
CRO(医薬品開発受託機関)と専門職人材派遣。この二つの事業を両輪で回す「ハイブリッドCRO」という独自のビジネスモデルで、急成長を遂げている株式会社アスパークメディカル。同社は、社員一人ひとりが多様なキャリアを描ける環境を整備し、組織全体の専門性を高め続けている。2024年、前社長の急逝という予期せぬ試練を乗り越え、新社長に就任したのが舘内恒彦氏だ。「人との縁」を何よりも大切にする舘内氏が描く、確固たる業界シェアNo.1への道筋と、その根底にある揺るぎない信念を紐解く。
予期せぬバトンパス 覚悟を決めた「人との縁」
ーーまずは、これまでのキャリアと、貴社へ入社された経緯からうかがえますでしょうか。
舘内恒彦:
私はこれまで、内資系の製薬メーカーやCROを数社経験し、一貫して医薬品開発の現場に携わってきました。特にCRA(臨床開発モニター)として現場の最前線を走りつつ、比較的早い段階からマネジメントにも携わってきたことが、私のキャリアの土台になっています。弊社への入社を決めたのは、長年にわたり業界で関わりのあった当時の社長との「ご縁」があったからです。かつての戦友と共に、新しい挑戦ができることに心を躍らせていました。
ーー代表取締役社長に就任された経緯と、当時の率直な思いをお聞かせください。
舘内恒彦:
実は、前社長が急逝し、私がそのバトンを受け継ぐことになったのです。私にとっても、会社にとっても、あまりに突然の出来事でした。深い悲しみの中にありましたが、それでも事業を止めるわけにはいきません。予期せぬ形での就任となり、まさに手探りの中での経営スタートでしたが、今振り返れば、この経験こそが私を「経営者」へと変える最大の転機になったと感じています。困難な状況下で私を支えてくれたのは、やはり社員たちとの絆であり、これまで培ってきた「人との縁」に他なりません。
派遣と受託の「いいとこ取り」 ハイブリッドCROの真価

ーー就任当初、組織に対してどのような課題や可能性を感じていらっしゃいましたか。
舘内恒彦:
正直に申し上げますと、当初は「ザ・派遣会社」という印象が強かったですね。私は受託業務をメインに歩んできた人間ですので、派遣というビジネスモデルには馴染みが薄く、カルチャーギャップを感じることもありました。しかし、だからこそ見えてきた可能性もあります。派遣には現場に入り込む柔軟さがあり、受託にはチームで成果を出す専門性がある。それらを融合させれば、これまでにない価値が生まれるのではないかと考えたのです。
ーー貴社が掲げる「ハイブリッドCRO」の強みについて教えてください。
舘内恒彦:
私たちの最大の強みは、派遣と受託という二つの事業を単に並列させるのではなく、循環・融合させている点にあります。たとえば、派遣先で多様な経験を積んだ社員が、次は自社の受託部門でプロジェクトリーダーとして活躍する。あるいは、受託部門でマネジメントを学んだ社員が、その知見を持ってより高度な派遣案件に挑戦する。社員一人ひとりの志向やライフステージに合わせて、派遣と受託の「いいとこ取り」ができるキャリアパスを提供できること。これこそが、他社にはない私たち独自の提供価値です。
ーー派遣という働き方において、社員の帰属意識をどのように高めていらっしゃるのですか。
舘内恒彦:
派遣という働き方であっても、彼らは紛れもない「アスパークメディカルの社員」です。現場は離れていても、心は繋がっている。そう感じてもらえるよう、現在は特に「帰属意識の醸成」に注力しています。情報共有の徹底はもちろん、懇親会などを通じて社員同士が交流する機会を増やしています。「アスパークメディカルに属している」という安心感と誇りが、結果としてクライアントへの貢献、ひいては会社全体の成長という好循環を生むと信じています。
「人」がすべての土台 ホスピタリティが信頼を生む

ーー経営を行う上で、最も大切にされている「軸」についてお聞かせください。
舘内恒彦:
「変えるべきもの」と「変えてはいけないもの」を見極めることです。私たちのビジネスは人材がすべての基盤であり、その根幹は「人」です。人を大切にし、多様性を受け入れ、個性を活かす。この「人が土台である」という信念は、何があっても変えてはいけません。一方で、市場環境や技術は常に変化します。そうした外部環境には柔軟に対応し、常に進化し続ける組織でありたいと考えています。
ーー求める人物像や、社員に期待するマインドについて教えてください。
舘内恒彦:
専門職としてのスキルアップに貪欲であることは大前提ですが、それ以上に「ホスピタリティ」を大切にしてほしいですね。私たちの仕事は、究極的には「人と人」のかかわりです。相手に対し「気持ちの良い仕事をしてくれる」「気遣いができる」と感じていただけるかどうか。その人間味あふれる対応こそが、次の仕事への信頼に繋がります。また、新しいことに物怖じせず、私たちと一緒に「アスパークする」。つまり、主体的に行動し、変化や成長そのものを楽しめる方と共に働きたいですね。
ーー社員のモチベーションを高めるために、評価制度などで工夫されている点はありますか。
舘内恒彦:
弊社ならではの特徴的な取り組みとして「成果給社員制度」を導入しています。これは、お客様からいただくチャージ(派遣料金)に対して、何パーセントを給与として還元するかを明確に定めている制度です。自身のスキルアップが単価の上昇、ひいてはダイレクトに給与アップへ繋がるため、非常に透明性が高く、モチベーションを維持しやすい仕組みになっています。自己研鑽が得意な自律心の高い人材であれば、目に見えて成長と成果を実感していただけるはずです。
業界シェアNo.1へ アカデミアへの挑戦と未来
ーー今後の展望と、そこへ向けた新たな挑戦についてお聞かせください。
舘内恒彦:
中期的には、「確固たる業界シェアNo.1のCROとしての派遣会社」を目指します。これは、派遣という強みを活かしつつ、CROとしての品質と信頼を極めていくという決意です。そのための新たな取り組みとして、現在は「アカデミア(大学・研究機関)」との連携強化に注力しています。これまでは製薬企業との取引が中心でしたが、今後は大学病院の研究所などへ専門職を派遣したり、臨床試験のオペレーションを受託したりと、活動のフィールドを広げています。未知の領域にも果敢に挑み、私たちの専門性が活きる場所を開拓し続けていきます。
ーー最後に、読者へメッセージをお願いします。
舘内恒彦:
弊社の社名にある"アスパーク"には、"一人ひとりが輝き続ける"という思いが込められています。社員の成長が会社の成長に直結する、そんな会社でありたいです。現状に留まらず、新しいことにチャレンジし続けたい、成長を止めずに進み続けたいという思いに共感してくださる方と、ぜひ一緒に働きたいと願っています。
編集後記
取材中、何度も口にされた「人との縁」という言葉。その温かな響きとは裏腹に、業界の常識を覆そうとする舘内氏の眼差しは鋭く、そして力強いものだった。「派遣」と「受託」の境界線を溶かし、社員のキャリアに無限の選択肢を用意するアスパークメディカルの挑戦。それは単なるビジネスモデルの変革にとどまらず、臨床開発職のキャリアを支えるメッセージのようにも感じられる。困難な船出を乗り越え、確かな航路を見据える同社。「人が輝く」という原点を追求するその先に、どのような景色が広がっていくのか。今後の飛躍に大いに期待したい。

舘内恒彦/1980年神奈川県出身。内資製薬企業での医薬品開発、内資CROでの医薬品開発受託業務、経営企画業務を経験。2023年に株式会社アスパークメディカルへ入社。研究開発本部長、執行役員を経て2024年7月、代表取締役社長に就任。