※本ページ内の情報は2026年1月時点のものです。

幼児体育指導のパイオニアとして、50年以上にわたり子どもたちの健全な育成を支えてきた幼児活動研究会株式会社。同社は「人を喜ばす」という揺るぎない信念のもと、社員一人ひとりの人間的成長を促す独自の社風を築き上げている。その根底には、人を喜ばせることの尊さ、そして挑戦と失敗から学ぶことの大切さを説く、独自の教育哲学があった。創業の原点となった子どもたちとの出会いから、幾多の困難を乗り越え辿り着いた「社員第一」の経営、そして未来の教育が目指すべき姿とは。代表取締役、山下孝一氏の情熱に満ちた言葉に耳を傾ける。

「必要とされる喜び」から始まった幼児体育指導者としての歩み

ーー社会人としてのキャリアはどのようにスタートされたのでしょうか。

山下孝一:
大学では中高の国語教師を目指していましたが、その道には進めませんでした。そんな時、幼稚園の子どもたちに体操を教える機会があったのです。私自身、わずかながら器械体操の経験があり、その経験を生かして、子どもたちにはマット運動や跳び箱ではなく、身体を動かす楽しさを伝える体操から始めました。実際に指導したところ、子どもたちは喜んでくれました。その純粋な笑顔と「楽しかった」という言葉は今も忘れられません。

ーーその経験が現在の事業につながった出来事はありますか?

山下孝一:
一週間後の二度目の日、子どもたちは毎朝、幼稚園の門の前で私を待っていてくれたのです。それまでの人生で、誰かから心の底から必要とされたという経験はありませんでした。小さな子どもたちが私のことを待っていてくれる。そのことに、自分が生まれてきた喜びや存在意義を初めて感じることができました。あの時の感動がなければ、今の会社は決して存在しなかったでしょう。人から必要とされることが、私のすべての原点です。

社員こそが主役 失敗から学び辿り着いた独自の経営哲学

ーー経営者になってから、特に大きな学びとなったご経験はありますか。

山下孝一:
創業当初の私は、「社長である自分が稼いでいる」「自分が全てやっている」と勘違いし、傲慢になっていました。その結果、社員から「社長にはついていけない」と言われ、次々と社員が辞めていく事態を招いてしまったのです。「お客様第一」と言いながら、実際にはお客様を現場で支えている社員のことを全く見ていなかった。辞めていく彼らは、無言で私の間違いを教えてくれていました。そこで初めて、お客様を直接喜ばせているのは私ではなく社員なのだと痛感しました。社員を大切にせずして、お客様の満足は生まれない。その真理に気づき、会社の宝は社員なのだと心を入れ替え、経営の根幹を変えたのです。

ーー社員と向き合う上で、大切にされている考え方は何でしょうか。

山下孝一:
現在、私は学生や新人に必ず伝えている言葉があります。それは、「仕事とは、人を喜ばし、幸せにし、日本社会、ひいては人類の進化成長に貢献するもの」、そして「会社とは、社員が仕事を通して人間性を高め、成長し、幸せになるための職場である」ということです。社員を採用するということは、その人の人生を預かるということ。だからこそ、社長である私には社員が失敗に負けない、挑戦できる環境を作る責任があります。もし社員が失敗したとしても、それは挑戦させた私の責任。そうした覚悟を持つことが大切だと考えています。

「人を喜ばす」企業文化を育むために行う凡事徹底の精神

ーー社員教育において、具体的にどのようなことに取り組まれていますか。

山下孝一:
「形から入り心に至る」という考えを大切にしています。挨拶やお辞儀の角度、スーツの着こなしといった身だしなみまで、目に見える形を徹底的に整えています。挨拶や身だしなみなど形を整えることは、「有言実行」や「言行一致」といった誠実な心の在り方にも通じます。嘘をつかず、人として正しい姿勢を貫くこと。そうした日々の積み重ねが、人間力を高めていくと考えています。また、新入社員には、4月の初任給で親にプレゼントを贈ることを勧め、親孝行を推奨しています。自分を支えてくれた人に感謝の気持ちを伝える経験を通して、人を大切にする心を育んでほしいと考えています。

ーー「人を喜ばす」という文化を、どのように社内に浸透させているのでしょうか。

山下孝一:
仕事やプライベートを問わず、誰かを喜ばせたエピソードを全社員がメールで共有する取り組みを2019年5月から始めました。当初は月に10件程度だった報告が、今では月400件を超え令和7年12月には累計192,000件を超えるまでになりました。たとえば、遠方の園へ指導に向かった社員を、子どもたちが最寄り駅まで迎えに来てくれたという心温まる話もありました。こうした喜びの共有を通じて、「人を喜ばせる」ことが当たり前の文化として根付き、会社全体に温かい社風が浸透してきていると感じます。

失敗を恐れない子どもを育てる 未来を見据えた教育の本質

ーー子どもたちの教育において、最も大切にされていることは何でしょうか。

山下孝一:
失敗を恐れない心を育てることです。子どもは誰でも、立てるようになるまで何度も転びます。しかし、その顔は喜びと挑戦心に満ちている。失敗は悪いことではなく、学びの連続なのです。子どもたちは国の未来を背負う「宝」です。だからこそ、私たちは体育指導を通じて、自ら考え行動できる「自立した人間」を育てたい。結果だけでなく、そこに至る過程での努力を認め、励ますことを大切にしています。逆上がりが初めてできた時の、あの子どもたちの輝くような笑顔と嬉し涙。その喜びが、自分への自信となって未来を生きる力に繋がっていきます。

ーー最後に、AIが進化する未来において、教育はどのようにあるべきだとお考えですか。

山下孝一:
AIが多くの仕事を代替する時代が来ると、人類は「人間はどう生きるべきか」という根源的な問いに立ち返ることになるでしょう。吉田松陰は「学とは人間たる所以を学ぶなり」と言いました。これからの時代は、知識やスキルの習得だけでなく、まさにこの「人としての在り方」を追求する教育が求められます。成功よりも成長を求める。損得より善悪、人を喜ばすことに幸せを感じられる人間を育てる。それこそが、未来の社会を豊かにする教育の本質だと信じています。

編集後記

山下氏の言葉から浮かび上がるのは、「人を育てる」ことへの揺るぎない信念である。その起点は、社員一人ひとりへの深い愛情と信頼にあった。「社員が幸せでなければ、お客様を幸せにできない」。このシンプルな真理を追求する中で生まれた「人を喜ばす」文化は、組織の強固な土台となっている。子どもたちの未来を語るその姿は、一人の経営者としてだけでなく、次代を担う若者へ思いを馳せる教育者の姿そのものであった。変化の激しい時代だからこそ、同社が示す人間教育の本質は、多くの示唆を与えてくれるだろう。

山下孝一/1946年8月4日生まれ。法政大学卒業後、1972年に幼児活動研究会株式会社を設立し、代表取締役に就任する。私立幼稚園、保育園、こども園の園児、小学生に体育指導を行っている。1988年には日本経営教育研究所を設立。日本で初めての幼稚園、保育園の経営コンサルタント事業を開始した。2007年大阪証券取引所「ヘラクレス」上場(現、東京証券取引所スタンダード市場)、2022年療育施設「コスモ療育クラブファミリア」開設、2025年、全国約1500カ園で指導を実施。