
建設機械に不可欠な油圧シリンダーの製造を手がけるダイワ株式会社。大手建機メーカー、株式会社小松製作所(以下、コマツ)の国内トップクラスのサプライヤーとして、業界内で確固たる地位を築いている。その強みは、多くのメーカーがOEM生産(相手先ブランド製造)に留まる中で、社内に開発部門を有し、顧客のニーズに応える高い提案力と技術力を両立している点にある。三代目として事業を継承し、「100年企業」という壮大な目標を掲げる代表取締役社長の森康人氏。「対話」を経営の根幹に据え、社員や顧客とのコミュニケーションから新たな価値を創造しようとする同氏に、これまでの歩みと未来への展望を聞いた。
コマツでの学びが原点 後継者として歩んだ改革の道
ーー幼少期から家業を継ぐことを意識されていたのでしょうか。
森康人:
ごく自然なことでした。私の実家の目の前が会社でしたし、周囲からも跡継ぎと言われて育ちました。私自身も長男ということもあり、将来は自分が会社を継がなければならないという思いは幼い頃から持っていました。大学時代には他の分野に興味を持った時期もありましたが、父に社長室に呼び出され、大規模な工場の増強計画とともに「お前たち兄弟二人が会社に入って、将来的にはやっていかなければならない。」と言われた時に覚悟が決まりました。そこからは、会社の事業に関する研究に大学で取り組むなど、家業を強く意識して過ごすようになりました。
ーー大学卒業後は、どのような道を歩まれたのでしょうか。
森康人:
大学卒業後、すぐに家業には戻りませんでした。父の勧めもあり、まずは外の世界で「修行」を積むべきだと考え、弊社の主要な取引先であるコマツに入社しました。「受託研修制度」を利用し、正社員と同じ立場で3年間勤務しました。配属されたのは生産技術と生産管理の部門で、実際の業務を通してものづくりの管理手法を学ばせていただきました。技術的な知識はもちろんですが、何より大きな学びとなったのは、人間関係の築き方です。自分一人では仕事はできず、製造や開発、品質管理などさまざまな部門の人に動いてもらわなければなりません。人に依頼することの重要性や、人脈形成の大切さを実感できたことは、今でも大きな財産になっています。
ーーダイワに戻られてからは、どのような改革を進められたのですか。
森康人:
他社での研修を半年間経て入社し、最初は企画室という立場で、各部門の改善指導などから始めました。ターニングポイントとなったのは、中小企業大学校の後継者研修に参加したことです。全国から集まった後継者たちと共に10ヵ月間、会社の歴史から財務、マーケティングまで、経営全体を俯瞰的に学ぶ機会を得ました。自社を客観的に見る中で、創業以来築き上げてきたものの価値を再認識し、これを次の世代へ確実に繋いでいきたいという思いが強くなりました。この経験を通して、会社の目指す姿として「100年企業」という目標を掲げました。
対話から生まれる価値 開発力と提案力で顧客の信頼を掴む

ーー社長として、特に大切にされていることは何でしょうか。
森康人:
人との「対話」、コミュニケーションです。従業員一人ひとりと話す機会を設けたり、部門ごとの改善活動に顔を出したりして、現場の状況や思いを聞き、私の考えも伝えています。そうした対話を重ねることで、会社としてより良い方向に進んでいけると信じています。コミュニケーションの中から、新しいアイデアやイノベーションが生まれることも少なくありません。社内だけでなく、社外での出会いや繋がりも同様に大切にしており、対話を通じて事業をさらに伸ばしていきたいと考えています。
ーー改めて、貴社の強みについてお聞かせください。
森康人:
弊社の主力製品である油圧シリンダーは、コマツの中でも高いシェアをいただいており、安定した事業基盤を築けていることが一つです。そしてもう一つの大きな強みが、社内に開発部門を持っていることです。業界では図面をいただいて製造するOEM生産が主流ですが、弊社は自社で設計開発を行い、独自のブランド製品をお客様に提供できます。この開発力があるからこそ、大手のお客様にも一次メーカーとして認めていただけているのだと思います。
ーーお客様からは、どのような点を評価されていますか。
森康人:
品質レベルの高さを評価していただくことが多いです。また、お客様からのご要望に対して、小回りを利かせながらスピーディーに対応できる提案力も喜ばれています。先日もお客様先へご挨拶にうかがった際に、弊社の対応力を評価していただき、お客様が価値を感じてくださっていることを改めて実感しました。お客様との対話を大切にしながら、期待を超える価値を提供し続けることを目指しています。
「100年企業」を目指して 日本のものづくり価値を高める未来への挑戦
ーー現在、特に注力されている取り組みはありますか。
森康人:
会社のさらなる成長に向けた体制づくりとして、工場の移転を含めた再編を進めています。これは品質保証レベルの向上や生産性アップを目的とした、10年規模の大きな計画です。並行して、従業員がより働きやすい環境を整えることにも力を入れています。年間休日を増やしたり、現場の職場環境を改善したりと、従業員の満足度を高めるための投資は惜しみません。こうした取り組みを通して、市場のニーズにしっかりと応えられる強い組織を作っていきます。
ーー今後の事業展開について、どのようなビジョンをお持ちですか。
森康人:
5年後、10年後を見据え、これまで培ってきた油圧シリンダーという基盤技術に、新しい付加価値をプラスした仕事を手がけていきたいと考えています。ものづくりの基礎をさらに高めると同時に、それ以外の技術も積極的に取り入れていく必要があります。弊社は日本の企業として、国内のお客様に「日本で作る価値」を提供することが使命だと考えています。その価値を高めていくため、人づくり、ものづくり、そして設備投資に、これからも注力していきます。
ーー新しい価値を生むために、どのようなアプローチを考えていますか。
森康人:
ゼロから全く新しいものを開発するのではなく、まずはお客様としっかり対話することから始めます。弊社の技術や価値を継続的にPRし、お客様が抱える課題やニーズを深く理解します。その中で「こんなことに使えないか」といった新しい開発の種を見つけ、プロジェクトに参画させていただく形が理想です。そのためには、日々の現場改善や技術改善を愚直に進め、お客様から信頼され、声をかけていただける存在であり続けることが不可欠だと考えています。
編集後記
穏やかな語り口の中に、経営者としての強い意志を感じさせる森氏。その信念の核にあるのは、従業員や顧客との「対話」を何よりも重んじる姿勢である。コマツで学んだ人間関係の重要性を原点に、中小企業大学校で自社を客観視し、「100年企業」という目標を見出した。その視線は常に、過去への敬意と未来への責任に向けられている。伝統的なものづくりを深化させながら、対話を通じて新たな価値を共創していく同社の挑戦は、これからも続いていく。

森康人/1984年石川県生まれ、芝浦工業大学卒。2008年に研修のため建設機械メーカーの株式会社小松製作所に入社。2012年にダイワ株式会社に入社し、改革室長、製造部長、生産技術部長を歴任し、2019年に同社代表取締役社長に就任。現状の事業活動を磨き、社員とのコミュニケーションを大切にして、サステナブルな企業を目指し日々奮闘している。