前後の組だけでなく、ひいては全員に迷惑がかかります。プロの試合でも、スロープレーはリズムを狂わせるため厳しく制限されています。
お客様自身がゴルフを「団体競技」として捉えることで、プレーにおける自己中心的な行動がなくなり、全体の快適性が保たれます。私たちは、この快適な環境と最高の「おもてなし」を融合させることで、すべてのお客様の満足度を最高レベルに引き上げることができると、私たちは考えています。
ーー最後に、これからの時代を担う若い世代へメッセージをお願いします。
原納浩二:
大和ハウスには「現場第一主義」という言葉があります。DXやAIも大切ですが、本質的な答えは必ず「現場」にあります。自らの足で現場に行き、自らの目で現実を見て、自らの頭で判断する。この原則は、どんな時代でも変わりません。
そして、ぜひ若い方々にもゴルフを始めてほしいです。贅沢な遊びだと思われがちですが、私たちが目指す新しいゴルフ場で、その本当の楽しさや奥深さに触れていただければ幸いです。
編集後記
用地買収のために飲食店へ通い続けたエピソードに、原納氏の「人の心を動かす」信念が表れている。その熱意は今、ゴルフ場改革に向けられている。「日本一のおもてなし」や「地域開放」は、単なる施設改善ではなく、かかわる全ての人の快適な体験を高める試みだ。「ゴルフは団体競技」という言葉に、同氏が目指す配慮の行き届いたゴルフ場の姿が重なる。ダイワロイヤルゴルフがどのような「快適な場所」になるのか注目したい。

原納浩二/1961年奈良県生まれ。1983年に大和ハウス工業株式会社へ入社以来、都市開発部門にて不動産開発事業の担当として、住宅地・リゾート地・工業団地の開発事業、土地区画整理事業、市街地再開発事業における用地、企画、プロジェクトマネジメント等の業務に従事。2024年にダイワロイヤルゴルフ株式会社の代表取締役社長に就任。