※本ページ内の情報は2026年1月時点のものです。

AIや映像処理に欠かせないGPU(グラフィックス処理ユニット)技術で世界をリードする米国NVIDIA社から、最高位である「Elite Partner」に認定されているGDEPソリューションズ株式会社。同社を牽引するのは2024年に代表取締役社長に就任した榊原忠幸氏だ。榊原氏は研究者として日立製作所に入社後、「自分は研究よりもビジネスに向いている」と気づき、プロダクトマーケティングの分野に転身したという。ビジネスの醍醐味を熟知した榊原氏に、同社の強みや今後のテーマ、求める人材像についてうかがった。

研究からビジネスへの転換

ーーまずは社長のご経歴からお聞かせください。

榊原忠幸:
大学では情報工学を専攻し、AI(人工知能)におけるニューラルネットワークについて研究を行っていました。卒業後、日立製作所に入社し同社の中央研究所に配属され、スーパーコンピュータの研究開発に従事しました。その後もサーバの開発経験を重ね、入社後10年ほどでスーパーコンピュータのアーキテクチャを研究テーマとして学位を取得。このとき、専門家になったと実感しました。

転機が訪れたのは、PCサーバー開発の取りまとめで1年間アメリカに駐在したときです。入社後も購読していたAIの論文や学会誌を読んだ時に、その技術レベルの高さを痛感したため、数日ほど考えて経営とマーケティングの道への転向を決意しました。帰国後は製品企画とプロダクトマーケティングを担当し、製品の良さをアピールする資料作りや販売戦略策定などを行いました。営業からの急な要望にも翌日には応えるなど、マネタイズを実現する仕事のほうが「研究職よりも、自分に適している」と感じたのです。その後、部長、本部長を歴任し、2022年にキャリアの一区切りがついたと感じて日立製作所を退職しました。

退職後、当時弊社の社長だった長﨑敦司氏に誘われて、グループ会社であるプロメテック・ソフトウェア株式会社の顧問に就任しました。プライベートの時間が確保できるポジションだったので、今思えば良い“充電期間”だったと思います。その期間中にプロメテック・グループの「プラットフォームで事業を拡大する」という構想に興味を持ち、2023年にプロメテック・ソフトウェア株式会社に入社しました。長﨑氏の退任後、2024年に弊社代表取締役社長に就任しています。

お客様の声をヒントに製品に「ひねりを利かせる」

ーー貴社の事業を教えてください。

榊原忠幸:
弊社はNVIDIA製品を核にGPUインフラの導入支援や運用サービスを手がける、NVIDIA Corporation認定の「Elite Partner」(最高レベルパートナー)です。主にGPUやその周辺機器、ワークステーション、サーバー、ストレージ製品を取り扱っています。大きな特徴はローカルでも生成AIの検証・開発ができる「GPU水冷システム」の取り扱いです。GPUは非常に高熱を発するため、空冷では性能が安定しません。そこで弊社は、水冷方式で冷却できるGPUカードを採用したシステムを開発し、業界でも類を見ない付加価値を提供しています。

ーー貴社が「GPU水冷システム」を開発した背景についてうかがえますか。

榊原忠幸:
弊社には自由な雰囲気があり、営業もエンジニアもお客様からの声を受けて「まずやってみる」精神を大切にしています。「GPU水冷システム」の場合も、営業が「GPUの音や熱が気になる」というお客様の声を聞きつけたことがヒントになりました。水を使うと漏電の問題があるのですが、そこを弊社のエンジニアの高い技術力で解決しました。「ひねりを利かせた」製品を提供し、お客様に喜んでいただけました。

自由という意味では、アメリカのイベントに行った際、副社長が「これは売れる」と掘り起こしてくるなど、日本未販売のソリューションを導入することにも積極的です。

ーーほかにも貴社ならではの取り組みがあればご紹介ください。

榊原忠幸:
最近では生成AIの分野に注力しています。日本の経営層や管理職は情報漏洩の観点から、生成AIの活用を控える傾向があります。そこでオンプレミス(※1)で利用できる生成AIプレインストールモデルを開発し、昨年から販売を開始しました。利便性を高めるため、出荷後すぐ使えるようセットアップして提供しています。現在はクラウドサービスを展開するAIベンチャー各社と、日本の生成AI市場をさらに広げていく戦略を議論しているところです。

(※1)オンプレミス:システムの稼働やインフラの構築に必要となるサーバーやネットワーク機器、あるいはソフトウェアなどを自社で保有し運用するシステムの利用形態

今後はソリューション全体の提案力を強化する

ーー今後の注力テーマを教えてください。

榊原忠幸:
今後はエンタープライズ系のお客様へのアプローチに軸足を移していきたいと考えています。これまで数年間は、比較的中堅・中小企業のお客様に対して、幅広い製品を提供してきました。しかしエンタープライズ系のお客様の場合は、製品そのもの以上にソリューション全体の提案力が求められます。そのため、今後は提案力の強化を当面の目標に掲げています。

弊社はGPUからスタートしていますが、GPUにとどまっていては成長できません。弊社にはAI、HPC(※2)など計算科学に関する強みがあります。その強みを従来のワークステーションレベルからスーパーコンピュータレベルにまで拡大し、事業規模を5〜10倍にします。

(※2)HPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング):高性能な計算能力を持つコンピュータシステム

理想の人材は製品を熱く語れる営業と柔軟性を持ったエンジニア

ーー貴社の成長にはどのような人材が必要ですか。

榊原忠幸:
営業については、お客様に自社製品を情熱を持って語れる人を求めています。弊社の製品について語り、その上でお客様の要望に耳を傾ける。そして、自社の強みとお客様の要望を一致させていく。そんな人が活躍できると考えています。

展示会に出展すると、弊社の製品を目にしたお客様に声をかけられます。そこから営業が30分以上じっくり説明したり、商談に発展したりということも珍しくありません。お客様を引き寄せる製品を扱えるという意味では、営業にとってはとてもやりがいのある環境だと言えます。

エンジニアについては、ハード、ソフト、AIなど何らかの領域を深く掘り下げた経験を持つ人が必要です。そういう方なら、未知の課題に直面しても、自分で調べて解決策を築いていく柔軟性を持っていると思います。

また、10年前から弊社が主催しているイベント「GPU UNITE」では、産業界やアカデミアの第一人者の方々をお招きし、講演やワークショップを開催しています。2025年からは、実行委員会を中心とした運営体制へと移行し、より中立的で広範な視点からの発信を目指します。こういった方々と交流できることは、エンジニアにとって大きな刺激になるはずです。弊社の環境を活かして成長を目指す営業・エンジニアとともに、事業規模を拡大していけたらこれほど嬉しいことはありません。

編集後記

取材を通じて印象的だったのは、「まずやってみる」という姿勢と、それを支える技術力の確かさである。GPU水冷システムに象徴されるように、同社にはお客様の声に耳を傾け、独自の工夫を重ねて形にしていく柔軟さがある。オンプレミスで利用できる生成AIやエンタープライズ市場への展開にも、その精神が息づいていた。今後、同社がどのような“ひねり”で市場を切り拓いていくのか、引き続き注目していきたい。

榊原忠幸/1964年青森県生まれ。1989年北海道大学大学院工学研究科情報工学専攻修了。同年、日立製作所に入社。スーパーコンピューターの研究開発、UNIXサーバー/PCサーバーの開発を経て、エンタープライズサーバー事業の部長、本部長を歴任。2022年に退職し、1年間の充電期間に入る。2023年プロメテック・ソフトウェア株式会社入社。2024年GDEPソリューション株式会社代表取締役社長に就任。