
ITフリーランスのマッチング事業を主軸に成長する株式会社TWOSTONE&Sons。人材マッチングのみに留まらず、コンサルティング領域への進出や、M&Aを駆使し企業の成長を一貫して支援している。同社を率いる代表取締役COO 高原 克弥氏は、学生時代に起業し、組織の9割以上が離脱する危機を経験した。その壮絶な原体験から得た学びと、10年先を見据える経営視点に迫る。
学生起業の挫折と共同経営者との出会い
ーー社長のキャリアの原点についてお聞かせください。
高原克弥:
私のキャリアの原点は小学生時代、カメラマンだった父の仕事を手伝い、画像編集アプリケーション「Photoshop」を触ったことです。中学生になるとお小遣いを稼ぐためにアフィリエイトで稼ぎ始めました。しかし、高3の時に競合に完膚なきまでに打ち負かされ、サービス停止を余儀なくされました。
この挫折が大きく、大学1、2年の頃は公務員や弁護士を目指した時期もありました。しかし、どれも向いていないと悟り、大学3年からはビジネスコンテストの運営やインターンに打ち込みました。ただ、私が関わる会社が次々と倒産してしまい、最終的に「もう自分でやるしかない」と起業を決意しました。
ーー起業を決意されて、まず何から着手されたのでしょうか。
高原克弥:
エンジニアだった私は、営業ができる人を探していました。そんな折、あるインターン先の面接の場で代表を論破していた河端保志(現・同社代表取締役CEO)を見て「面白い人だ」と感じました。すぐにカフェに呼び出し「起業するから営業してくれ」と話したら、彼も起業を考えていたと分かり、共同で会社を立ち上げました。
9割のメンバー離脱から得た戦略伝達の重要性
ーー学生時代に起業されてから、当初はどのようなご状況でしたか。
高原克弥:
当初は、ITエンジニアの価値向上を掲げ受託開発事業から始めました。資金をつくり、いずれは自社プロダクトやサービスを開発していきたいと考えていたのです。学生やインターンも活用し育成しながら企業の開発を請け負っていたものの、「ITエンジニア価値向上」を当初描いていたスピード感で目指していけるイメージが持てず、事業転換を決めました。
ーー事業を進める中で、特に印象に残っている困難や危機についてお聞かせいただけますか。
高原克弥:
事業転換時に起きた、組織崩壊ですね。現在のフリーランスエンジニアマッチングへモデル転換する際、組織にいた学生チームのメンバーに対し、新サービスの報酬体系や会社の今後の見通しについて、今思うと私たちは十分に説明しきれませんでした。結果、CTOを含むメンバーが一気に離脱し、20〜30人いた組織が私と河端、インターン生の3人だけになりました。組織の9割が離脱するという事態は、想像を絶する恐怖でした。
この経験から、私たちが「勝てる」と確信していても、それをただ言葉にしただけでは伝わらない、ということを学びました。「自分たちが考えていることは、普通に話せば伝わるだろう」という超楽観的な思考がありました。しかし、自分たちが考えている戦略を正確に分解し、熱量をもって強烈に伝えないといけなかったのです。その時の痛みは、今も体に染みついています。
持続的な成長につながる施策選定の本質

ーー経営者として大切にされている価値観をお聞かせください。
高原克弥:
「短期的には楽な意思決定をしない」ことです。今すぐ数字になる施策は、5年、10年と継続しない、いわば「事業の土台として残らないもの」が多いのです。私たちは何十年もなくならない市場に身を置いています。地味な施策であっても、それが5年、10年かけて持続的に成長できるか、本当に「企業の財産として蓄積されるか」を基準に意思決定しています。
ーー貴社の主力事業における独自の強みについて、どうお考えでしょうか。
高原克弥:
弊社の強みは、組織としてプラスアルファの付加価値を提供できることです。案件紹介を行うだけの事業なら世の中に無数にあります。それに対し弊社は、企業様に対して圧倒的なスピード感で対応できますし、フリーランスの方に対しては、単に案件を紹介するだけでなく、その方のキャリアに本気でコミットしています。
フリーランスという働き方が浸透してきた今、次のフェーズが問われています。それは、フリーランスでありながらスキルアップできる環境です。私たちは「この道は険しいが身につけられるスキルは高い」「この道は緩やかだが着実だ」と選択肢を提示することで、フリーランスの方々に対してパートナーとして伴走します。この伴走する覚悟が、他社との決定的な違いだと自負しています。
企業の成長を上流から支援するコンサル強化策
ーー現在、特に注力されている事業領域や取り組みはありますか。
高原克弥:
取引先企業の成長を上流から支援するため、コンサルティング領域に注力し、課題設定から伴走しています。具体的には、戦略コンサルやITコンサル、M&Aに関しては今展開する周辺事業に特化した戦略を積極的に進め、専門性を極大化しています。
ーー今後の事業目標や展望についてお聞かせいただけますか。
高原克弥:
まず規模が最も重要だと考えています。弊社の事業はプラットフォームなので、関わる人が増えるほどメリットを享受する人が増えます。規模の拡大がそのまま社会貢献につながるのです。たとえば、単年で30%成長させることより、10年間連続で20%以上の成長を達成することが大切です。
採用基準は圧倒的な行動力とそれを実現する素直さ
ーー貴社では、どのような人材を求めていますか。
高原克弥:
スキル以上に心のあり方が重要です。採用基準は、相手のために考えられる思考力と、それを実現する圧倒的な行動力。そして、その行動力を担保できる素直さです。弊社は裁量が非常に大きい環境ですから、このマインドさえあれば、これほど存分に力を発揮できる環境はないと自負しています。
ーー最後に、若手起業家へのメッセージをお願いします。
高原克弥:
今はSNSなどで、分かりやすい成功モデルが大量に流通しています。流行りのツールが出てきたら、誰もがそちらに殺到する世の中です。しかし、それは3か月後には状況が一変しているかもしれない「消耗戦」にすぎません。そうした分かりやすい情報に惑わされず、自分が立つ場所が本質的な事業領域なのか、そこで自分の強みが本当に活きるのかを冷静に考えることが重要だと思います。
編集後記
学生時代に起業し、組織の9割以上が離脱するという想像を絶する危機を乗り越え、V字回復を遂げた高原氏。その壮絶な原体験は、同社の揺るぎない経営信念を形作っている。同社が大切にしているのは、「短期的ではなく、企業の力として蓄積されるか」という本質的な問いだ。流行や楽な道に惑わされず、5年、10年かけて持続的に成長し続けるための地道な施策を徹底する姿勢は、まさしく長期的なビジョンを持つ経営者の姿と言えるでしょう。規模の拡大がそのまま社会貢献につながるという同社の挑戦は、まだ始まったばかりである。

高原克弥/1991年生まれ。長野県出身。小学生よりプログラミングに触れwebサービスを複数運営。大学時代にスタートアップ3社でエンジニア・セールス・人事などを経験。大学在学中の2013年に株式会社Branding Engineer(旧社名)を創業し、代表取締役COOに就任。ITエンジニアファーストを掲げ、各種事業の立ち上げ等により成長をけん引。2020年7月に東証マザーズ上場を達成。2023年6月にホールディングス体制に移行し、株式会社TWOSTONE&Sonsに社名変更。