※本ページ内の情報は2026年2月時点のものです。

清掃や修理の職人とユーザーをつなぐプラットフォームを運営するユアマイスター株式会社。多くの事業者が撤退する市場で、同社は「やり続けること」を強みに信頼とデータを蓄積してきた。楽天で鍛えられた現場での実行力と、MBAで学んだ論理的思考力を武器に、地道なプロセスにこそ勝機を見出す。今回は代表取締役社長の星野貴之氏に、独自の経営論と社会インフラを目指すビジョンを聞いた。

楽天での成功体験を胸にあえて起業の道を選んだ理由

ーーまずは、貴社を起業された経緯をお聞かせいただけますか。

星野貴之:
きっかけは、新卒で入社した楽天株式会社での経験と周囲の後押し、そして時代の潮流への確信が重なったことでした。楽天は素晴らしい会社でしたが、ビジネスがある程度確立されている側面がありました。三木谷社長の近くで仕事をさせていただく中で、自分もそれ以上の努力と経験をしなければ、あのような偉大な人間にはなれないと考えたのです。

当初はキャピタリストとして起業家を支援する道を提案され考えましたが、転職エージェントなどから「あなたは自分で起業すべきだ」と背中を押され、覚悟を決めました。

事業領域の選定にあたっては、楽天で培ったEコマースの経験と、欧州で主流になりつつあった「ESG」(※)の概念をかけ合わせました。これからは、安くてよいものを提供するだけでなく、人の心に響く「感動」を届けるサービスでなければ生き残れない。そう考えたとき、修理や清掃という、泥臭くも大切なものを守り感動を提供する領域に勝機があると考え、出資の機会を得て、起業を決意しました。

(※)ESG:企業が持続的に成長するために必要な「環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)」の3つの要素を重視する経営・投資の考え方。

ーーこれまでの経験は、現在の事業にどう活かされていますか。

星野貴之:
ビジネスには「武力」と「知力」の両方が必要だと考えています。私の社会人経験は、楽天で徹底的に鍛えられた「武力」、つまり現場での実行力がベースにありました。お客様を動かし、答えのないところに答えをつくる力は、理屈だけでは身につきません。一方で、25歳でMBAに通わせてもらったことで、論理的に物事を整理する「知力」が身につきました。

それまで直感的に行っていたことが経営のロジックと結びつき、戦略を整理できるようになりました。学問としての経営と現実との間にギャップを感じることはほとんどありませんでした。むしろ、論理先行で現場の実行力や戦略がない人は壁にぶつかりやすい。私の場合は、まず「武力」があり、それを「知力」で強化できたことが、現在の事業推進における力になっています。武力と知力の融合がとても重要だと思います。

やり続けることで築く、揺るぎない事業の強み

ーー多くの競合サービスが生まれる中で、貴社が選ばれ続ける理由は何だとお考えですか。

星野貴之:
この市場は参入と撤退が激しく、残る企業は多くありません。私たちは、やり続けること自体が信頼につながると考えています。新しいサービスが出てくれば乗り換えるお客様もいますが、事業者がいなくなる経験をすると、継続していることへの評価は自然と高まります。

また、私たちのサービスはテクノロジーだけで完結しません。お客様に感動を届けるためには、現場での物理的なサービスが不可欠です。テクノロジーで解決できない部分にも真摯に向き合い、そこで得た知見を再びテクノロジーに転換していく。このサイクルを繰り返してきたことが強みです。結果として、蓄積されたデータやノウハウは、独自の資産となっています。

ーー法人のお客様が増えているとのことですが、その背景には何があるのでしょうか。

星野貴之:
転機はコロナ禍でした。外出自粛などで一時的に需要が落ち込みましたが、その後、衛生意識の高まりから清掃の依頼が急増しました。特にビルメンテナンス業界などは、経営者や働き手の高齢化が進行。深刻な後継者不足という課題にも直面していました。担い手がいなくなる一方で、需要はなくならない。そこに、全国のパートナー様とネットワークを持つ私たちが入り込む余地があったのです。今後も労働力不足、人員の欠員率というのは社会的にも深刻になっていきます。

既存市場の非効率な部分を私たちの仕組みで代替することで、会社を大きく成長させる機会を見出しました。

「人間的信頼」が成長を加速させる組織文化

ーー組織づくりにおいて、最も大切にしている価値観を教えてください。

星野貴之:
「人間的な信頼」を最も大切にしています。信頼関係なしにビジネスの本質的な成果は生まれません。そのうえで、組織としては変化をためらわないことを徹底しています。過去の成功・概念に固執せず、常に勝つための最善の方法を実行する姿勢が重要です。大きく攻めるべき場面もあれば、守ることが勝ちにつながる場面もある。その時々で最適な判断を下せる組織でありたいと考えています。

幸いなことに、創業以来、会社の未来に対して「選択肢がない」ことが一度もありません。それは、常に歴史に学び、市場の先を予測することで、次に進むべき道を自ら作り続けてきたからです。また、複数の事業ポートフォリオを保有しているので、それぞれのタイミングで取捨選択・優先順位の切り替えが可能です。どのような状況下でも、目の前に進むべき選択肢がある状態をつくり続けることが、経営者としての私の責任です。

ーー社内では、具体的にどのような人物が評価されるのでしょうか。

星野貴之:
一言でいえば「期待以上の結果を出そうと努力し、周囲によい影響を与えられる人」です。言われたことを実行するのは最低限で、そこからプラスアルファの価値を生み出そうとする姿勢が大切だと考えています。

また、組織づくりの部分でも少し話しましたが、弊社では失敗よりも変化や挑戦することをためらわない文化を大切にしています。ベンチャー企業では答えのない課題に挑む場面が多く、失敗はつきものですし、失敗の方が圧倒的に多い。しかし、そこで立ち止まらずに、前を向いて次の成功のために行動できるような人を応援したい。ただ、改善すべき点は率直に伝えます。互いに成長を願い、高め合える関係でありたい。人間性を磨き、自らの成長を楽しめる人に集まってほしいですね。スタートアップ、ベンチャーというのは、ないものを作っていくので、難易度は高い仕事です。だからこそ、より全員が「目的」「目標」に向かって、集中して進んでいかないと、何かを成し遂げることは出来ません。そのためには、健全な組織・良い人間性というのが、とても重要です。

プラットフォームから社会インフラへ M&Aも視野に入れる事業の未来像

ーー今後の展望を、教えていただけますか。

星野貴之:
弊社は「人々の大事なものがより大切にされる社会へ導く。」をミッションに掲げ、大事なものが大切にされる社会を目指しています。その上で、事業提携やM&Aを積極的に進めていく考えです。清掃や修理の業界には、素晴らしい技術を持ちながらも、後継者不足などで事業継続が困難な会社が数多く存在します。そうした仲間たちと手を取り合い、一つの大きな共同体をつくる計画です。

弊社のプラットフォームで蓄積したデータやテクノロジーを活用すれば、個々の会社が抱える課題を解決し、業界全体をより良くできるはずです。この産業や領域におけるデータは、日本一だと自負しています。この資産を活かして、清掃・修理の枠を超え、日本の住環境を支える社会インフラのような存在になることを目指していきます。

ーー最後に、共に未来を創る仲間や、提携を考える企業へメッセージをお願いします。

星野貴之:
弊社は創業から約10年をかけて、ビジネスの型を築き上げてきました。しかし、次のステージへ進むためには、既存の枠にとらわれず、新たな価値を創造していく挑戦が必要です。答えのない世界で答えをつくり、その実現に邁進していくことに喜びを感じられる方にとっては、非常に面白いフェーズだと思います。自らの手で事業を成長させる実感を得たいという情熱のある方々と、ぜひお会いしたいですね。

編集後記

楽天で培った現場力「武力」、MBAで身につけた論理的思考力「知力」。星野氏は、この両者を武器に勝負に挑み続けている。その根底には、顧客や仲間からの「人間的信頼」と、期待を超える成果への飽くなき追求がある。やり続けることで築いた強固な基盤は、今や業界全体を支える社会インフラへと進化しつつある。変化を恐れず、常にプラスの価値を生み出そうと挑み続けるその先に、さらなる飛躍が待ち受けているに違いない。

星野貴之/1988年埼玉県生まれ。慶應義塾大学卒業。新卒入社した楽天株式会社にて営業を担当、全国1位の収益を創出し全社の年間MVPを受賞。九州エリア全域の副責任者を務めた後、26歳で幹部育成プログラム1期生に選抜されIRへ異動し、決算・増資・投資家対応を担当。2016年3月MBAを取得後、同年8月にユアマイスター株式会社を設立。第19回グロービス アルムナイ・アワード「創造部門」受賞。X(旧:Twitter)はこちら