
ITインフラの運用管理を基盤とし、クラウド構築やライセンス販売へと事業領域を拡大する株式会社エイ・シームジャパン。同社を率いる代表取締役の長島稔氏は、過去に事業の多角化に挑戦し、挫折を経験した。その教訓から「やりたいことを実現するには、まず足元の事業を強化し、組織に力をつけること」が不可欠だと悟った。現在組織づくりに注力し、仕組み化を進める同氏に、これまでの歩みと事業の展望を聞いた。
文系未経験からIT業界へ 予期せぬキャリアが生んだ15年の軌跡
ーー社会人としてのキャリアはどのようにスタートされたのでしょうか。
長島稔:
新卒で入社したのはIT企業でしたが、私は文系の出身で、学生時代はパソコンに触れる機会がほとんどありませんでした。最初の3年間は汎用機のエンジニアとして従事したものの、正直なところ面白みを感じられずにいたのです。しかし、最後の1年でインフラを担当すると、お客様と直接話す機会が増え、そこで一緒にものをつくり上げていく過程に面白みを感じました。この経験が現在の業界で仕事を続けようと決意したきっかけです。
ーー代表就任までの経緯についてお聞かせいただけますか。
長島稔:
当時、会社員として働き続けても、自分が目標とする収入を得るには40歳を過ぎてしまうと感じていました。20年間も同じ環境で我慢し続けるのは非効率だと考え、まずは自分の技術力が対価に直結する個人事業主の道を選んだのです。
その後、縁あって知人が立ち上げる会社に役員として参画したのが、現在の組織の始まりです。しかし途中で体制変更があり、残った創業メンバーとの話し合いの末、私が代表を引き継ぐことになりました。突然の就任ではありましたが、信頼してくれる仲間のためにも役割を全うしようと必死でした。そうした日々の積み重ねが、今の15年の歴史につながっていると確信しています。
事業の多角化挑戦で見つけた教訓

ーー経営者としてご自身の考え方や方針が大きく変わるような転機はありましたか。
長島稔:
2014年頃、ベトナムでITとは別の事業を立ち上げようとした経験が、私にとって最大のターニングポイントです。当時は「やりたい」という気持ちだけで飛び込んでしまったのですが、結果としてうまくいきませんでした。この経験を通じ、何かを成し遂げるには、資金力や技術力、あるいは交渉力といった、ある程度の「力」を持って臨まなければならないと痛感しました。
その教訓が、現在の経営方針に直結しています。やりたいことを実現するには、まず足元を固めなければなりません。そこで「まずは本業であるITの会社を大きくし、力をつけよう」と腹を決め、2016年頃から本格的に組織づくりや採用に注力し始めました。あの時の失敗があったからこそ今があると、私にとって非常に良い経験だったと感じています。
ーー現在、組織運営において注力されている改革や取り組みについて教えてください。
長島稔:
従業員が38名まで増え、コミュニケーションの在り方や評価の公平性に課題を感じています。どうしても接点の多い社員は評価しやすく、そうでない社員の実績は見えにくくなってしまうものです。個人の感覚に頼る評価では不公平感が生まれるため、誰もが納得できる仕組みを構築しなければなりません。
そこで現在は、外部のコンサルタントを招き、評価・教育・給与の3つの制度について根本から見直しを図っています。これまでの「個人の資質に任せて、できる人が自力で伸びる」状態から脱却し、組織として全員を一定レベルまで引き上げる教育体制を整えること。そうした変革により、社員の成長を仕組みで後押しすることを目指します。
社員が自走できる組織実現のための教育投資
ーー貴社の事業の強みはどのような点にあるとお考えですか。
長島稔:
弊社の強みは、長年にわたり金融機関などを中心として、コアな運用管理製品に特化したサービスを提供してきた点にあります。競合が少なく深い知識と経験が求められる領域ゆえに、お客様からは厚い信頼を寄せていただいているのです。また、困難な案件でも最後まで完遂する責任感の強さも、評価されている理由の一つだと自負しています。
ーー今後の事業展望について、具体的にお聞かせいただけますか。
長島稔:
まず事業戦略としては、これまでの運用管理系事業を軸にしつつ、より利益率の高いモデルへシフトしていく方針を固めました。具体的には、パートナー企業経由ではなくお客様と直接契約を結び、クラウドの構築から運用までを自社チームで一貫して手がける体制へ転換を図ることです。その一環として、「Microsoft 365」などを武器にした中小企業への販路拡大や営業部門の強化を進めており、これを事業の新しい柱に育てていく計画です。
こうした戦略の先にある数値目標として、3年後をめどに売上15億円、従業員数50名規模を目標に据えました。そして、社内の各部門が独立して事業を動かせる状態を目指します。会社という一つの器の中にありながらも、社員一人ひとりが自分の判断で自走できる組織にしたいのです。そのためにも、やはり「教育」が何より重要であり、社員の成長こそが会社の成長に直結すると確信しています。
ーー最後に、どのような方と一緒に働きたいとお考えですか。
長島稔:
働くことが好きな人、そして、人と話すことが好きな人です。特に若い頃は、多くの時間を仕事に費やすことで得られる経験や成長が大きいものです。これは私自身の経験からも感じています。ITの知識やスキルは入社してからでも身に付けられます。文系・理系も問いません。主体的に動き、コミュニケーションを楽しめる方と一緒に、会社を大きくしていきたいです。
編集後記
長島氏の経営の根幹には、自己変革を厭わない一貫した合理性がある。キャリアの岐路で常に効率を追求し、挑戦の末に得た教訓を、揺るぎない事業戦略へと昇華させた。現在、同社は3年後の売上15億円という高みを目指し、社員の成長を最優先課題として組織を刷新している。外部知見を取り入れ、公平な評価と教育による自律的な組織文化を築く姿勢は、未来への確かな投資である。自己成長を求める人材に多くの機会を提供する同社の展望に期待が高まる。

長島稔/1979年北海道生まれ、埼玉県育ち。成蹊大学卒業後、Sorun株式会社に入社し、4年弱インフラエンジニアとして従事。その後、個人事業主として3年間ITエンジニアとして活動。2009年、株式会社エイ・シームジャパン設立に伴い、取締役として参画。2010年に同社代表取締役に就任。