※本ページ内の情報は2026年2月時点のものです。

株式会社ソラジマは、「今世紀を代表するコンテンツを創る」というミッションを掲げ、Webtoon(※)制作を主軸に韓国をはじめとした北米や中国などの世界11カ国で展開しているオリジナル漫画IPカンパニーだ。しかし、その真の狙いは単なるWebtoon制作に留まらない。同社は、作家の才能を最大限に引き出すための戦略的な編集体制を構築し、漫画からアニメ、グッズ、ドラマへと広がるグローバルなIP展開を視野に入れている。創業からわずかな期間でエンタメ業界の最前線に躍り出た代表取締役Co-CEOの前田儒郎氏に、同社が目指す業界変革の野望と、2035年に向けた中期ビジョンについてうかがう。

(※):「web」と「cartoon」を合わせた造語で、スマートフォンでの閲覧に最適化された縦スクロール型のフルカラーデジタルコミック。

独自の戦略で才能を開花させる「作家ファースト」の編集体制

ーーエンタメコンテンツ制作に軸足を置かれた理由は何ですか。

前田儒郎:
エンタメを始めた理由は2つあります。一つは、私自身がフランスで働いていた経験から、世界を舞台にチャレンジできる規模の大きな会社を生み出したいという強い思いがあったからです。当時から日本のエンタメの強さを感じており、その分野で挑戦したいと考えていました。二つ目に私自身が幼少期から漫画などのエンタメに親しみ、心から「大好きだ」と言えるほど触れてきた分野だったからです。自分の「好き」を胸を張って語れる領域で挑戦したいと思いました。

現在は、オリジナルWebtoon作品の制作に軸足を置いていますが、目的はWebtoonをつくることではなく、あくまで「時代を代表する作品」を生み出すことです。

ーー作品をつくるうえで、編集部として大切にされていることは何でしょうか。

前田儒郎:
私たちは、国内のWebtoonスタジオの中でも今いちばん多くの作品をつくっている会社ですが、その中で日々感じているのは、作品がヒットするかどうかは最終的に「作家さんの才能を最大化できるか」にかかっている、ということです。編集部ができることは、才能ある作家さんと出会った時に、編集者は作家さんにお渡しできる言語をかき集めて、必要な時にしっかり作家さんをサポートできる状態をつくることが大事だと感じています。そのために、私たちは「ヒットの確率」を少しでも高めるための仕組みを構築しています。

たとえば、NotionやSlackなどのデジタルツールを駆使し、今までの編集者のフィードバックやヒットの分析データなどを、全編集者がいつでもアクセスできるように集積・公開しています。これにより、編集者の仮説の精度を高め、効率的に制作を進められるようにしているのです。また、マンガの制作・販売からグッズ展開までを一貫して手がける自社のソラジマToonというサイトでは、ファンダムづくりやファンの行動データの分析もまとめて行っています。こうした取り組みを活かして、ヒットが生まれる確率を高められる土台を整えています。私たちはあくまで作家さんの才能を最大限に生かすための土俵を従来の漫画業界構造や仕組みに縛られず、今の時代のやり方で挑戦する存在でありたいと考えています。

ーーこれまでの取り組みを経て、周囲からの評価や見られ方に変化はありましたか。

前田儒郎:
Webtoonという形式にこだわらず、漫画という大きな括り、作品という括りの中で、少しずつですが実績を残すことで、作家さんの才能と編集部の力が認められ始めていると感じています。実際、今年2025年の「次にくるマンガ大賞」WEBマンガ部門での3位入賞や、継続的な地上波TVドラマ化などは、私たちが単なるWebtoon制作会社にとどまらず、マスに広がる大ヒット作品の創出を目指す会社であることの証明になったのではないでしょうか。これは、私たちが「今世紀を代表するコンテンツを創る」というミッションに沿って進んでいる一つの大きな成果です。

成長を最速で実現する仕組み 挑戦者を支える人事思想

ーー貴社で働くことには、どのようなキャリアの可能性や魅力があるのでしょうか。

前田儒郎:
エンタメ業界は「打席に立たないと何もはじまらない」世界です。特に漫画制作は経験値が重要で、弊社では圧倒的に経験値を積みやすい環境を提供しています。一般的な会社であれば下積みから始まるところを、私たちは、それでも成り立つ採用とオンボーディングシステムを磨き込んで、入社して下積みを経ずにいきなり本番の打席に立ってもらうことで、成長を加速させています。だからこそ、現在は老舗の大手出版会社や他のエンタメ業界からの中途経験者の転職も続いており、入社後の裁量の幅を踏まえても、成長できる環境だと確信しています。

実際に昨年入社した新卒社員は、中途を含む約40名の編集者の中から選ばれ、2027年に向けた社運を懸けた新設の編集部の立ち上げメンバーのうち1人として抜擢されました。現在はその中心メンバーとして大いに活躍しています。

また、IP展開を積極的に行っているため、漫画編集者からアニメやグッズのプロデュースに関わったり、逆に映像化担当から編集者になったりなど、経験できる幅が非常に広いのも特徴です。実際に今年はドラマ化も実現しており、さらに現在は数年先を見据えたアニメ化プロジェクトも水面下で進んでいます。

ーー挑戦者を後押しする、貴社の人事評価の思想についてお聞かせください。

前田儒郎:
弊社の人事制度は、ミッション達成に会社を少しでも近づけた人にさらなる成長の機会を与える仕組みになっています。成果を出せば出すほど、より大きな予算や権限、ポジションといったチャレンジの機会が与えられます。これを年4回の人事評価で実行しています。

入社時や直近の成果をミッションへの貢献度として評価し、達成している社員には積極的に次のポジションを与え、成長を促しているのです。意欲的な人からこそヒットは生まれるため、自分から進んでやる人材が集まる環境を整えています。

グローバル戦略と35ヵ年計画が描く未来

ーー市場が成熟に向かう中で、今後の成長の鍵となる要素は何でしょうか。

前田儒郎:
今後の成長は「IP展開」と「もっと面白いWebtoon作品を作れるか」という本質の追求の二軸にかかっています。現在、国内の電子漫画市場は概算だと5000億円、Webtoonは1000億円規模と言われています。しかし、まだ誰もが知る「国民的な大ヒット」と呼べる代表作が生まれていません。名作が生まれた時、市場は爆発的な第二次成長期に入ると見ており、そこにチャレンジし続けることが重要です。

同時に、漫画だけにとどまらず、アニメ、グッズ、ゲーム、ドラマなど全方面へのIP展開を積極的に推進する必要があります。これにより、読者の熱を作品で発散できる出口を増やしていく必要があるのです。

ーー今後の海外戦略についてどうお考えでしょうか。

前田儒郎:
私たちの目標は、作家さんと一緒に作品をつくり、その作品を多くの人に読んでいただくことです。この「作家さん」という才能の源泉が日本国内はもちろんのこと、アジア全体や世界中から来ていただける環境にしたいと考えています。

具体的には、将来的なASEAN圏内の才能へのアクセスを見据え、インドネシアのコンテンツスタジオに出資しました。北米も大きな可能性を秘めている市場として、積極的に攻めています。才能をグローバルで調達し、つくった作品を日本、欧米、アジアへとグローバルに展開することが、今後のコンテンツ産業においては欠かせない道筋だと捉えています。

ーー長期的なビジョンについてお聞かせください。

前田儒郎:
「経営35ヵ年計画」という計画を立てています。これは、今世紀を代表するコンテンツを生み出すために設計しました。その中間地点として2035年、つまり今から10年後に達成すべき目標に、「その年を代表する国民的な大ヒット作を生み出すこと」を掲げています。街中で10人に聞けば8割以上が知っているような作品をイメージしています。

今はこの目標達成に向けて、編集部の強化やIP展開への準備を淡々と進めています。それは、従来の出版社が70年かけて築いた地位を、今の時代ならではの創意工夫と努力で実現するという挑戦でもあります。

編集後記

ソラジマが目指すのは、「今世紀を代表するコンテンツ」を生み出し、日本のエンタメ産業を次世代へと繋げるという、極めて野心的かつロジカルな挑戦だ。その根底には、ヒットの仕組みを戦略的に追求しつつ、作家の才能を最大限に生かしたいという「作家ファースト」の熱い思いがある。従来の業界構造に縛られず、35ヵ年計画という長期ビジョンで挑戦し続ける同社。高い志を持ち、エンタメ業界を変えたいと願う意欲的な若者にとって、これほど成長の機会に恵まれた場所はないだろう。同社の未来とその挑戦に今後も注目したい。

前田儒郎/早稲田大学教育学部、フランスのソルボンヌ大学大学院文化地理学科卒業。2017年より日本食チェーン店のフランス事業開発責任者を経て、2019年に「今世紀を代表するコンテンツを創る。」をミッションに掲げるオリジナル漫画IPカンパニー・株式会社ソラジマを萩原と共同創業。現在は同社代表取締役Co-CEOとして、縦型フルカラーのスマホ漫画「Webtoon」を中心に数多くのオリジナル作品を制作・配信し、日本だけでなく、韓国・北米・中国など世界11カ国・地域で展開している。