
現代日本が抱える「労働人口の減少」「空き家の増加」「地方経済の疲弊」。これらは個別の事象ではなく、相互に絡み合う構造的な課題である。特に地方における外国人材の受け入れは、産業維持の命綱でありながら、彼らの生活基盤となる「住居」の不足が大きな障壁となっていた。このボトルネックに対し、空き家の再生と外国人材の居住支援をセットにした独自のビジネスモデルで解を提示するのが、クールコネクト株式会社だ。負債資産を社会インフラへと昇華させ、関わるすべての人々に利益をもたらす循環型モデルについて、代表取締役の神戸翔太氏に聞いた。
直感を行動力へ変え、異業種参入で掴んだ事業の本質
ーー社会人としてのキャリアはどのようにスタートされたのでしょうか。
神戸翔太:
もともとは格闘家として活動していました。引退後は地元の群馬に戻ったのですが、その当時は「社長になりたい」「起業したい」と思っていたわけではありません。正直なところ、次に進むべき道が決まっておらず、模索している状態でした。
転機となったのは、知人の経営者から「パーソナルジムをやってみないか」と声をかけられたことです。当時は手元資金が乏しかったため、その知人から100万円の融資を受け、22歳でキックボクシングを取り入れたパーソナルジムを開業しました。創業時はアパートの一室を借りて運営していたので、「初期投資を抑え、自分の体一つで稼ぐ」という、まさに裸一貫からのスタートでしたね。
ーーその後は、パーソナルジムの運営に注力されていったのでしょうか。
神戸翔太:
ジムの運営も続けてはいましたが、常に次の事業の種を探していました。そんなとき、実業家の堀江貴文氏が「これからは農業だ」と発信しているのを見て、「ならば自分も」と直感的に参入を決めました。2019年ごろに農業法人を立ち上げました。とはいえ、私自身は農業に関する知識も経験もゼロからのスタートです。詳しい仲間を巻き込みながら始めたものの、やはりイチから野菜をつくって売るだけで収益を上げるのは非常に難しいという現実に直面しました。そこで、単につくるだけではなく視点を変え、農業のフランチャイズ展開や卸売といったビジネスモデルに軸足を移すことで、事業として成立させていきました。
課題解決から生まれた独自のビジネスモデル

ーー農業分野での事業構築から、「空き家活用」へはどのような経緯でつながっていったのでしょうか。
神戸翔太:
特定技能(※1)の在留資格を持つ外国人材を多く雇用するようになったことが大きいです。彼らの住居を用意するのも雇用主の役割なのですが、地方では家主や不動産会社に「外国人だから」という理由で断られることが多く、住居探しが非常に困難だったのです。多くの企業が同じ悩みを抱えている一方で、外国人労働者のニーズは高まり続けている。この需要と供給のギャップにビジネスチャンスがあると考え、自分たちで空き家を借りて改装し、従業員に住んでもらうことから事業を開始しました。
(※1)特定技能:国内の人手不足が深刻な産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れるための在留資格。
ーー貴社の事業内容と、他社にはない強みについてお聞かせください。
神戸翔太:
弊社は主に外国人材向けのシェアハウス運営と、不動産の買取再販事業を行っています。ただ、私たちは単なる不動産会社ではありません。最大の強みは、物件の仕入れからリノベーション、そこに住む外国人材の入居付け、さらには投資家への販売・管理までをすべて自社で完結する「ワンストップ体制」を構築している点です。
通常、地方の空き家は借り手がつきにくく敬遠されがちですが、私たちは自社で雇用する外国人材や他社の労働者に住居として提供することで、空室リスクを解消できます。このように「住居」「生産」「投資」という価値を付加し、負債とされていた空き家を収益物件へと再生できる実行力こそが、他社にはない独自性だと自負しています。
人と地域をつなぐ 外国人材支援の最前線
ーー外国人従業員の定着率についてはいかがですか。
神戸翔太:
非常に高い水準を維持しています。一般的に農業などの現場仕事は人の入れ替わりが激しいと言われますが、弊社では多くのスタッフが長く活躍してくれています。その最大の理由は、やはり「生活の基盤」である住まいを保障できている点にあります。外国人従業員にとって、日本で自力で家を借りるハードルは想像以上に高いものです。私たちは雇用とセットで、リノベーションした快適な住居を提供し、生活面まで含めてサポートしています。単に「働く場所がある」だけでなく、「安心して帰れる家がある」。この環境こそが、彼らのモチベーションと定着率の高さに直結しているのだと確信しています。
ーー事業拡大に向けて、今後どのような人材を求めていらっしゃいますか。
神戸翔太:
特別なスキルを持つ「即戦力」であること以上に、地に足を着けてコツコツと誠実に業務に取り組める方を求めています。現在、私たちは上場を見据えて経理などの管理体制を強化していますが、ただ実務能力が高ければいいわけではありません。私たちの事業は、日本の労働力不足や空き家問題という社会課題に直結しています。日本の持続可能な未来を支えるという思いに共感し、その実現に向けて一緒に汗を流してくれる、そんな熱意ある仲間を待っています。
2年後の上場へ 地方から描く成長戦略
ーー最後に、今後の事業展望について具体的な目標をお聞かせください。
神戸翔太:
まずは直近の目標として、2年後の上場と、2、3年以内の売上高100億円達成を掲げています。私たちのビジネスモデルは不動産の仕入れなどで先行投資が必要となるため、上場によって資金調達を円滑にする狙いがあります。また、それ以上に重要なのが「信用力」の向上です。地方企業が全国展開し、優秀な人材を採用していくためには、上場による知名度と信頼が不可欠だと考えています。
長期的には、今後15年から20年で600万人規模になると予測される日本の外国人労働者のうち、その1割にあたる60万人の生活を支えることが目標です。これが実現できれば、家賃収入だけでも年間売上高2000億円超を見込める事業へと成長します。この「スタートダッシュ」を確実に決め、空き家活用と外国人材支援を通じて日本の労働力不足を支える、社会インフラのような会社へ成長させていきたいですね。
編集後記
格闘家からパーソナルジム経営、そして農業へ。常に挑戦のフィールドを変えながら、現場の課題に真摯に向き合ってきた神戸氏。その過程でたどり着いたのが、空き家、労働力不足、食料不安という日本の構造的な課題を同時に解決する、極めて独創的なビジネスモデルであった。日本の各地域に眠る“負債”としての空き家を、外国人材の生活と地域の産業を支える“社会インフラ”へと転換させる。その壮大なビジョンを語る言葉には、確かな手応えと未来への自信が満ちている。

神戸翔太/群馬県前橋市の出身。格闘技の本場であるオランダで武者修行を経て現地でプロデビューを果たす。K-1ファイター引退後の、2017年に株式会社NEO KICKを創業、代表就任。2019年AGARU groupを設立し代表就任、農業未経験からの新規就農を経験した。2023年2月クールコネクト株式会社を設立し代表に就任。