
運送事業を中核に、倉庫機能とかけ合わせた全体最適の提案で成長を続ける株式会社ネキスト。同社を牽引する田中正男氏は、理系出身ならではの緻密な数値管理と、泥臭い営業現場で培った対話力を武器に、組織を変革してきた。かつて高いポテンシャルを秘めながらも、組織基盤が未整備だった同社をいかにして再生させたのか。学生時代から抱き続けた「社長になる」という志、人生を変えた上司との「縁」、そして日本全国へその名を轟かせようとする未来への展望に迫る。
学生時代の原点と、キャリアの幕開け
ーーまずはキャリアのスタートから、貴社の経営に携わるまでの経緯をお聞かせください。
田中正男:
学生時代から、明確な業種こそ決めていませんでしたが「将来は社長になりたい」という漠然とした、しかし強い思いを抱いていました。私は理学部数学科の出身で、周りは研究職やエンジニアを目指す友人が多かったのですが、就職活動中に城東三菱ふそう自動車販売株式会社(現・三菱ふそうトラック・バス株式会社)の説明会に参加した際、直感的にこう思ったのです。「トラックを販売する相手は、企業の社長である可能性が高い。ここなら社長と直接知り合える機会が多いはずだ」と。そして入社後は、トラックの営業職として奔走しました。運送会社様はもちろん、トラックを1台だけ所有されているような建設業やアパレル業のお客様のもとへも足繁く通い、信頼関係を築くことに没頭していました。
その後、営業先の自動車輸出業のお客様から「うちに来ないか」と熱心なお誘いをいただき、転職を決意します。そこでは国内事業を任され、3年間で事業規模を3倍以上に拡大させる実績を残すことができました。その経験が自信となり、学生時代からの夢であった独立への思いが再燃し、2003年に自身の会社を立ち上げました。
年収減も厭わぬ上司の覚悟 「縁」が導いた社長就任

ーーどのような経緯で貴社の社長へ就任されたのですか。
田中正男:
実は、弊社の前オーナーは、私が三菱ふそうに在籍していた際の取引先だった企業の社長でした。ある商談をきっかけに再会した際、突然「うちの社長をやってくれ」と懇願されたのです。当時は私自身の会社を経営していたこともあり、最初は何度も固辞しました。
しかし、私を説得するために、三菱ふそう時代の元上司までもが動いてくれました。その方は、当時の私にとって雲の上の存在といえる方です。ご自身の給料が半分以下になることさえ厭わず、「俺も一緒に行くから」と弊社への参画を決めてくれました。そこまでして私を必要としてくれる「縁」と、人生を賭けた先達の覚悟に応えたい。その一心で、社長就任を決断したのです。
感覚のみに頼らない 「数値」と「対話」による組織改革
ーー社長に就任された当時、会社はどのような状況だったのでしょうか。
田中正男:
当時のネキストは、個々のポテンシャルは非常に高いものの、組織としての土台が全くありませんでした。給与計算のルールすら属人的で、会社としての統一基準がなかったのです。そこで、まずは現状を正しく把握するために「数字」の徹底管理から着手しました。詳細なデータを収集し、勉強会を通じて各拠点の責任者が経営数値を理解できる状態を目指したのです。当初は現場からの反発もありましたが、組織図の再編や会議体の整備を進め、「仕組み」で会社が動く体制を一歩ずつ築き上げていきました。
ーー社員の方々と接する上で、大切にされている指針はありますか。
田中正男:
車の営業時代に培った経験が、現在の経営哲学の根幹にあります。車を売る時、「スペック」ではなく「その車を買った後の楽しい生活」をお客様が想像できれば、車は自然と売れます。これは社員に対しても同じです。「この会社で働き続けた先に、どんな未来が待っているのか」。その姿を具体的にイメージさせることが重要です。そのため、責任者クラスとは頻繁に面談を行い、評価を伝える際は理由だけでなく、「どうすれば次は良くなるのか」という具体的な道筋を必ずセットで話します。彼らが目指すべき未来を示し、そこへ導くことこそが成長への最短ルートだと考えています。
物流の全体最適を追求し全国へ挑む新たな挑戦
ーー今後の展望についてお聞かせください。
田中正男:
私たちの目標は、「日本中にネキストのマークが入った車を走らせる」ことです。その実現に向け、未進出地域への営業所展開を進めています。
また、ネットワークの拡大と並行して注力しているのが「物流倉庫事業」の強化です。これは単にモノを保管するだけではありません。運送業の最大の無駄は「空車」です。
我々が倉庫拠点を提供し、保管から輸送までを計画的に担えば、無理な出荷による非効率をなくし、積載効率を最大化できます。サプライチェーン全体の無駄を省き、顧客と共にコストメリットを享受する提案力を、今後さらに磨いていく考えです。
ーー成長を支える組織づくりや環境整備については、いかがでしょうか。
田中正男:
大きく2つの柱があります。1つは、次世代リーダーの育成です。会社の計数は責任者レベルまでフルオープンにし、経営視点を持った事業推進を後押ししています。努力が正当に評価され、結果が見える透明性の高い仕組みこそが、彼らのモチベーションの源泉となります。
もう1つは、社員が誇れる「環境整備」です。かつて資金繰りに苦労した時代もありましたが、収益基盤が安定した今だからこそ、社員が家族に「ここで働いているんだ」と胸を張って言える職場にしたい。その想いから、オフィスの改装や設備投資、SNSを活用したブランディングにも力を入れています。会社の成長は、現場で汗を流す彼らあってこそ。彼らが生き生きと働ける環境を整えることが、ビジョン実現への確実な歩みになると信じています。
編集後記
学生時代の「社長になる」という夢を原動力に、田中氏は人との縁を紡ぎながらキャリアを切り拓いてきた。社長就任後のネキストでは、単なる精神論に留まらない数値に基づく改革を断行。ポテンシャルを秘めた組織に強固な「土台」を築き、人が育つ土壌を耕した。「購入後の未来を想像させる」という営業哲学は、社員にキャリアの未来図を示す経営手腕にも通底している。その視線は今、ネキストのトラックが日本全国を駆け巡る未来を確信的に捉えている。

田中正男/1973年生まれ。城西大学理学部数学科卒業。大学卒業後、城東三菱ふそう自動車販売株式会社(現・三菱ふそうトラック・バス株式会社)に入社。2000年に株式会社JCIへ転職し、2003年には株式会社ティーアンドアイを設立、代表取締役に就任。その後、T&ICreativeの設立やネキスト自販の代表就任などを経て、2018年に株式会社ネキストの代表取締役に就任。現在は、グループ8社の代表を務める。