※本ページ内の情報は2026年1月時点のものです。

日本の社会インフラを支える下水道管の老朽化が進んでいる。近年は大規模な陥没事故なども発生し、下水管メンテナンスの重要性が再認識された。高度経済成長期に整備された管路の多くが寿命を迎えつつある。これまでのように壊してつくり直す方法に代わり、長く使い続けるための新たな維持管理手法が求められる。

こうした中、株式会社ヤマソウは約50年にわたり社会を支えてきた。下水道管路メンテナンスのパイオニアとして、不可欠な役割を担い、長年の経験と革新的な技術を融合させ、未来のインフラ維持に貢献している。同社の代表取締役、大淵久敬氏に歴史と未来についてうかがった。

現場と創業者の背中から学んだこと

ーー新卒で建設会社に入社された当時のご経験をお聞かせください。

大淵久敬:
父が創業した山惣メンテナンス株式会社(現・株式会社ヤマソウ)を将来的に継ぐことを考えていましたが、まずは社会経験を積もうと考え、大学卒業後の1983年に重機土木の建設会社へ入社しました。当時はダムや高速道路といった大型工事が盛んでした。私は事務職でしたが、現場で重機を操り、工務の手伝いもしました。職種の垣根を超え、さまざまな経験を積むことができました。

巨大なダンプカーや重機が日常的に稼働する現場でしたので、常に危険と隣り合わせでした。そのため、安全に対する意識と社員教育が非常に厳格で、特に礼儀や規律が徹底されていたのをよく覚えています。人里離れた山奥での作業も多く、社会から隔絶されたような環境で、人としての基本を叩き込まれたことは今でも活きています。

ーーその後家業に戻られた際、どのようなことを感じましたか?

大淵久敬:
1986年に山惣メンテナンスに入った際、父のやり方をそのまま踏襲するだけでは会社は続かないと強く感じました。創業者が築いた経営や現場オペレーションは、属人的でアナログな部分が多く、次世代へつなぐにはシステム化と「見える化」が不可欠でした。組織として機能する仕組みを整えることが、まず自分の役割だと考えたのです。

経営危機を乗り越えた改革と挑戦

ーー2002年に代表取締役に就任された際の状況についてお聞かせください。

大淵久敬:
私が代表取締役に就任した2002年頃は、会社にとって非常に厳しい時期で、バブル崩壊の影響もあり、いわゆる自転車操業に近い状態でした。そのため、まずは会社を安定させ、組織を整備することから着手しました。

また、採用にも苦労しました。当時は新卒採用など夢のような話で、即戦力の中途採用が中心でした。求人媒体を活用し、少しでも多くの人材に出会えるよう試行錯誤を重ねました。社屋の建設に伴う借入や、不採算部門の整理なども含め、負の遺産を清算しながら売上回復にも同時に取り組んでいました。

ーー貴社の事業内容について教えてください。

大淵久敬:
弊社の事業は、下水道管路のメンテナンスが基本です。当初は清掃がメインでしたが、現在は調査から補修、改築までをワンストップで提供しています。特に、人が入れない管路の調査には遠隔操作のロボットを使用します。損傷が見つかれば、特殊な機械工法で管路の内面を修復します。これは従来の方法ではなく、道路を掘らずに管路を直す特殊な作業で、弊社の核となる事業です。

ーー同業他社との違いや、特に強みとされている点を教えてください。

大淵久敬:
今、業界で高まっている官民連携のニーズに対応しています。行政の人手不足を背景に、民間企業が公共事業の実行を担う場面が増えてきました。弊社も横浜市と連携して下水道管の全域調査を担っています。

最近の陥没事故などを受け、何よりも「現状把握」が重要だと考えており、特に、腐食の怖れがある場所や人が入れない場所の調査は不可欠です。しかし、既存技術だけでは対応しきれず、海外技術の導入に加え、異業種の企業と連携することも必要だと考えています。

具体的には、ヨーロッパの先進的な保守技術を導入・改良し、日本仕様に合わせて活用しており、共同出資したLDPI株式会社という会社を通じて、機材の輸入や開発も行っています。また、医療分野に依頼し、特殊機器を開発してもらうといった枠を超えた協力も行っています。私は「人より一歩先は難しくても、半歩先には進もう」を信条としており、新しい技術を積極的に取り入れて行政に提案することで、より高度な事業展開を目指しています。

未来への投資 人づくりと組織づくり

ーー採用面での工夫や、どのような人材を求めているかを教えてください。

大淵久敬:
この業界全体が新卒採用に苦労している中、弊社では「ゲーム感覚でロボットを操作できる」ことを切り口に興味を引いています。機械操作に親しみのある学生や、環境問題に関心のある層が興味を持ってくれる傾向があります。

資格があればもちろん歓迎ですが、必須ではありません。大切なのは入社後に意欲をもって学び、資格取得に挑戦できる人です。実際、7~8割の中途社員は異業種出身で、建設とは無関係のバックグラウンドから入ってきた人も多数います。なお、資格取得の費用は会社が全額支援しています。

現在働いてくれている社員は、全体的に素直で穏やかなタイプが多いですね。チーム単位で動く仕事が多いため、協調性のある方はすぐに馴染めますし、ワークライフバランスを大切にしたい人にも向いていると思います。

ーー後継者育成や組織強化についてはどうお考えですか?

大淵久敬:
次男が4年前に入社し、先日子会社の社長に就任しました。他社で社会人経験を積んでからの入社でしたが、今は経営を学ぶ段階として任せています。将来的にはグループ全体の後継候補として育てていく予定です。

また、今後を見据えて、経営幹部の育成も急務です。現在はベテラン層と若手が二極化しており、40代前後の中間層が手薄です。新卒採用と並行して、プレイングマネージャーとして動けるキャリア人材の採用も強化していきます。

ーー社員の方へは、どんなメッセージを伝えていますか?

大淵久敬:
入社式では、必ず5つのことを話しています。「健康であること」「誠実であること」「進取の気性を持つこと」「謙虚であること」「信念を持つこと」。中でも「進取の気性」つまり新しいことに積極的にチャレンジする姿勢を特に重視しています。

業界未経験でも、学ぶ姿勢と挑戦する意欲があれば必ず成長できる。それが、弊社の文化であり、未来への投資だと思っています。

編集後記

取材を通し、大淵社長の強い意志に感銘を受けた。それは、創業者の思いを継ぎつつも、旧態依然からの脱却を目指す意志だ。「現状把握」を重視し、社会インフラを支える先見性を持つ。そして課題解決のため、柔軟な事業展開と技術革新を続ける。若手を惹きつける視点や姿勢は、老舗ながら進化する同社の挑戦だ。今後の活躍に一層の期待が膨らむ。

大淵久敬/1960年10月東京都日野市生まれ。1983年中央大学商学部卒業後、山﨑建設株式会社入社。1986年山惣メンテナンス株式会社(現・株式会社ヤマソウ)に入社し、取締役就任。2002年株式会社ヤマソウ代表取締役就任。現在、公益社団法人日本下水道管路管理業協会理事兼関東支部長、公益社団法人日本洗浄技能開発協会理事も務める。