※本ページ内の情報は2026年1月時点のものです。

2025年3月に創業100周年を迎えた、株式会社扇雀飴本舗。上方歌舞伎との深いつながりから生まれた「扇雀飴」をはじめ、「はちみつ100%のキャンデー」など、素材の価値を最大限に引き出した独創的な商品を世に送り出してきた。同社は100周年を機に、社員全員で自社の歴史を紐解き、大切にしてきた「扇雀飴精神」を再確認した。商社での多様な経験を経て同社を率いる代表取締役社長の米田英生氏は、社是である「和の精神」を社会との「輪」へと昇華させ、生産者や地域社会との協業を通じて新たな価値創造を目指す。101年目の未来を見据える米田氏に話を聞いた。

商社での多様な経験から得た経営の礎となる信頼

ーー貴社へ入社される前のご経歴についてお聞かせください。

米田英生:
大学卒業後は三菱商事株式会社に入社し、経理からキャリアをスタートしました。その後、営業へ異動しました。石油などエネルギー関連の仕事が長かったですが、インドネシアでの海外駐在や、事業会社統合時のIT部会長、本社管理職など、実に多様な業務を経験しました。異動直後は慣れないことも多かったですが、経験を重ねて引き出しが増えたことで、柔軟性が高まったと感じています。

ーー三菱商事でのご経験は、現在の経営にどのように活かされていますか。

米田英生:
何よりも「顧客からの信頼を勝ち得ること」が肝要だと考えております。また、前職には「三綱領」という行動指針がありました。これは、正々堂々と、大きな視点で、社会の一員として行動することを示したものです。その精神が深く根付いていたことが私の経営の礎となっています。

特に印象深いのは、インドネシア駐在時代に原油購入を始めたエピソードです。その原油が東日本大震災後、日本の生活を支える一助となったことは感慨深く心に残っています。一方で、海外での激しい競争の中で、日本の強みを活かせず大苦戦した経験もあります。

私は商社での多様な経験を経て、異動直後の慣れない業務も経験を重ねることで乗り越え、柔軟性を高めてきました。これらの経験から得た「信頼の重要性」と「多様性への柔軟な対応力」こそが、現在の経営に最も活かされています。

歴史の探求で見出した 企業を支える3つの精神

ーーどのような思いで創業100周年の節目を迎えられたのでしょうか。

米田英生:
次の100年に向かうための基軸を確認したいという思いがありました。しかし、戦時中に資料が焼失したため、会社の正確な沿革が分からなくなっていたのです。そこで、OBの方々へのインタビューに加え、社員全員で業界紙を創刊号からすべて調査することにしました。これは、社員が主体となる100周年行事の一環です。歴史の探求を通じて、会社が一体となること、すなわちワンチームとなることを目指しました。

弊社の前身である会社の広告や記事が次々と見つかり、改めて、創業の原点や歩みを再発見できたことは、非常に大きな成果でした。この取り組みを通して、弊社が大切にしてきた「和の精神」「チャレンジとユニークネス」「こだわりの追求」という3つの「扇雀飴精神」を、未来への指針として再確認できました。

素材の価値を最大限に引き出すこだわりの商品開発

ーー貴社の事業内容と商品の特徴について教えてください。

米田英生:
創業以来、「ハードキャンディ」「グミ」「ラムネ菓子」の企画から販売までを一貫して行っています。先ほど申し上げた3つの精神を開発の軸とし、特に原材料となる素材や品質には徹底的にこだわり、その良さを最大限に引き出すことに挑戦し続けています。たとえば「はちみつ100%のキャンデー」や「幻の柑橘 直七(なおしち)のど飴」などがその代表例です。

ーー他社と比較した際、貴社の強みはどこにあるとお考えですか。

米田英生:
素材や品質にこだわった商品づくりはもちろんですが、社員一人ひとりの主体性も大きな強みです。伝統的にパッケージ作成を内製化するなど、「できることは自ら行う」という気風が脈々と受け継がれています。その結果、「濃厚トマトキャンデー」のような他にはない個性的な商品が生まれる土壌となっています。

「和」から「輪」へ 生産者と共にひらく未来

ーー近年、特に力を入れている取り組みはありますか。

米田英生:
原料の生産地との協業です。特に「幻の柑橘 直七のど飴」の産地である高知県の生産者の方々とのコミュニケーションに力を入れています。安定した供給のためには、生産者の方々との対話が不可欠です。先日も現地を訪れ、収穫に立ち会うとともに、農機具を寄贈させていただきました。

生産者の方から、「私たちの活動が直七の認知度向上につながり、大変ありがたい」というお言葉をいただきました。一つのキャンディが、これほど多くの人々を巻き込み、大きな社会的価値を生むことに改めて気づかされました。将来的には契約農園のような形も模索し、この活動を継続していきたいです。

ーー101年目のスタートですが、今後の展望をお聞かせください。

米田英生:
扇雀飴らしさを基軸に「和」から「輪」へ、社会と対話・協業することを目指します。単に商品を開発・販売するだけでなく、企業としてもっとできることがあるはずだと考えています。

その実現のため、原料の生産地との協業を強化し、直七の産地である高知県の生産者の方々とのコミュニケーションを重視します。地元生産者との対話は、果実の生産量拡大と安定供給に繋がる、と確信を深めています。将来的には、当社契約農園のような形も模索する方針です。

また、工場がある第二の故郷、姫路地区への貢献も一層注力するつもりです。姫路菓子まつりや女子プロバレーボールチーム「ヴィクトリーナ姫路」のスポンサー活動などを通じ、姫路に愛される扇雀飴を目指します。創業の地である大阪や大消費地である首都圏でも、イベントへの参加やSNSを組み合わせた認知向上に努めてまいります。

お客様や地域社会との対話を重ね、弊社のファンを増やしながら、新しい価値を創造していきたいと考えているところです。

編集後記

商社での多様な経験で培った広い視野と知見。そして、扇雀飴本舗が100年かけて育んできた「和の精神」。米田氏はこの二つを深く融合させ、未来への舵取りを進める。社員、生産者、そして地域社会を巻き込みながら「和」の精神を「輪」へと広げていくというビジョンは、企業の成長を超え、社会との共存共栄を目指す強い意志の表れである。100年の歴史を礎に、同社が今度、社会との「輪」の中でどのような新しい価値を生み出していくのか。その動向に大いに期待したい。

米田英生/1993年、一橋大学商学部経営学科卒業後、三菱商事株式会社に入社。ジャカルタ駐在事務所に勤務し、石油製品部 精製・リテール事業チームリーダーを経験。2021年、株式会社扇雀飴本舗 専務取締役経営室長兼海外本部長、2022年4月、代表取締役社長に就任。会社の「こだわり商材」と同じく「こだわり」をモットーに明るく楽しくポジティブに活動中。