※本ページ内の情報は2026年3月時点のものです。

長時間労働、低賃金、そして年齢とともに体力の限界が訪れる「40歳の壁」。華やかに見える美容業界の裏側には、将来への不安を抱える技術者が少なくない。こうした美容師が直面する切実な問題に真っ向から挑み、急成長を遂げているのが株式会社ECLARTだ。同社は「完全個室・高単価・業務委託」という独自のスタイルを軸に、集客、ブランディング、教育を三位一体で提供するプラットフォームを確立した。これにより、美容師が経済的な豊かさと時間の自由を両立できる環境を実現している。「美容師を一生涯、安心して続けられる仕事にしたい」と語る代表取締役CEOの南裕大氏に、その具体的な仕組みをうかがった。

独立前の1年間にわたる徹底的な「準備」

ーー起業に至るまでの背景と、現在の事業モデルに至るまでの経緯をお聞かせください。

南 裕大:
17年ほど前、私は当時台頭していた低価格の業務委託サロンで働いていました。カットとカラーで3,500円という価格設定で、回転率を重視し、一日に何十人ものお客様を受け入れるスタイルです。若いうちは体力に任せて稼げますが、月に350時間も働かなければならないような環境でした。ふと周囲を見渡したとき、「40代、50代になってもこの働き方を続けられるのか」という強烈な危機感に襲われたのです。

低価格帯のサロンは、「安さ」が提供価値の核となるため、どうしても数に頼る労働環境になります。しかし、美容師も年齢を重ねれば体力的には厳しくなる。一方で、単価を上げようとすればお客様は離れてしまいます。このような矛盾を解消するには、最初から高単価の設定で集客し、頑張った分がしっかりと報酬に反映される業務委託を組み合わせるしかないと考えたのです。

ーー高単価の業務委託サロンというモデルを、どのようにして軌道に乗せたのでしょうか。

南 裕大:
独立前から、負けないための準備を徹底したことにつきます。多くの経営者は物件を決めてから集客を考えますが、私は逆でした。会社を経営する怖さを知っていたからこそ、1号店を出す前の1年間、ひたすらブランディングとWeb集客の土台作りに費やしたのです。

そこでまず、「ECLART」というブランドが誰に何を届けるべきか、ミッションやビジョンを策定しました。お客様が「ここで髪を切りたい」、美容師が「ここで働きたい」と直感できる世界観を、実店舗ができる前から構築したいと考えたのです。ロゴから集客・求人用のWebサイトまで、徹底的につくり込んだ結果、1号店のオープン初月から400万円を超える売上を記録できました。

他社が容易に踏み込めない三位一体の参入障壁

ーー貴社が展開されているビジネスモデルについて教えてください。

南 裕大:
弊社では、直営店と「ビジネスシェア」という独自の形態で店舗を展開しています。「ビジネスシェア」は、一般的なフランチャイズとは異なり、社内で実績を上げたスタッフがオーナーとして独立し、同じブランドとノウハウを共有しながら店舗を構える仕組みです。これにより、より強固な運命共同体を目指しています。

現在、店舗数は拡大を続けていますが、目的は数ではありません。理念を体現し、成功体験を共有できる仲間を増やすこと。スタッフがオーナーとして自立し、経済的な成功を収めることで、グループ全体の基盤をより強固なものにしています。

ーーそのビジネスモデルには、どのような特徴があるのでしょうか。

南 裕大:
最大の特徴は、高単価な業務委託サロンでありながら、新卒採用の教育にリソースを割いている点です。通常、業務委託サロンは即戦力を好みますが、弊社には未経験者をプロへ育てる独自のカリキュラムを整えています。

これが他社にとっての大きな参入障壁となっています。既存の低価格サロンが後追いで高単価へ移行しようとしても、現場に「高単価では集客できない」という固定観念があったり、教育にかかる人件費を捻出できなかったりして、真似することができないのです。教育力、集客ノウハウ、そして確立されたブランド。この3要素を三位一体で機能させていることが、弊社の強みといえます。

最高の結果を出すための「美容師ファースト」な環境

ーー設備や環境面でのこだわりはありますか。

南 裕大:
徹底した「美容師ファースト」を貫いていることが特徴です。たとえば、シャンプー台は業界最高峰の「YUMEシャンプー」を全店に導入しています。1台あたりのコストは高いですが、そこで費用を削るようなことはしません。美容師にとっての施術のやりやすさが格段に向上し、それがお客様の満足度にもつながるからです。

薬剤に関しても同様です。特定のメーカーとのしがらみで決めるのではなく、現場のスタッフが本当に良いと思ったものを採用しています。良い薬剤や最新の機械を使える環境は、美容師のストレスをなくし、最高の結果を出すための助けとなります。こうした一つひとつの積み重ねが、結果としてお客様に選ばれる理由になると考えています。

ーー教育やマネジメントにおいて意識されていることはありますか。

南 裕大:
「結果を出している人間には自由を、そうでない人間には道筋を。」というスタンスを大切にしています。全席個室という環境も相まって、スタッフはお互いの技術に干渉せず、目の前のお客様に集中できます。一方で、独自のデータ管理システムでリピート率などを可視化し、改善が必要なスタッフには最適な指導を行います。

また、人事についても基本的には個人の裁量を尊重しており、本人が望まないのに無理に店長をやらせるようなこともしません。適材適所で、その人が一番輝ける働き方を選べる環境こそが、高い定着率と生産性につながっています。

「将来への不安」を「一生涯の安心」へ変える仕組み

ーー今後のビジョンについて教えてください。

南 裕大:
目指しているのは、美容師が40代、50代、その先も安心して身を置ける持続可能な仕組みの構築です。従来の美容業界は、若い労働力の使い捨てに近い側面がありました。しかし、今の仲間たちが年齢を重ねたときにも、「この会社にいてよかった」と思われるようなビジネスモデルを形にしたいと考えています。

そのために、今後は「モッズ・ヘア」との提携によるエクステ&ブリーチカラー特化サロンの展開や、アイラッシュサロン、明るい白髪染め特化サロンなど、年齢やライフステージの変化に応じたキャリアの受け皿を広げていきます。多様なブランドを持つグループとなることで、50歳、60歳になっても美容師として輝き続けられる環境を本気でつくっていく準備をしています。

ーーそうした事業展開の先に、どのような未来図を描いていますか。

南 裕大:
10年後に150店舗規模という計画を掲げていますが、それはあくまで手段に過ぎません。単に数を増やすのが目的ではなく、社内で育ったスタッフたちが次々と独立し、オーナーとして活躍できる場を広げていった先にある数字です。仲間たちがそれぞれ複数の店舗を運営するような、自立した経営者の集団をつくっていきたいと考えています。

真の目的は、美容師という職業に付いて回る「将来への不安」を「一生涯の安心」へ書き換えることです。若いうちは高単価な環境で技術を磨き、年齢を重ねれば特化型の技術で負担を抑えて働く、あるいは経営側に回って仲間を支える。こうした多様な選択肢をグループ内に持つことで、美容師が一生、夢とロマンを持って働き続けられる場所につくりたい。その未来図に向けて、私たちは歩みを止めることはありません。

編集後記

「美容師が抱える将来の不安をどうにかしたい」という南氏の言葉には、かつて自らが現場で感じた痛みと、それを克服した自信が共存していた。単なるビジネスモデルの優秀さだけでなく、共に働く仲間たちが年齢を重ねても救われる仕組みをつくろうとする姿勢こそが、同社の急成長を支える真の原動力なのだろう。個人の自由と組織としての道筋を両立させ、生涯現役でいられるプラットフォームを目指す同社の挑戦は、これからも続いていく。美容師がロマンを持って働き続けられる未来に向けて、どのような一手を打ち出していくのか、今後の飛躍が楽しみだ。

南 裕大/1983年生まれ千葉県出身。船橋芝山高校卒業。山野美容専門学校卒業。生涯現役で現場に立ち続けることにこだわる、株式会社ECLART代表取締役CEO。今求められている「髪質改善」をいち早く研究し、縮毛矯正・ストレートに対して常に顧客志向な価値観を持ち、新たな発信をし続ける。エクラートグループは5年で35店舗へ展開し、「モッズ・ヘア」と業務提携する。