※本ページ内の情報は2026年1月時点のものです。

「家族×テクノロジー」をテーマに、新しい価値の創出に取り組むファミリーテック株式会社。同社が提供する「ファミリーバンク」は、家計管理にとどまらず、家族の生活に関わる情報を一元的に扱えるアプリだ。日本ではまだ一般的とは言えない家族でのお金の管理や共有を、テクノロジーの力で支援している。

学生時代の音楽活動をきっかけにプログラミングを学び、エンジニアとしてキャリアを築いてきた代表取締役の中村貴一氏。自身の原体験を起点に、「人々の暮らしをより良くする」ことを軸とした事業づくりに取り組んできた。今回は、ファミリーテックの事業の独自性や、中村氏が描く暮らしの未来像「クラシ3.0」について話を聞いた。

組織の枠を越え、独自の道を選んだ創業ストーリー

ーーキャリアの原点や、現在に至るまでの経緯について教えてください。

中村貴一:
大学生の頃、音楽活動をしていたことが最初のきっかけです。当時流行していたSNS「MySpace」で自分のページを運営しており、「もっと表現の幅を広げたい」と思い、プログラミングを独学で学び始めました。大学の専門は社会科学でしたが、興味を持った分野について自ら学びを深めていきました。

その後エンジニアとして働く中で、自分の創造性をより発揮できる環境で挑戦したいと考えるようになりました。自ら意思決定し、価値創出に向き合える立場で取り組みたいと思い、独立を選びました。

ーー現在の事業につながるきっかけは何だったのでしょうか。

中村貴一:
フリーランスとして活動していた当時、新しい技術を活用して価値を生み出せないかと考えていました。その中で、コミュニティ単位でお金や情報を管理できる仕組みに着目し、「Gojo(ゴジョ)」という互助会を簡単に組成、管理できるアプリを開発しました。

リリース後、地域コミュニティだけでなく、共働き夫婦の生活費管理や、離れて暮らす家族同士での支出管理など、さまざまな使われ方を目にしました。こうした利用シーンを通じて、「家族とお金の管理」という領域には、まだ十分に応えられていないニーズがあると感じたことが、現在の事業につながっています。

家族の暮らしを支える「ファミリーバンク」というアプローチ

ーー現在提供されている事業の特徴について教えてください。

中村貴一:
弊社では「ファミリーバンク」という、夫婦やカップルが家族のお金や生活に関する情報をまとめて管理できるアプリを提供しています。銀行口座やクレジットカード、カレンダーなど、家族の暮らしに関わる情報を一つのアプリで扱える点が特徴です。

用途ごとに複数のアプリを使い分けるのではなく、パートナーを招待することで、関連する機能をスムーズに利用できるようになります。

ーー共同で口座を管理する仕組みについて教えてください。

中村貴一:
海外では、複数人で共同名義の口座を持つ「ジョイントアカウント」が一般的ですが、日本ではまだ広く浸透していません。ただし、これは法律で禁止されているわけではありません。

近年、銀行のシステムを外部事業者が利用できる銀行APIが整備されてきました。こうした仕組みを活用することで、現行制度の枠組みの中で、家族でお金を管理しやすい体験を提供できるようになっています。実現にあたっては、ライセンスや契約面など多くの課題がありましたが、一つひとつ対応してきました。

ーー事業を進めるうえで、大切にしている考え方は何でしょうか。

中村貴一:
前例が少ない領域だからこそ、自分の頭で考え、仮説を立てて検証を重ねることを大切にしています。判断の軸として意識しているのは、短期的な数字だけではなく、この取り組みが人々の暮らしの向上につながるかどうかです。

技術と組織、両面から描く今後の展望

ーー今後、注力していきたいポイントについて教えてください。

中村貴一:
サービス面では「家族単位の与信モデル」と「手数料無料のキャッシュレス決済」に取り組んでいます。与信は個人単位で評価されるのが一般的ですが、共働きが増え、1人の子供に対して6ポケットあるようにもなってきています。家計の実態は世帯単位で成り立っており、自分たちはそれに則した与信の仕組みを模索しています。

また、キャッシュレス決済については、手数料の高さもあり、日本では普及率が40%程度にとどまっています。弊社は、最新技術を用いて決済システムをゼロから構築しており、圧倒的な機動性と価格優位性をもっております。今後、それを活用し、決済手数料がゼロの決済サービスを提供していく予定です。

組織面では、中核となる人材を育てていくフェーズに入っています。今後組織を拡大していく中でも、スピードや質を落とすことなく、価値を提供し続けられる体制をつくっていきたいと考えています。

ーー長期的に目指しているビジョンについて教えてください。

中村貴一:
私たちは「クラシ3.0」という、新しい暮らしのあり方を提唱しています。性別による役割分担が前提だった時代を「1.0」、共働きが当たり前になった一方で忙しさが増した現代を「2.0」とすると、「クラシ3.0」はテクノロジーによって日常の事務作業を効率化し、家族としての時間と個人の時間を両立できる暮らしです。

長期的には、家族領域において多くの人に選ばれる存在になることを目指しています。まずは日本での認知を高め、その先にグローバル展開も見据えています。

編集後記

中村氏の言葉からは、テクノロジーを通じて人々の暮らしをより良くしたいという一貫した姿勢が伝わってくる。「クラシ3.0」という概念は、家族と個人の時間を両立させる新しい暮らし方として、今後さらに注目を集めていくだろう。

中村貴一/1986年、鹿児島県生まれ。早稲田大学卒業後、SIerやITベンチャーを経て、株式会社ベイカレントに入社。大手ゲーム会社のシステム基盤開発や先端技術の研究支援に従事する。2016年に株式会社BrainCatを創業し、オンライン共同財布サービス「Gojo(ゴジョ)」を開発。その後、株式会社CAMPFIREへ事業譲渡を行う。2021年5月、ファミリーテック株式会社を共同創業し、代表取締役に就任。