※本ページ内の情報は2026年3月時点のものです。

人材派遣を主軸に、BPO(※1)やキャリア支援、ソリューション&プラットフォームなど多角的な事業を展開し、日本の労働市場を支える株式会社キャムコムは、グループ全体で14の法人、事業分野を擁し、それぞれの専門性とリソースを掛け合わせることで独自の強みを発揮している。その第二創業期を牽引するのが、エンジニアから転身した代表取締役、宮林利彦氏だ。同氏は、創業時から受け継がれる“利用者の本質的な利便性を追求する”という信念を胸に、テクノロジーを駆使して業界全体の変革を目指す。そのキャリアの軌跡と、事業の根底に流れる思い、そして労働市場の未来を見据えた壮大なビジョンに迫る。

(※1)BPO:Business Process Outsourcingの略。企業の業務プロセスの一部または全部を専門業者に丸ごと外部委託すること。

防衛関連のエンジニアから人材業界へ 技術者としてのキャリアの原点

ーー社会人としてのキャリアのスタートについてお聞かせください。

宮林利彦:
大学は工学部で機械工学を専攻し、新卒でメーカーにエンジニアとして入社したのが始まりです。そこから20年以上、世の中にあまりない専用装置の設計に携わり、キャリアを積み重ねてきました。たとえば、日本の沿岸に設置するレーダー関連の装置や、初期のタブレット端末のような在庫管理端末などです。最終的には、設計・製造・サポートを合わせて100人規模になるチームのプロジェクトマネジメントも経験しました。

ーーその後、どのようなキャリアを歩まれたのですか。

宮林利彦:
その後、知人からの紹介がきっかけで、未経験の人材業界へ転身することになりました。当時、先輩がキャムコムグループの一社で「アナログ業務のシステム化」というミッションに取り組んでおり、その基幹システム開発に参画しないかと声をかけてもらったのです。入社後はその期待に応えるべく、1年半ほどかけて一大プロジェクトを推進しました。海外の企業や100人規模の協力会社を巻き込み、時には東京の協力会社に長野へ拠点をつくってもらうなど、開発リソースを集めながら、開発を進める激動の日々でした。

働く人が誇れる場所を本質を問い続け 真の価値を社会へつくる

ーーこれまでのキャリアにおいて、特に印象に残っている出来事はありますか。

宮林利彦:
障がい者雇用を行う特例子会社の立ち上げです。当初は法定雇用率の達成が目的でしたが、創業社長から「通う人たちが、家族に『ここに働きに行くのだ』と自信を持って言える場所をつくりなさい」と言われたことが、強く心に残っています。その言葉を胸に、私たちは単なる支援センターではなく、「SAKURA(サクラ)」(※2)という事業所名を掲げたオフィスをつくりました。利用者が「会社に通って、仕事をしている」という誇りを持てる場所にしたかったのです。ビジネス以上に、利用者が心から喜べるものをつくる重要性を学んだ経験です。

(※2)「SAKURA(サクラ)」:Social,Assets,KUdos,Resource,Activationの頭文字をとったもの。障がいを持つ方の就業の場を創造し社会貢献とキャリア資源の活性化を行うという意味を含んでいる。

ーーさまざまな事業に携わる中で、一貫して大切にされていることは何ですか。

宮林利彦:
創業社長から教わった、もう一段階深く考える姿勢です。表面的な課題解決に留まらず、本当に社会にとって、利用する人にとって何が良いのかという本質を常に問うようにしています。そこまで掘り下げて考え抜くからこそ、長く愛されるサービスが生まれるのでしょう。この価値観は、もはや文化として社内に根付いています。日常的に「それって本当に価値があるのか」「根本的にはどうなのか」といった問いが交わされ、新しい事業を検討する際も、一見効率的に見えても働く人の尊厳や本来の目的から少しでもずれると判断すれば、立ち止まって考え直します。そうした議論が、社内では当たり前のように行われています。

アナログな結束力が生む強みと「いい仕事を創る」理念

ーー事業概要と、その強みについてお聞かせください。

宮林利彦:
弊社の事業は、大きく4つのセグメントに分かれています。人材派遣を中心としたスタッフィング事業、業務を請け負うBPO事業、多様な人材の活躍を支援するキャリア事業、そしてメディア運営やシステム開発を担うソリューション&プラットフォーム事業です。現在は法人として14社で多くの事業分野を展開しています。テクノロジーも強みですが、根幹にあるのは社員同士の結束力です。

通常、事業部が分かれると交流が希薄になりがちですが、弊社には事業部の壁がほとんどありません。お客様にとって必要であれば、隣の事業部と自然に連携が生まれます。グループ全体の社員である意識が強く、活発にクロスセルが行われている点は大きな強みです。

ーー貴社で共有されている理念やフィロソフィーについて、うかがえますか。

宮林利彦:
グループの根底には「人を力づけて、“いい仕事”を創り、生きる力にあふれた社会をつくる」というパーパスがあります。これは、単に企業と人のマッチングを行うだけではなく、企業の成長につながる仕事を創り、その仕事をとおして働く人も成長できる環境を創造していくという意味です。その実現のためには社員一人ひとりがキャムコムグループの仕事をとおして成長することが不可欠であると考えています。そのため、バリューという行動基準を掲げており、すべては“自分自身のために主体的に取り組む”ことから始まると考えています。

自分が成長したい、豊かになりたいと思うからこそ、お客様や働く仲間を大切にするのです。一人では何も達成できないので、周囲への感謝を忘れず、協力をお願いしながら物事を進めていく。この考え方が、社員一人ひとりに深く浸透していると感じます。

DXで労働市場を変革 若手が事業を創出し経営者を目指せる環境

ーー今後、特に注力していきたい事業戦略についてお聞かせください。

宮林利彦:
注力するのは「WaaS」の推進です。私たちが提唱する「Workforce as a Service(WaaS)」とは、人材を単なる「人数」ではなく、ビジネスに必要な「機能」や「成果」の単位で提供する新しいサービスモデルです。

今、企業が抱える課題は、単なる人材のマッチングやツール導入だけでは解決しません。必要なのは、人と技術を組み合わせた「仕組み」と、成果を生み出し続ける「運用」です。今後は、最先端のテクノロジーと人材を用いた現場運用を高度に融合させ、企業の成長を支えるサービスを生み出していく方針です。

その代表例が、派遣スタッフの契約管理を一元化できるサービス「グッジョブ」です。すでに90,000人以上の派遣スタッフが利用するクラウドシステムであり、その運用や管理をする人材をセットでご導入いただく企業も増えています。企業様だけでなく、同業である人材会社様にも導入いただき、業界全体の生産性をあげるツールになりつつあります。このように、開発したシステムをプラットフォーム化し、業界全体で使える仕組みとして提供していきたいと考えています。

(※3)WaaS:Workforce-as-a-Serviceの略。労働力や、働くために必要なあらゆる機能・環境をサービスとして提供する概念のこと。

ーー中長期的に、どのような未来を描いていらっしゃいますか。

宮林利彦:
日本の労働市場は、今後ますます人手不足が深刻化します。日本人だけでなく、海外の方、障がいを持つ方、シニアの方など、多様な人々が活躍できる環境を整えることが不可欠です。私たちは、そうした多様な働き方を支え、あらゆるフィールドで人と仕事をつなぐサービスをさらに成長させていきたい。まだ構想段階のものも含め、労働市場の未来に貢献できるサービスを次々と生み出していくつもりです。

ーー最後に、貴社で働く魅力についてお聞かせいただけますか。

宮林利彦:
若いうちから事業の立ち上げに挑戦できることです。新たなサービスや事業モデルが生まれれば社内スピンアウトで法人化することもあり、新卒や若手でも経営者になれるチャンスが豊富にあります。また、スタートアップ企業が苦労しがちな資金面や顧客開拓の懸念が少ない点も特徴です。グループには約1万4000社の顧客基盤と全国143の営業拠点があり、このネットワークを活かして一気に展開可能です。サービス開発そのものに集中できる環境は、個人の起業にはない大きな強みだといえます。

編集後記

エンジニアから人材業界のトップへ。宮林氏の稀有なキャリアの根底には、創業時から徹底されている「本質を問う」姿勢があった。それは、「ユーザー体験に寄り添ったサービスをつくる」という視点に象徴されている。単なる事業の成功ではなく、グループの総合力とテクノロジーを武器に、労働市場全体の未来を創造しようとする壮大なビジョンがうかがえる。多様な人材が輝ける社会の実現に向け、キャムコムグループの挑戦はこれからも続いていくだろう。

宮林利彦/横浜国立大学工学部機械工学科卒。警戒レーダーや電波監視システムのプロジェクトマネジメントを経て2006年に株式会社綜合キャリアオプションに入社。人材業界では異色の80名近くのシステムエンジニア部門を育て上げ、CTOを経て2016年に事業統括に就任。人材派遣事業のリソースを生かしたグローバル事業、IT関連事業の開発に積極的な投資を行い、キャムコムグループの第二創業期を牽引している。