※本ページ内の情報は2026年2月時点のものです。

イオングループの中で衣料品事業の企画・開発を行っているのが、トップバリュコレクション株式会社である。さらなる進化と成長に向けた組織変革を託され、2025年に代表取締役社長へ就任した大迫博文氏。同氏はファーストリテイリングで「ユニクロ」や「GU」の急成長を支えてきた経歴を持つ人物だ。小売業を主要事業とするイオングループで、衣料品改革に身を投じた同氏の胸中には、若き日の店長経験と海外事業における失敗から得た確固たる経営の軸があった。「トップバリュコレクション」(以下、TVC)の名を顧客の日常に根付かせる。その挑戦の軌跡と未来像に迫る。

若き日の成功と挫折が築いた経営者としての礎

ーー前職の経験で、経営の礎となったことはありますか。

大迫博文:
23歳で店長として店舗経営に携われたことは、貴重な経験でした。当初はマネジメントに非常に苦労しましたが、必死で仕事のやり方を覚えました。この若くして人をマネジメントした経験は、今も私のキャリアの大きな礎となっています。

また、海外事業における大きな失敗も現在の経営観を形づくっています。当時、韓国に出店するプロジェクトを担当し、現地のチームとよい店をつくれていた自負はありました。しかし、事業は2年で閉鎖し、従業員たちが去っていく姿も目の当たりにしました。人を雇用する責任や地域貢献の意味が、実体験として胸に刻まれています。この経験が、経営の厳しさと重要性を学ぶ貴重な機会となりました。

ーーイオングループへの参画を決めた、一番の理由をお聞かせください。

大迫博文:
自身の次の挑戦を模索していた時期にお話をいただき、特別な縁を感じました。そして、衣料品事業が厳しい状況にあることは理解していましたが、だからこそ挑戦する価値があると感じたのです。

イオングループは地域社会に貢献する圧倒的な力を持つ企業です。その中で衣料品改革を進めて、お客さまの暮らしをより豊かにするお手伝いができれば、非常に面白い挑戦になるだろうと考えました。前職で培った「世の中への貢献」という価値観とも合致するイオングループで、自分の力を試したいという思いが決め手となりました。

三つの強みを結束力に変える組織文化の醸成

ーー貴社ならではの強みは何だとお考えですか。

大迫博文:
強みは三つあると考えています。一つ目は、お客さまの要望に応えるものづくりを自分たちで決められるSPA(※1)企業であること。二つ目は、イオングループの一員であることによる絶大な信頼性。そして三つ目が、「勝ちたい」と強く願う仲間がいること。この三つ目が最も重要だと感じている点です。長年苦戦してきたからこそ、現場には熱い思いを持った販売員がたくさんいます。この、勝利に飢えている仲間たちの存在が、私の原動力であり、支えです。

(※1)SPA:Speciality store retailer of Private label Appareの略。ファッション商品の企画から生産、販売までの機能を垂直統合したビジネスモデル。

ーー今後、どのような企業文化を育んでいきたいですか。

大迫博文:
「常にお客さまのために仕事をする」という文化を育みたいです。お客さまを最優先に考えれば、自ずと正しい答えを導き出せると信じています。もう一つは、「結果にこだわる」ことです。「仕方ない」と諦めてしまっては、経営は成り立ちません。最近、この「お客さま第一」と「結果へのこだわり」を二つの軸とし、6項目の行動規範を新たに策定しました。

「想起されない」課題を越えるブランド認知度の向上

ーー今後のブランディングについては、どうお考えですか。

大迫博文:
まずは、「TVCは安全、安心で、いい服だよね」と言われる存在になりたいです。そのために「Better fit,everyday.」というブランドメッセージを掲げています。これは単なるスローガンではありません。毎日の暮らしに本当に必要で、便利な服とは何かを考え抜き、ものづくりに反映させるという私たちの約束です。

その約束を実現するための最大の課題は、お客さまが服を買うときに選択肢として想起されないことです。食品を買う際にイオンが思い浮かぶ方は多くても、服となると、まだほとんどいないでしょう。よいものをつくり、マーケティングでその価値を伝え、お客さまに実感していただく。このプロセスの確立が急務です。

ーー今後の採用方針と、求める人物像についてお聞かせください。

大迫博文:
現在は出向者が多いですが、今後は会社の成長と安定のため、弊社に直接所属する社員(TVC籍)の比率を高めます。2025年から新卒採用も開始し、外部の知見を持つキャリア採用も積極的に進めています。固定観念を打破し会社をよい方向に変えるには、多様な人材の力が必要不可欠です。

具体的には、あるべき姿とのギャップから問題を発見できる方。また、数字に基づいて課題を捉え、改善策を提案できる能力を持つ方と働きたいです。人事や経営管理、マーケティング、営業、商品と、あらゆる領域でプロフェッショナルな人材を必要としています。

顧客からの第一想起を最優先する事業成長戦略

ーー最後に、今後の展望についてお聞かせください。

大迫博文:
2027年頃には、お客さまの日常会話の中に「TVCの商品っていいよね」「イオンのTVCって、よい服らしいよ」などと、「TVC」という言葉が自然に登場する状態をつくりたいです。まずはお客さまに「TVC」を覚えていただくこと。それが企業の発展の絶対条件です。自信の持てる商品と店舗をつくり上げ、ブランド認知を確立できたとき、数字は必ずついてくると信じています。

編集後記

ファーストリテイリングで成功を収めながらも、海外事業における失敗を「自分の力がなかった」と率直に語る大迫氏。その言葉は、逆境を成長の糧に変える真摯な姿勢を物語る。自身の小売業の原点であるイオンへの参画は、自らの経験を社会に還元するための新たな挑戦である。「勝ちに飢えている仲間がいる」と語る姿は、困難な改革を牽引するリーダーの力強さに満ちていた。同氏のリーダーシップのもと、「TVC」が人々の日常に溶け込む日は、そう遠くないだろう。

大迫博文/1972年生まれ。1996年大学卒業後、株式会社ファーストリテイリングに入社。23歳の若さで「ユニクロ」の店長として店舗経営を経験後、キャリアを重ね、「ユニクロ」、「ジーユー」で店舗経営を学ぶ。2023年にイオンリテール株式会社に入社。衣料品本部副本部長として、衣料品改革に従事。2025年にトップバリュコレクション株式会社の代表取締役社長に就任。SPAの事業モデル確立のため、企画から販売まで改革を推進している。