
半世紀以上にわたり、フランスの洗練された美意識と日本のおもてなしを融合させたトータルビューティーを提供してきた株式会社ソシエ・ワールド。高い技術力と深いホスピタリティで多くの顧客に愛されてきた同社は、2021年にTBCグループ株式会社の一員となり、さらなる進化の時を迎えている。現在、その舵取りを担うのは、TBCグループで人事・営業の両面から組織改革を牽引してきた代表取締役の長南進亮氏だ。長南氏は就任以来、現場第一主義を貫き、スタッフのプライドを呼び覚ますことで組織の再生を図ってきた。「美容と健康は表裏一体である」と説き、世界基準の美を追求し続ける長南氏に、これまでの歩みと、次世代のエステティックが目指すべき姿について詳しく話を聞いた。
現場第一主義で組織を再生 人事から営業へ転じて得た確信
ーーこれまでのキャリアと、そこで得た気づきについてお聞かせください。
長南進亮:
私は新卒でTBCグループに入社し、長らく人事・総務などの管理畑を歩んできました。当時は「ルールを守らせる」という視点が強く、現場に対しても管理的な側面で接していました。しかし、営業現場を統括する部署の責任者になったことが大きな転機になりました。
営業の最前線では目の前にお客様がいらっしゃり、その場でのスピーディーな決断が求められます。この経験を通じて、管理側の論理を押し付けるのではなく、現場が主役であり、本部はそれを支えるためにあるのだと痛感しました。この「現場第一」への意識の転換が、私の組織づくりの原点となっています。
ーー現場を統括する立場として、スタッフの方々にはどのような指導をされていたのでしょうか。
長南進亮:
スタッフには「上司や本社の顔色をうかがうのではなく、お客様の方を向いて仕事をしてほしい」と伝え続けました。現場がお客様のためだけに集中できるよう、設備の不具合やトラブル対応などの環境整備はすべて本社が引き受けると約束したのです。
これは「サロンファースト」と弊社では呼んでいる方針なのですが、スタッフが余計な負担なく最大限のパフォーマンスを発揮できるよう、本部がバックアップに徹する体制を構築したことが、結果として組織の活性化につながりました。
年間1500時間の教育は至宝 低迷組織を再建へ導いた大改革

ーー貴社をTBCグループへ迎え入れることになった背景や、当時の思いについてうかがえますか。
長南進亮:
私は2021年にソシエ・ワールドがTBCグループへ加わる前段階から、前所有者である三越伊勢丹の役員の方々と話をする機会がありました。当時は現場の立て直しが必要な状況でしたが、当時の社長と対話を重ねる中で「私達であればこの現場を立て直せる」という確信がありました。その最大の理由は、ソシエが長年守り続けてきた圧倒的な「教育時間」にあります。通常、美容業界では早期の戦力化が優先されがちですが、ここでは新卒の1年目において、実に年間約1500時間を研修に充てていました。お客様対応の時間を最小限にし、技術と接客の習得に心血を注ぐこの姿勢は、業界内でも類を見ない、ソシエならではの至宝だと感じたのです。
ーー貴社の代表取締役に就任後はどのようなことに取り組まれたのでしょうか。
長南進亮:
私が代表取締役に就任する頃には現場の業績も回復傾向でしたので、「組織をどう直すか」ではなく「将来に向けどうしていくか」という視点で経営を行ってきました。たとえば、スタッフの士気を上げるため、頑張りに報いるためのインセンティブ制度をTBCと同水準に整え、店舗内のコミュニケーションを活性化させるための懇親会費用なども会社負担へと変更しています。「会社が自分たちをバックアップしている」という安心感が現場の士気を高め、業績の向上へとつながっているのです。
科学的根拠に基づく「美の体験」で 世界中の心身を豊かに
ーー貴社のサービスが持つ強みや、他社にはない独自性はありますか。
長南進亮:
弊社の最大の強みは、一言で言えば「世界一流を基準とした教育体系」という言葉に集約できると考えています。単に技術を習得するだけでなく、接客時の所作や歩き方、さらには声のトーンに至るまで徹底的にこだわっているのです。実際に大学の研究機関と連携し、どのような話し方がお客様に心地よさをもたらすかを科学的に分析し、その知見を日々の教育に落とし込んできました。こうした細部へのこだわりと、フランスをルーツとするラグジュアリーな空間づくりが相まって、本物の価値を知る40代以上のお客様から「ソシエに行くこと自体が楽しみ」という格別な評価をいただけるようになったのだと思います。
実はこの日本風の丁寧なおもてなしと世界水準のサービスは、海外においても極めて高く評価されています。たとえば台湾では38年の歴史を持ち、現地でナンバーワンのエステティックブランドとしての地位を確立しておりますし、進出からわずか1年のベトナムにおいても、政府機関から「2025年FDI優良企業トップ10」に選出されるなど、確かな手応えを感じています。2026年には中国での直営店展開を予定しており、今後も東南アジアを中心に「世界標準の品質」を武器にした拡大を加速させていくつもりです。
ーー今後の展望や、注力されている新たな取り組みについてお話しいただけますか。
長南進亮:
私たちが目指すのは、単なる結果の提供に留まらない「来る前も、施術中も、その後もワクワクする体験」の追求です。近年普及している美容医療がマイナスをゼロにする治療に近いものであるのに対し、エステティックは心身をリラックスさせ、幸せを感じていただく「体験」そのものに価値があります。実際に、当グループでは名古屋市立大学、慶應義塾大学などの研究機関と連携し、科学的エビデンスに基づく新サービスをすでに取り入れています。今後も、こうしたサービスをさらに強化していく方針です。
また、男性向けの美容ニーズが脱毛からスキンケアへと広がっている背景を受け、新プロジェクトとして「SOCIÉ HOMME(ソシエ・オム)」を始動させました。これは、メンズTBCが25年間培ってきたノウハウと弊社の高度な技術を融合させた、フェイシャル、ボディトリートメントにネイルやトレーニングまでを網羅するトータルビューティーサロンです。美容感度の高い男性がワンパッケージで理想の自分に近づける場所として、今後さらに拠点を広げ、心身の健康という付加価値を提供し続けてまいります。
ーー最後に、読者の皆様へメッセージをお願いいたします。
長南進亮:
外見を美しくするだけでは、今の時代のニーズを満たすことはできません。大切なのは「自分らしく自律して生きる」ために、心と体の両方が健康であることです。私たちは65年以上にわたり培ってきたノウハウを活かし、これからも美しさの可能性を広げる挑戦を続けていきます。100年、200年と愛される企業を目指し、世界中の方々に心身の豊かさを提供できるよう、全社一丸となって歩んでまいります。
編集後記
長南氏のお話を通じて、現場のスタッフを「ルール」ではなく「情熱」で動かしてきた力強さを感じた。特に印象的だったのは、自ら大病を経験したからこそ辿り着いた「健康であってこその美しさ」という信念だ。人事のプロとしての冷静な分析力と、現場を愛する熱い思い。その両輪があるからこそ、老舗ソシエ・ワールドの再生は実現したのだろう。美容医療との差別化を「体験の楽しさ」に置き、科学的な裏付けを持って進化し続ける同社の未来は、非常に明るいものであると確信させられた。

長南進亮/1974年、東京都出身。社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引士等の資格を保有。大学卒業後、TBCグループ株式会社に入社。人事・総務部門を中心に要職を歴任し、現在は同社常務取締役としてグループ全体の組織改革および人材戦略を統括する。2021年からは、グループ傘下となった株式会社ソシエ・ワールドの取締役を兼務。2024年、代表取締役に就任し、現在に至る。