
茨城県牛久市に本社を置く株式会社Global growthは、整体院「カッパ整体院」を国内だけでなく、海外へも急拡大させている。スタッフの9割以上は国家資格を持つ理学療法士で構成され、イタリア発祥の専門手技「筋膜マニピュレーション」を軸とした医学的知見に基づく施術で、多くの患者から信頼を集めている。
同社を率いるのは、高校生の時に親の自己破産や離婚を経験し、現在は5人の息子を育てる父でもある代表取締役の遠藤敦盛氏だ。家族を養うという強い責任感を原動力に独立し、独自の組織論で成長を牽引する同氏に、理学療法士の新たなキャリアの可能性と、「世界一の整体グループ会社」を目指す壮大なビジョンについて話を聞いた。
家族を養う責任感が拓いた起業への道
ーー理学療法士を目指した経緯と、起業された背景についてお聞かせください。
遠藤敦盛:
高校時代は筋力トレーニングやキックボクシングに打ち込んでおり、ストイックに身体を鍛える日々を送っていました。その経験から将来も運動や身体に関わる分野に進みたいと考えていたところ、看護師である母から「理学療法士という資格がある」と教えてもらったのです。そこで初めて「理学療法士」の存在を知り、運動の分野に関われる仕事である点に魅力を感じ、この道に進むことを決意したのです。
その後、20歳で第一子を授かり、20代前半で3人の子どもに恵まれたことで、状況が大きく変わりました。家族を養わなければならないという強い責任感が芽生えたのです。しかし、25歳の時に病院勤務の給与だけでは生活が厳しいという現実に直面しました。そんな折、ナポレオン・ヒルの「思考は現実化する」などの自己啓発書に出会い、現状を打破するには「自分で事業をやるしかない」と起業を決意しました。子どもたちの存在がなければ、起業という道は選んでいなかったと考えています。
ーーそこから、どのように開業へと踏み切られたのでしょうか。
遠藤敦盛:
起業を決意した後、まずは病院勤務でリハビリ型デイサービスの管理者を任され、事業所を満床にするなど自分なりに「やるべきことはやりきった」と思えるまで業務に打ち込みました。その達成感を区切りとして、30歳を目前に独立を実行に移しました。当時は貯金が10万円ほどしかなく、まさに背水の陣でのスタートでしたが、在職中からホームページの制作やWeb広告などの集客準備を入念に進めていました。その甲斐あって、開業初月から67名のお客様にお越しいただき、月商116万円でスタートを切ることができました。
専門性と独自の組織文化で築く優位性
ーー貴社の主力事業の強みについて、どのようにお考えでしょうか。
遠藤敦盛:
弊社では「カッパ整体院」を国内58店舗、海外3店舗を展開中です。強みはスタッフの9割以上が理学療法士や鍼灸師といった国家資格保有者で構成されている点です。医学的な知識を基盤にしているため、お客様に提供できる価値の専門性が大きく異なります。特に、重度の症状で悩まれている方々に対し、根本的な改善を促せるのが大きな強みです。
ーー施術の核となる「筋膜マニピュレーション」について教えてください。
遠藤敦盛:
「筋膜マニピュレーション」は、イタリアの理学療法士が開発した専門的な手技です。医学的な知識を持つ医師や理学療法士、鍼灸師でなければ研修に参加することさえできず、巷で流行している「筋膜リリース」とは一線を画します。解剖学に基づいた理論に裏付けられており、世界的に普及が進んでいる技術です。
ーー人材育成、組織づくりでは、どのような取り組みをされていますか。
遠藤敦盛:
「リードマネジメント」という考え方を導入しています。これは、叱責や批判といった外的コントロールを排除し、傾聴や励まし、承認といったアプローチでスタッフの主体性を引き出すマネジメント手法です。この文化を浸透させたことでスタッフの定着率が大きく向上し、一人ひとりが自律的に成長しやすい環境が整いました。
(※)リードマネジメント:アメリカの精神科医ウイリアム・グラッサー博士が提唱した選択理論心理学をベースにしたマネジメント手法。
病院勤務の枠を超える理学療法士の未来

ーー従来の理学療法士が抱えるキャリアの課題とは何だとお考えですか。
遠藤敦盛:
病院勤務の理学療法士は、診療報酬制度の制約上、1日に診られる患者数が決まっており、それが収入の上限に直結します。業界の平均年収は約432万円であり、どれだけ技術を磨いても稼げる額に限界があるのが現状です。より多くの患者に貢献し、正当な評価を得たいと願う理学療法士にとって、もどかしい環境といえるでしょう。
ーー貴社では、理学療法士にどのようなキャリアの可能性を提供していますか。
遠藤敦盛:
弊社の理学療法士の平均年収は472万円と、業界平均を上回る水準です。自費診療のため、患者さんに求められるセラピストであるほど正当に評価され、収入にも反映されます。さらに、店長やエリアマネージャーへの昇格はもちろん、社内独立支援制度を利用してフランチャイズオーナーになるといった、多様なキャリアビジョンを描ける点が、大きな魅力となっています。
ーー事業を多角化されていますが、今後の展開についてお聞かせください。
遠藤敦盛:
「多くの笑顔と健康を創造する」という理念のもと、整体事業に加え、育毛や巻き爪矯正、マシンピラティスといった周辺領域にもサービスを拡大しています。重症の方から健康維持を目指す方まで、幅広くサポートできる体制を築いていきたいと考えています。
世界一へ、未来に向けた成長戦略
ーー国内外における今後の具体的な事業展開のビジョンをお聞かせください。
遠藤敦盛:
国内に関しては、再来年を目標にグループ全体で100店舗体制を目指しています。その成長の鍵となるのがフランチャイズ(FC)展開です。現在、弊社のFC店舗は投資回収期間が平均12.4ヶ月、営業利益率が28.53%という非常に高い実績を出しています。この収益性の高さを強みに、外部オーナー様の参画を募るだけでなく、社内で育ったスタッフが独立してFCオーナーになる「社内独立」も積極的に支援し、より強固な経営基盤を構築していく方針です。
一方、海外については、現在展開しているベトナム、台湾に加え、フィリピンなど親日国を中心に5カ国への進出を視野に入れています。日本のきめ細やかな技術とサービスは現在展開している海外でも高く評価していただいており、現地のニーズに応えながらグローバル展開を加速させていきます。
ーー今後のビジョンを実現していく上で、最も重要視することは何でしょうか。
遠藤敦盛:
「人ありき」という考え方です。かつては売上目標を追い求めた時期もありましたが、今はセラピスト一人ひとりの成長が事業拡大につながるという確信があります。充実した教育制度や評価制度への投資を惜しまず、スタッフが「ここで働いてよかった」と思える会社をつくること。それが結果的に、お客様への提供価値を高め、企業を成長させると考えています。
ーー集客やブランディングにおいて、現在注力している取り組みはありますか。
遠藤敦盛:
現在はリスティング広告から、TikTokやInstagram、YouTubeといったSNS活用へ大きくシフトしました。実際にTikTokで100万回再生を記録するなど反響は大きく、集客につながっています。また、この発信力は集客だけでなく、認知拡大やブランディング、求人活動にも活用しており、動画を通じて弊社の技術や魅力を広く届けることに注力しています。
ーー最後に、5年後、10年後にはどのような企業グループを目指していますか。
遠藤敦盛:
まずは5年後をめどに東京プロマーケットへの上場を果たし、10年後にはグループ売上100億円の達成を目指します。私の人生のビジョンは「縁ある人を物心ともに豊かな人生に導く」です。このビジョンを実現するために、「世界一の整体グループ会社」という目標を掲げています。会社の成長を通して、スタッフとその家族、そしてお客様を豊かにしていくことが、私の使命だと考えています。
編集後記
「思考は現実化する」という言葉を、遠藤氏は自らの半生で体現してきた。家族への責任感を原動力に事業を軌道に乗せたその根底には、常に「人」への真摯な眼差しがある。理学療法士という専門職の可能性を解き放ち、スタッフの成長を企業成長に直結させる「人ありき」の経営信念。その先に描く「世界一の整体グループ会社」という壮大なビジョンは、もはや単なる夢物語ではない。確かな戦略と情熱に裏打ちされた、実現性の高い未来図である。

遠藤敦盛/1985年生まれ。八千代リハビリテーション学院および放送大学卒業。理学療法士として病院での臨床経験を積んだ後、30歳で独立し「カッパ整体院」を開業。確かな技術と経験を基に、現在10年目を迎える。