
大分県に本社を構え、IoT技術を核とした移動体通信やキャッシュレス決済、ロボットなどの事業を多角的に展開するFIG株式会社。ハードウェアからソフトウェア、ネットワーク/クラウドまでを一貫して自社開発できる体制を強みに、社会がまだ気づいていない課題を見つけ出し、解決策を形にし続けている。創業から上場に至るまで、幾多の困難を乗り越え、常に挑戦を続ける同社を率いるのは、代表取締役社長の村井雄司氏である。「まだ世に無いもの」をつくり出す喜びを原動力にイノベーションを追求する同氏に、これまでの軌跡と事業にかける情熱を聞いた。
幾多の困難を乗り越えた道のり 逆境から掴んだ上場の実現
ーー創業のきっかけについて教えてください。
村井雄司:
FIGグループの前身であるモバイルクリエイトを設立する前、伯父が経営する会社で働いていた時期に、お客様からの相談をきっかけにタクシーの配車システム開発に携わりました。そこで開発したシステムが非常に好評で、これをきっかけに分社独立という形で創業したのが始まりです。
ーー創業当初から上場は意識されていたのでしょうか。
村井雄司:
全く想像していませんでした。意識し始めたきっかけは、開発資金の相談で銀行に行った際のことです。そのとき、「君がやっていることはベンチャー企業だね」と言われました。そこで初めて「ベンチャー」という言葉を知り、紹介されたベンチャーキャピタルの社長から「上場を目指してみませんか?」と提案を受けました。自分のやりたい開発で会社を大きくできる可能性があると知り、そこから上場を明確に意識するようになりました。
ーー上場に至るまでの経緯についてお聞かせいただけますか。
村井雄司:
本当に色々なことがありました。当初は福証Q-Boardを目指していましたが、当時活用されていた遡及監査を取り巻く制度や監査環境が変化し、上場計画はいったん白紙に戻ることになりました。その後、東証マザーズ(現・東証グロース)への上場を目指していた矢先にリーマンショックが発生。これにより、上場は一度断念せざるを得ませんでした。
しかし、その逆境があったからこそ、通信費で収益を得るストック型のビジネスモデルである「IP無線」の事業が生まれたのです。この事業が軌道に乗り、会社設立から10周年となる2012年に、念願の上場を果たしました。

故郷への貢献と先端事業を育む戦略的拠点
ーー社長にとって、大分はどのような存在ですか。
村井雄司:
私にとって大分は、生まれ育った大切な場所です。大分で会社を立ち上げ、地元の経済界や金融機関、行政など、これまで多くの方々に支援していただきながら会社を成長させることができました。だからこそ、大分に貢献したいという思いは非常に強いです。お世話になった方々から「大分から出ていかないでね」と言われることもあります。そのため、「私が社長の間は大分から出ていきません」と約束しています。
また、事業戦略の観点から見ても大分は非常に魅力的な場所です。ものづくりやソフトウェア開発を行う上で地方はとても良い環境ですし、何より企業として目立ちやすいという利点があります。東京の経済や人口は大分の約100倍です。そのため、東京でIT分野のトップクラスを目指すのは非常に困難ですが、大分であればトップクラスの存在になることが可能です。結果として、地元で働きたい方やUターン、Iターンを希望する優秀な人材も集めやすいと感じています。
独自のワンストップ体制 ものづくりに宿る創造の喜び

ーー数々の困難を乗り越えられた原動力は何だったのでしょうか。
村井雄司:
「為せば成る」という信念と、「まだ世に無いもの」を自分の手でつくり出したときの大きな喜びが原動力になっています。特に、最初のGPS配車システム開発の経験は、その後の大きな自信につながりました。開発当時、地図上に車両情報をどう効率よく表示させるかという点で完全に行き詰まってしまいました。「できます」と宣言した手前、解決できなければ嘘つきになってしまうと、眠れないほど自分を追い込んでいました。
そんなとき、夢の中で「捨てればいいんだ」という解決策がひらめきました。これは、飛んでくるデータを全て処理しようとするから無理が生じるという気づきでした。必要なデータと不要なデータを見極め、必要なものだけを処理するようにシステムを変更したところ、性能は劇的に改善。この問題を自力で乗り越えた成功体験を通して、「自分は物をつくれる人間なんだ」と強く実感し、それが世の中にないものをつくり出し続ける原動力と自信につながりました。
ーー貴社の強みはどのような点にあるとお考えですか。
村井雄司:
ハードウェア、ソフトウェア、そしてそれらをつなぐ通信まで、設計開発から保守までを一貫して自社で行える「ワンストップ体制」が最大の強みです。この体制があるからこそ、社会が抱える課題を見つけ出し、それを解決する「まだ世に無いもの」をつくり出す喜びを、社員一丸となって味わうことができるのです。また、必要な要素を高いレベルで自社内で融合できるからこそ、真のイノベーションが生まれると考えています。たとえば、ロボット事業がまさにそうです。すべてを自社で手がけることで、人手不足といった社会課題に応える信頼性の高い純国産ロボットを開発できました。
このように、弊社の技術的な強みは、新しい価値を創造する喜びと、社会へ貢献するやりがいに直結しています。それこそが、弊社の最大の魅力だと考えています。
次なる成長への積極投資 共に未来を創造する仲間への期待
ーー今後の事業展望についてお聞かせください。
村井雄司:
「投資なくして成長はない」という信念のもと、事業の調子がよいときにこそ、次の成長の柱へ積極的に投資すべきだと考えています。現在は、その考えに基づきロボット事業やキャッシュレス事業へ注力しており、長年まいてきた種がようやく芽吹きつつある段階です。多くがよい方向へ進んでいると確信しており、これからも社会に不可欠な存在であり続けることを目指しています。
ーーどのような方と一緒に働きたいとお考えですか。
村井雄司:
失敗を恐れないチャレンジ精神、ハングリー精神旺盛な方を求めています。弊社は「笑顔になれる企業グループ」をビジョンに掲げています。自分たちが笑顔になり、お客さまを笑顔にし、関わるすべての人を笑顔にする。このビジョンに共感し、共に未来を創造していける方と働きたいです。
編集後記
幾多の困難をチャンスと捉え、前進を止めない圧倒的なベンチャー精神。村井氏の語り口からは、世の中にないものを生み出すことへの純粋な喜びと、故郷・大分への深い愛情が伝わってきた。社会がまだ気づいていない課題に挑み、オンリーワンの技術で解決する同社の挑戦は、これからも多くの人々に笑顔を届けていくに違いない。

村井雄司/1964年大分県生まれ。タクシー配車システムの開発を機に株式上場を目指し、2002年にモバイルクリエイト株式会社(FIG株式会社のグループ中核企業)を設立し、代表取締役に就任。新規事業立ち上げや、M&Aによりグループを拡大。2012年12月に東証マザーズ(現・東証グロース)に上場を果たす。2018年に持株会社制に移行するためFIG株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。現在グループの社員数は700名を超え、グループの代表としてグループ各社の経営や事業を牽引する。