※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

まだタブレットが十分普及していなかった2010年、iPad POSレジシステムを開発した株式会社ユビレジ。スタート当初こそ苦難はあったものの、15年以上経った今でもクラウドPOSの分野を牽引している。革新的なサービスから始まった同社は、将来に向けてどのような成長戦略を描いているのか。代表取締役の木戸啓太氏に話を聞いた。

(※)記事TOP画像はユビレジの「ユ」を模ったユビレジポーズ。ロゴの由来であるタブレットを指でタップしている様子を表現している。

世界初のiPad POSレジシステムの誕生と、世界初だからこその苦難

ーー会社設立の経緯をお聞かせください。

木戸啓太:
私が会社を立ち上げたのは、大学在学中に実家が営んでいた米屋が廃業してしまったことがきっかけです。生計を立てるためにアルバイトを始め、それと同時に、私の中で「潰れない会社をつくりたい」という気持ちが芽生え始めました。その後、会社をつくりたい気持ちは徐々に強くなっていき、そこに学生特有の勢いが加わって、大学院在学中に会社をスタートしたのです。

起業を意識してから、立ち上げまで2〜3カ月という短期間の出来事でした。当時抱いていた「経済的な困難を乗り越え、自分の手で安定した事業を築きたい」という強い想いが、短期間で起業を決断・実行する道を切り拓かせたのだと思います。

ーー事業をスタートした後、特にどのような点に苦労しましたか?

木戸啓太:
世の中にまだ存在しないものを使ってもらうため、サービスの価値を伝えることに本当に苦労しましたね。「ユビレジ」をローンチした2010年当時は、ようやく初代iPadが日本で販売された状況で、タブレット端末がほとんど普及していませんでした。そうした状況で「タブレットがレジになる」というイメージを持ってもらうのが難しかったのです。

昔ながらのレジスターが主流の中でユビレジを広げるのは「飲んだことのない飲み物の味を説明して、相手に飲んでもらうようなもの」です。現在、多くのお客様に利用いただけているのは、当時、根気強く「ユビレジ」の価値を説明し続けたからだと強く感じています。

クラウドだからこそ実現できる、対応力と柔軟性の高いサービスを提供

ーー貴社の事業内容と、独自の強みを教えてください。

木戸啓太:
タブレット端末を利用したクラウド型POSレジサービス「ユビレジ」や、ニーズに合わせた関連サービスを運営しています。ユビレジの大きな強みは、クラウド技術を基盤としていることです。クラウド環境であれば導入に大掛かりな設備が必要なく、法改正や市場の変化などにも迅速に対応できます。また、システムの組み立て方次第で、個人商店からチェーン店まで、幅広いクライアントに対応できる柔軟性も兼ね備えています。

さらに、サービスの信頼性とスケーラビリティも他社との差別化ポイントです。弊社のシステムは、日に数十万件もの決済が行われる状況でも、安定した稼働が可能です。さらには、それらのPOSデータを活用したダイナミックな分析や意思決定の支援も可能です。

2024年7月には大手企業の複雑な要件のシステム開発ニーズにも対応できる「ユビレジ エンタープライズ」という新サービスをスタートし、企業VISIONも「クラウドPOSエンタープライズ領域でNo1になる」に刷新。エンタープライズ市場に舵を切りました。

サービスの強みをさらに磨き上げ、長期的に使える「ソリューション」への進化を目指す

ーー今後、事業をどのように展開していきたいとお考えですか?

木戸啓太:
新しいサービスや、既存技術を活かした商品の開発をさらに加速させる予定です。変化する消費者ニーズや業界課題に応じた価値を提供し続け、サービス産業全体の進化に貢献していきます。

私は、弊社のサービスが「サービス産業のデータインフラの整備」をテーマに進化を続けられるものでありたいと思っています。今後もユビレジの強みであるクラウドの利点を最大限に活用して、インボイス制度や軽減税率の法改正への対応のような、業界環境に応じた新しいプロダクトや機能の開発を続けていく所存です。

それと同時に、消費者や店舗側のトレンドも重視していきます。特に、キャッシュレス決済やモバイルオーダー、セルフレジの普及、さらに店舗運営における人手不足など、多くの事業者が抱える課題に応えるプロダクトを提供することが重要です。これらは単なる機能ではなく、事業継続性を支える重要なソリューションと位置付けています。

ーー現在の社員数や職場の雰囲気、求める人材像について教えてください。

木戸啓太:
現在の社員数は約90名で、平均年齢は約38歳です。勤務体系はフルリモートが基本ですが、四半期ごとに全社員が集まるイベントを開催し、リモート環境でもコミュニケーションを大切にする文化を醸成しています。

また、年功序列ではなく、オープンでフラットな社風を心がけていますね。誰でも自由に意見を出せる場をつくり、役職や年齢に関係なく「本当に良い意見」を採用することで、新人からベテランまで幅広い視点を取り入れた意思決定を実現しています。

さらに、採用においては、「吸収力」と「好奇心旺盛さ」を重視しています。ITや業務システムの知識は後から身につけられるため、経験よりも新しいことに挑戦する姿勢や、変化に対応できる柔軟性が大切です。加えて、顧客価値を追求し、クライアントの期待を超えるサービスを提供するために、本質を理解したうえでそれを形にする力が求められます。

現在は中途採用が中心ですが、今後は新卒やインターンにも積極的に門戸を開いていきたいとも考えています。特定の枠にこだわらず、やる気があり会社に貢献できる人材であれば柔軟に対応していますので、ぜひ積極的にお声がけください。

編集後記

「ユビレジ」の強みであるクラウドベースという特徴は、「ユビレジ エンタープライズ」のリリースからも分かるように、さまざまなニーズに応える柔軟性と拡張性を内包している。法改正への迅速な対応や、多様な規模の顧客に適応するシステム構築は、デジタル時代における必須の価値といえよう。

今後、企業としてのユビレジはどのような進化を見せていくのか。テーマに掲げている「サービス産業のデータインフラの整備」を実現する日は近いと感じた。

木戸啓太/石川県生まれ。慶應義塾大学大学院卒。iPadがビジネス用途として使えると確信し、2010年に起業した後、クラウドPOSレジ「ユビレジ」をリリース。飲食店のアルバイトで感じた業務の手間を解消し、サービス産業のためのデータインフラを整備したいとの思いがある。現在はPOSレジをベースに、飲食店のスタッフ向けオーダーシステムや来店客向けモバイルオーダーシステム、在庫管理システムを展開し、店舗DXの推進を図っている。