※本ページ内の情報は2026年3月時点のものです。

大阪に本社を置き、鉄道や道路などの社会インフラ整備を総合的に手掛ける中央復建コンサルタンツ株式会社。特に鉄道分野においては国内屈指の技術力を誇り、日本の交通網を長きにわたって支え続けている。同社を率いる代表取締役社長の白水靖郎氏は、建設コンサルタントを「まちのお医者さん」と定義し、従来の受け身な姿勢からの脱却を掲げる。100年先の未来を見据える同社。自らが事業主体となってプロジェクトを推進する革新的な取り組みと、次世代を育む組織づくりについて、同氏に話を聞いた。

衝撃を受けた「問い」 入社を決めた運命の出会い

ーー貴社に入社された経緯についてお聞かせください。

白水靖郎:
きっかけは、大学の研究室の教授から推薦をいただいたことでした。正直なところ、当時はある大手企業から「新規事業の立ち上げに力を貸してほしい」とお誘いを受けていたので、そちらに入社しようと考えていました。

推薦をいただいた手前、電話ではなく直接会ってお断りするのが礼儀だと考え、弊社へ向かったのですが、そこで私の運命を変える出会いがありました。対応してくれた社員の手元にあったのは、精巧に作られた「京都のまちの模型」でした。

思わず断ることも忘れて「それは何ですか?」と尋ねていました。するとその方は、「二条駅の高架化に合わせて、駅だけでなくまちそのものを作り直しているんだ。京都だからこそ、情緒ある『路地』を再生させたい。君なら、この路地をどう作るべきだと思う?」と問いかけてきたのです。

ただ問題を解くのではなく、自ら問いを立て、まちのあり方をゼロから描き出す。そんな世界があるのかと、心を強く打たれました。大手企業での華やかな新規事業よりも、模型の向こう側に広がる「京都の路地」をどう作るかという問いに、私の魂は完全に奪われていました。その場で、私の心は決まっていました。

ーー実際に入社された後、どのような心境でしたか。

白水靖郎:
入社後は自分の無力さを痛感する日々でした。大学で「問題を解く能力」は鍛えられていましたが、「自ら問題を設定する能力」は皆無だったからです。「京都に路地をつくる」というような発想が自分には全くなく、最初の5年ほどは「本当にやっていけるのか」と悩み続けました。ただ、その鼻っ柱を折られた経験と苦労が、今の私の土台になっています。

圧倒的な実績を誇る鉄道分野での強み

ーー改めて、貴社の事業内容とその強みについて教えてください。

白水靖郎:
弊社は新幹線や道路、都市、公園といった社会インフラの計画・調査・設計を主軸事業としています。行政や交通事業者から依頼を受け、中立な専門家の視点で、そのインフラがどうあるべきかを検討し、設計図に落とし込むのが主な仕事です。

その中での強みは、大きく2つあります。1つ目は、「鉄道分野」で圧倒的な実績を誇る点です。建設コンサルタントは国内に数千社ありますが、高度な鉄道技術を持つ会社は片手で数えるほどしかありません。弊社はそのトップランナーの一社として、新幹線や都市鉄道の計画・設計をリードしてきた自負があります。

2つ目は、「プロジェクト志向」という独自のスタンスです。公共事業の設計や計画は1年単位で進められがちです。しかし、弊社は計画段階から完成後の運用、さらに市民にどう使われるかまでを見据えて関わります。つくりっぱなしにせず、その後のマネジメントまで一貫して担える点が、他社にはない大きな特徴です。

ーー計画からマネジメントまで担うとは、具体的にどのようなことなのでしょうか。

白水靖郎:
弊社はコンサルティングの枠を超え、自らが事業主体、すなわち「プレイヤー」となることにも力を入れています。かつて私自身も、社内ベンチャーで立ち上げたシェアサイクル事業の運営に携わっていました。今でも、若手社員が中心となって地域拠点の運営に挑戦しています。自分たちがプレイヤーになれば、運営の難しさや現場のリアリティがわかります。そういった取り組みを通して、採算面で課題のあるエリアマネジメントなどのソーシャルビジネスに対しても、実効性のある提案が可能になると考えています。

社会課題に能動的に向き合う使命感

ーー建設コンサルタントとは、社会においてどのような役割を果たすべきだとお考えですか。

白水靖郎:
私は、建設コンサルタントは「まちのお医者さん」であるべきだと考えています。私たちの仕事は、行政や交通事業者から依頼を受けて計画や設計を行うことです。しかし、言われたことをそのまま実行するのが必ずしも正解とは限りません。たとえば、高熱を出した患者さんが「すぐに熱を下げたいから、一番強い薬をくれ」と言ったとします。その場合、医師は言われるがままに薬を出すのではなく、診察の結果、それが体に悪影響を及ぼす恐れがあれば、別の適切な処置を提案するはずです。

それと同じで、発注者の御用聞きになるのではなく、プロとして「未来のためにはこちらの施策の方が適切です」と提案する。私たちの真の顧客である市民や未来の子どもたちのために、受け身の姿勢を捨て、能動的に社会課題へ向き合うことこそが、私の考える「まちのお医者さん」です。

ーー最後に、今後の会社の目標についてお聞かせください。

白水靖郎:
50年後、100年後のありたい姿をまず描き、そこからバックキャストして事業を考える会社を目指しています。専門的な言葉で言えば「スペキュラティブ・デザイン(未来のあり方を問いかけるデザイン)」という考え方に近いといえます。目の前の課題をただ解決するのではなく、「ありたい社会のために、そもそも解くべき問題は何なのか」という「問い」自体を自分たちで設定し、未来をつくる。そんな集団を目指しています。

その実現のために重視しているのが、役職や年次に関係なく意見を言える、フラットな風土づくりです。技術的な議論において、社長も新入社員も対等であるべきだと考えています。実際に、会議で新入社員の意見に「なるほど、その視点はなかった」と気づかされることも多々あります。

未来をつくるには、過去の経験則だけでは足りません。若い感性や新しい視点を積極的に取り入れ、全員で「ありたい未来」に向けて知恵を出し合う組織であり続けたいと考えています。

編集後記

「問題を解くのではなく、問題を先に設定する側に回る」。白水氏の言葉からは、変化の激しい現代において、建設コンサルタントが果たすべき社会的責任への強い覚悟が感じられた。同社が自らリスクを負って事業主体となるのは、理想論を持ちつつ実効性のある提案を行うためである。その根底には、施主ではなく市民や未来の世代こそ真の顧客であるという、ゆるぎない信念がある。確かな技術力と自らプレイヤーとなる行動力。社会のありたい姿を追求し続ける同社の挑戦は、日本のインフラとまちの風景を、より豊かで温かいものへと進化させていくに違いない。

白水靖郎/1991年京都大学工学部卒業後、中央復建コンサルタンツ株式会社に入社。2009年〜2010年、京都大学経営管理大学院に国内留学中に、社内ベンチャーで日本コミュニティサイクル株式会社を設立。2013年中央復建コンサルタンツ取締役を経て、2024年7月、同社代表取締役社長。京都大学客員教授、建設コンサルタンツ協会近畿支部長、日本モビリティマネジメント会議監事、日本観光・IR事業研究機構理事等を兼務。技術士。MBA。