※本ページ内の情報は2026年2月時点のものです。

家電、自動車、住宅設備、業務用機器など多岐にわたる製品の延長保証プログラムの設計・運営・コンサルティングを行うテックマークジャパン株式会社。同社は日本の延長保証制度における先駆者として、30年にわたり購入後の安心を提供し続けてきた。AIGグループの一員として、膨大なデータとノウハウを武器に、クライアント企業の製品競争力向上に貢献している。米国留学やタイでの飛び込み営業、そして金融のスペシャリストとして豊富な経験を持つ代表取締役社長、長谷川俊哉氏に、社長就任の経緯から組織改革、そして、生活の安心を支える新たな挑戦について話を聞いた。

地道な訪問で信頼を築いた海外での成功体験

ーーキャリアの原点となったご経験についてお聞かせください。

長谷川俊哉:
私のキャリアの原点は、約40年前の米国留学にあります。当時は海外への憧れが強く、世界最先端の環境で学ぶことが最良の選択だと考え、渡米しました。実家が事業を営んでいたこともあり、特に数字に興味を持ってファイナンスを専攻。多様な国籍の学生と学ぶ中で、日本にいては気づかない視点を得ました。

特に痛感したのは、多様性の中で存在を認めてもらうには、黙っていては駄目で、自己主張し行動しなければならないという現実です。世界に出たら、身一つで戦わなければならないと感じた体験がその後の土台となっています。帰国後は外資系医薬品企業の財務職としてキャリアをスタートさせました。

ーーその後はどのようなキャリアを歩まれたのでしょうか。

長谷川俊哉:
1995年にタイへ移住し、その後約10年間、タイで暮らしました。最初の5年間は現地の地場銀行に勤務。日系企業担当として働いていましたが、当時その銀行は、日系銀行と比較して金利も高く、決済機能も未熟であり、商品力という点では非常に厳しい環境でした。

当然、電話をかけても門前払いの日々が続きます。100本電話をして話を聞いてくれるのは数件、そこから契約に至るのはさらにごくわずかという状況にありました。そこで私が実践したのは、毎日欠かさずお客様のもとへ足を運び、直接顔を合わせるという地道な営業活動です。何度も断られ、時には怒られることもありましたが、諦めずに通い続け、人間関係を構築しました。

ーー転機となったできごとはありましたか。

長谷川俊哉:
転機となったのは1997年のアジア通貨危機です。多くの銀行が資金難に陥る中、地場銀行には資金余力がありました。それまで築いてきた関係性が実を結び、一気に顧客が増えることとなります。この経験を通じ、「100回打って1回当たればいい」という精神と、困難な時こそ顧客を支えることの重要性を学びました。

タイでの後半5年間は、世界的な米系商業銀行のバンコク支店へ移籍。銀行側の視点から決済やキャッシュマネジメントの専門知識を深めた後、日本へ帰国しました。その後、AIGジャパン・ホールディングス株式会社の財務・資金管理担当を務めました。そこでは、東日本大震災のような大規模災害時に、迅速に保険金をお支払いできるよう数千億円規模の資金を確保・運用するなど、極めて重要なリスク管理業務に従事しました。

財務の知見を活かし適正な経営を導く監督力

ーー代表取締役社長へ就任するに至った経緯をおうかがいできますか。

長谷川俊哉:
弊社との関わりは、2021年に同社が取締役会設置会社となった際、私が最初の取締役の一人として就任したことが始まりです。約3年間、財務の観点から経営の管理監督を行ってきましたが、前任の社長が退任されるタイミングで、私が後を引き継ぐ形で代表取締役社長に就任しました。現在は、財務の知見を活かしつつ、組織の改革や企業文化の醸成にも力を注いでいます。

ーー組織づくりで注力されている点をお聞かせください。

長谷川俊哉:
組織運営では、単に決まった仕事をこなすのではなく、自ら考えて行動し、成果を出した人が正当に報われる組織文化の定着と、AIG水準のガバナンス強化に注力しています。また、対話の場として重視しているのが、少人数でのランチミーティングです。形式的な面談よりもリラックスして話せるため、現場の本音や改善のヒントを直接吸い上げる貴重な機会となっています。

こうした組織で共に働きたいのは、想像力を持った方です。これは空想ではなく、相手の立場に立って深く思考する力を指します。「お客様のお客様」や「上司の上司」が何を求めているかまで想像できれば、取るべき行動は自ずと見えてくるはずです。相手の背景まで深く思いを馳せられる方に、ぜひ来ていただきたいです。

三方よしの循環を生む持続的なビジネス展開

ーー現在の注力分野と今後の展望についてお聞かせいただけますか。

長谷川俊哉:
現在は、最新のテクノロジーを活用した事業変革に注力しています。その象徴ともいえるのが、延長保証に関わる一連の手続きをオンラインで完結させるプラットフォーム「Warranty Touchpoint」の提供です。

このシステムが大きな鍵となり、これまで自社での延長保証を導入していなかった大手住宅設備メーカーとの提携が実現しました。同社のような大手企業にとって、従来の複雑な事務フローをデジタル化し、エンドユーザー様の利便性と自社の業務効率を両立できる点が、導入の決定打となりました。

このように、30年の歴史で培ったアナログなノウハウに、デジタルという新たな付加価値を融合させることで、業界のスタンダードを塗り替える挑戦を続けています。

また、新たな市場開拓も進めています。一つは個人間の取引への進出で、点検・保証を行う仕組みを検討中です。対象製品も家電などの機械分野に加え、メガネや楽器といった非機械分野へ拡大し、好評を得ています。さらに、水回りのトラブル等に対応する保証も拡充し、お客様の生活全体を支える企業への進化を目指しています。

ーー最終的に到達したい理想の姿について、どのようにお考えでしょうか。

長谷川俊哉:
私たちが目指すのは、企業理念である「つづくあんしん つながるみらい」の実現です。クライアント様、エンドユーザー様、そして弊社の三者が共にメリットを享受し、発展し続ける「三方よし」の世界を目指しています。クライアント様は製品の付加価値向上により競争力が高まり、エンドユーザー様は安心して製品を使い続けられ、その結果として私たちも持続的に成長する。この循環を作ることが目標です。

事業を拡大させるためには、現場での啓発活動も重要です。延長保証制度がもたらす「顧客のリピート率向上」といったデータに基づいたメリットを丁寧にお伝えし、関わるすべての方が幸せになれるビジネスを、これからも追求し続けていきたいと考えています。

編集後記

金融の最前線で数千億円規模の資金を動かしてきた冷静な判断力と、タイの地で電話をかけ続けた地道な行動力。一見すると相反する要素が、長谷川氏の中では顧客の安心を守るという一点で強く結びついている。相手の背景まで深く思考する想像力こそが、停滞を打破し組織を活性化させる鍵である。論理的な戦略の裏側にある、人間味あふれる対話の姿勢。そこから生まれる確かな信頼が、社会の未来を照らす光になるだろう。

長谷川俊哉/1965年石川県生まれ。1991年カリフォルニア州立大学サンバーナディーノ校にて経営学修士号を取得後、海外の金融機関で日系多国籍企業とのリレーションシップマネージャーを経て、2005年日本におけるAIGにリージョナルトレジャラーとして入社。アメリカンホーム医療・損害保険株式会社のCFO及びAIGジャパン・ホールディングス株式会社の執行役員等の経験を経て、2024年12月にテックマークジャパン株式会社の代表取締役社長に就任。