※本ページ内の情報は2026年1月時点のものです。

在宅介護サービスを中心に、全国で事業を展開する株式会社ツクイ。同社は顧客目線のワンストップサービスを強みとし、超高齢社会における日本の課題解決に挑み続けている。現場での経験を原点に、会社の成長とともにキャリアを重ね、第二創業期を託されたのが代表取締役社長の高畠毅氏である。コロナ禍という未曽有の事態の中で就任した同氏が描く介護の未来とは。「介護・医療・介護保険外」という3つの柱を据え、介護を日本の重要インフラへと昇華させるためのビジョンとその情熱に迫る。

感謝の言葉が原動力 介護の道へ進んだきっかけ

ーー介護業界に飛び込んだ経緯についてお聞かせください。

高畠毅:
大学卒業後、介護の仕事をしていた母に「これからは介護職に男性などの多様な人材が必要になる」と勧められ、ツクイ金沢のオープニングスタッフに応募したのがきっかけでした。当時、入社前の見学で先輩について回る経験をしました。その際、お客様やそのご家族から「ありがとう」と感謝される姿を見て、素晴らしい仕事だと直感しました。

実際に働き始めてからも、お客様からの感謝や、ご家族からの「20代なのに偉いね」という言葉が何よりの励みになりました。どうすればお客様を笑顔にできるか考えるのが楽しく、私が転勤するときには涙を流してくださるご家族もいて、この仕事を選んで本当によかったと心から思いました。

現場から経営の道へ 第二創業期を託された社長就任

ーー現場から経営へ移られた経緯と、社長就任後の取り組みについておうかがいします。

高畠毅:
会社の規模が拡大する中で、マネジャーとして全国の新規事業所の立ち上げに携わりました。そんな中、会社初の中期経営計画策定時に若手抜擢の提言があり、経営戦略室やIRなど介護現場とは異なる経営の中枢に関わることになりました。これが現場と経営の両視点を養う転機になったと考えています。

その後、新たなオーナーから2021年に社長就任の指名を受けることになりました。強い責任とともに「私たちの手で会社の未来をつくれるんだ」という思いが込み上げてきました。就任当時はコロナ禍でしたが、高齢者の心身の活力が低下する「フレイル」のリスクを強く懸念し、現場から「デイサービスに連れてきてください」と発信し続けました。同時に、デイサービスだけでは在宅の介護生活を支えきれないという課題から、「通い」「泊まり」「訪問」を一体的に提供する事業の多角化を進めようと模索しました。

3本柱で未来を拓く 介護業界のインフラを支える挑戦

ーー他社にはない、ツクイならではの強みは何だとお考えですか。

高畠毅:
お客様目線でのワンストップサービスを提供できる点です。デイサービスに通われているお客様から「私の通える地域にもツクイのショートステイや訪問介護があればいいのに」といったお声も多くいただいたので、自社だけでなくグループ会社とも連携しながら、多様なニーズに応えられる体制づくりを進めています。また、介護報酬の加算取得に積極的な点も強みです。これは国が求める専門性の高いサービス提供につながります。結果としてスタッフはスキルアップし、より手厚いケアが必要なお客様も受け入れられるようになりました。

ーーご家族やケアマネジャーを支える取り組みについて教えてください。

高畠毅:
介護はご本人だけでなく、支えるご家族やケアマネジャーの方々にとっても大きな負担が伴います。私たちはその負担を軽減するため、法人向けサービスとして介護保険外サービス”よりそいコンシェル”を立ち上げました。実はこのサービスは、発案者自身が親の介護を機に離職を考えたという実体験に基づいています。当事者の視点から生まれたサービスだからこそ、本当に必要なサポートを提供できると考えています。

ーー今後どのような戦略で事業を拡大していこうとお考えですか。

高畠毅:
私たちは今後の成長戦略として、「介護・医療・介護保険外」の3本柱を掲げています。というのも、従来の介護保険制度に依存した経営モデルだけでは、社会の賃金上昇に対応できず、業界全体の低賃金という課題を根本から解決できません。

そこで、医療や介護保険外サービスといった新たな収益の柱を育てることで、介護事業で働く人たちの処遇を改善し、産業全体を支える基盤を築きたいと考えています。この3本柱の確立は、介護サービスを持続可能な社会インフラとして未来に残していくために不可欠な戦略です。

介護は社会のインフラ 誰もが笑顔でいられる未来へ

ーー戦略の実行にあたり、重視されている点はありますか。

高畠毅:
2040年までの中期的見通しでは、日本は地域によって高齢化の進展度や労働人口の状況が大きく異なります。全国一律のサービスでは、本当に必要とされるサポートは届けられません。それぞれの地域が抱える課題やニーズに即したサービス展開が必要です。今後は、各エリアの責任者に大きな権限を委譲し、地元の経営者のような視点で迅速な意思決定ができる体制を構築していきたいと考えています。

ーー最後に、この記事の読者へメッセージをお願いします。

高畠毅:
介護は、日本社会における重要なインフラだと考えています。誰もがいつかは利用者として、あるいは支える立場として関わる可能性があります。だからこそ、少しでもこの業界に興味を持っていただけたら嬉しいです。介護の仕事は、「ありがとう」という言葉に直接触れられる、本当にやりがいに満ちた素晴らしい仕事だと確信しています。これからも、サービスを受ける方、支えるご家族、働く仲間など、関わる全ての人が笑顔になれる社会を目指して、挑戦を続けます。

編集後記

現場で顧客から直接受け取った「ありがとう」の言葉を原動力に、経営のトップへと至った高畠氏。彼の言葉からは、介護を単なるサービスではなく、日本社会を支える"インフラ"と捉える強い意志がうかがえる。超高齢社会という課題に対し、「介護・医療・介護保険外」の3本柱で挑む同社の戦略は、介護の持続可能性を問うものだ。ツクイが目指す未来の実現に向けた挑戦は、今後の介護業界の動向を占う上で重要な試金石となるだろう。

高畠毅(たかばたけ・たけし)/1972年生まれ、石川県出身。日本体育大学 体育学部卒業。実母が介護職に従事していた経験から「これからは多様な人材が必要になる」という言葉を受け、介護業界への就職を決意。1997年株式会社ツクイに入社し、訪問入浴の介護スタッフとして勤務。現場経験やマネジメント経験を経て、2021年に同社代表取締役社長に就任。