※本ページ内の情報は2026年2月時点のものです。

東京・銀座に店舗を構え、世界最高峰のブランド「エルメス」に特化したリユース事業を展開する株式会社LOVE&PEACE。同社は「買い取った瞬間に勝負は決まる」という鉄則のもと、徹底した目利きと在庫管理で急成長を遂げている。学生起業と一度の事業休止、そして10年間の修業期間を経て再起を果たした代表取締役の山本拓氏は、売上高100億円という高い目標を掲げ、「失敗の数こそが人を育てる」という独自の組織論を展開する。リユース業界の常識を覆す戦略と、その根底にある「誠実さ」への思いについて話を聞いた。

学生起業の挫折を経て掴んだ商売の原理原則

ーー社会人としてのキャリアは、どのようにスタートされたのでしょうか。

山本拓:
大学3年生の時に起業しました。当時はリーマン・ショックの影響で就職難の時期でもありましたが、何より人と同じことをするのが苦手という性格も影響していました。大学に通いながら大阪の北新地でアルバイトをしていた際、多くの経営者の方々と出会い、その中のお一人から「リユース事業はこれから伸びる」と助言をいただいたことがきっかけでした。

当時は明確な事業計画や崇高な理念があったわけではなく、「会社を立ち上げたい」「お金を稼ぎたい」というシンプルな動機から起業しました。しかし、現実はそう甘くはありませんでした。銀行口座の開設すらままならず、資金調達も思うようにいかない。数字上の目標は立てても、事業は想定通りには拡大しない。社会からの信用のなさ、そして経営者としての未熟さを痛感する日々でした。

ーーそこからどのようにして、事業家としての道を切り拓いていかれたのですか。

山本拓:
大きな転機となったのは、私にリユース事業を勧めてくださった方からの誘いでした。自己流の限界を指摘され、「商売の基礎を一通り覚えてみないか」とご自身が立ち上げた株式会社JFAへ入社することを提案してくださったのです。

そこで私は、一度自分の会社を休眠させる決断をしました。当時の私は、いわば井の中の蛙です。事業を拡大する土台をつくるには、大きな商いを学ぶ必要がありました。そのため、一度会社を離れ、厳しい環境に身を置く必要があると判断したのです。そこからの約10年間は、まさに「修業」と呼ぶにふさわしい毎日でした。

ーー株式会社JFAでの10年間で得られた最大の学びはなんでしょうか。

山本拓:
「現場感覚」と「失敗を恐れない姿勢」です。当時のリユース業界、特に業者間オークションは非常に閉鎖的で、新参者が安易に良品を競り落とせる世界ではありませんでした。

昔ながらのオークション現場は、一瞬の判断遅れや自信のなさが命取りになる、緊迫した場所です。私は億単位の予算を預かり、仕入れを行う最前線に立ちました。当然、最初は失敗の連続でしたが、当時の会長は、失敗から学ぶようにと私を見守ってくれました。

圧倒的な場数を踏み、膨大な失敗データを蓄積することでしか、本物の相場観や目利き力は養われません。一番買っている人間こそが、一番相場を知っています。このときの経験があるからこそ、現在経営者として大きな決断をする際も、現場の感覚を信じてリスクを恐れずに踏み出すことができています。

社名に込めた「愛と平和」の価値観

ーーリユースビジネスにおける「成功の鉄則」は、何だとお考えでしょうか。

山本拓:
リユース事業の成否は「仕入れ」でほぼ決まります。次に重要なのが「在庫管理」です。価値ある商品を適正な価格で買い取ることができれば、ビジネスとして負けることはありません。特に在庫管理に関しては、バッグのような服飾雑貨であっても生鮮食品のようなものだと捉えています。

3年前には20万円の価値があったものが、今は10万円になっていることも珍しくありません。だからこそ、在庫回転率を重視し、3カ月に1回は必ず在庫を一巡させるサイクルを徹底しています。常に鮮度の高い状態を保ち、キャッシュフローを回し続けることが、健全な経営の要です。

ーー「LOVE&PEACE」という社名に込められた思いについてお聞かせください。

山本拓:
「愛を持って、関わる人の全てに接する」という、私の根底にある価値観を表しています。実は、創業当初から高尚な理念があったわけではありません。しかし、事業を続け、多くの人と関わる中で、「最後は、愛と平和が最も大切だ」という結論に至りました。

企業活動として利益を追求することは不可欠ですが、それだけでは不十分です。お客様や取引先、そして共に働く仲間に対して愛を持って接することこそが、事業のベースになければならないと考えています。

組織体制の強化と世界一への移行ステージ

ーー組織拡大を見据えた、採用基準と人材育成の方針についてお聞かせください。

山本拓:
採用において最も重視しているのは、「誠実さ」と「責任を持って挑戦し続けられること」です。私たちは高額な商品や現金を扱うため、能力以上に人間としての信頼性が問われます。スキルは後から身につきますが、根底にある誠実さは一朝一夕では変わりません。

そうした人材の可能性を最大限に引き出すため、現在は教育体制の強化に注力し、挑戦の数を評価する文化を根付かせています。効率を求めて失敗を避けるのではなく、若手にも積極的に裁量を与えてトライさせているのです。一度の大きな成功よりも、挑戦と失敗から学び続け得る経験を繰り返すことを良しとしています。失敗を恐れず、そこから学び続ける経験こそが、強いバイヤー、そして強いビジネスパーソンを育てると確信しています。

ーー今後のビジョンと、その実現に向けたご自身の挑戦についてお聞かせください。

山本拓:
2028年の決算までに売上高100億円を達成し、エルメス専門のリユース店としてトップの存在になることを目指しています。銀座に店舗を構えているのも、世界中の富裕層が集まるこの場所で、「日本でエルメスを買うならここだ」と認知されるためです。

その実現に向け、私自身も新たな挑戦の局面にいます。これまでは自分の感覚と経験で会社を牽引してきましたが、これからは人を育て、組織をつくるというステージへの移行が不可欠です。

私たちが扱っているのは単なるモノではありません。かつて誰かが大切にしていたバッグが、海を越え、時を超えて、また別の誰かのもとで新たな感動を生む。その価値の循環を創り出すことが私たちの使命です。この仕事を通じて、社員一人ひとりが夢を持ち、豊かになれる会社にすること。そして、エルメスのリユース市場において世界一の企業になること。それが、今の私の最大の目標です。

編集後記

大学在学中に事業を立ち上げ、休眠、そして10年間の修業を経て再起を果たした経緯には、現場で本物の目利き力と相場観を培うという揺るぎない覚悟がある。億単位の仕入れで体得した知識と、在庫を回転させるスピード経営が強固な事業基盤を構築した経験。その根底には、お客様と働く仲間への「愛と平和」を重視する倫理観がある。人材育成と組織化という新たな課題に真摯に向き合い、売上高100億円という未来を実現するための経営者の挑戦は、事業の価値をさらに高めるに違いない

山本拓/1987年大阪府生まれ。近畿大学在学中の2008年に株式会社LOVE&PEACEを設立。2010年に同社を一時休眠させ、バイヤーとしての研鑽を積むべく株式会社JFAに入社。2017年に同社取締役に就任し、経営の一翼を担う。2020年、同社を退社し、株式会社LOVE&PEACEを再始動させる。