
ホラーコンテンツを中心としたYouTubeチャンネルの運営制作を起点に、グッズ販売、イベント・店舗運営までを手がけるホラーの総合商社、株式会社ウェンズデイ。同社は、テレビ業界の知見とWebのデータ分析を融合し、ホラーエンターテインメントの世界で独自の地位を確立している。代表取締役CEOを務める関口ケント氏は、「怖いだけのものは絶対にやらない」という信念を掲げ、ホラーが持つ新たな可能性を追求し続けるクリエイターだ。同氏はなぜ、「ホラーの総合商社」として世界を目指すと決めたのだろうか。3年以内の自社映画制作やナスダックへの上場を見据える、情熱と論理の裏側に迫る。
音楽から映像へ転身 15年の道を4年で駆け上がった仕事術
ーーまずは、キャリアのスタートについてお聞かせください。
関口ケント:
2歳からクラシックピアノを習っていたこともあり、音楽でご飯を食べたいと考えて専門学校へ入学しました。しかし在学中に、今でも忘れられない衝撃的な出来事がありました。先生から「各自が好きな曲のCDを持ってきて、ゴミ箱に捨てなさい」と言われたのです。その真意は、「音楽で食べていくには、自分の『好き』ではなく、人のためにつくることを許容しなければならない」という教えでした。自分の好き嫌いにかかわらず、人のためにものをつくる覚悟があるかを問われたのだと感じています。
当時の私は、好きな音楽を捨てる勇気が持てず、先生に相談したところ、「ならば2番目に好きなことを仕事にすればいい」とアドバイスをいただきました。私にとってそれが映画だったため、映像の勉強を始めたのが私のスタートです。
ーー映像の専門学校を卒業された後、どのように経験を積まれたのでしょうか。
関口ケント:
学校を卒業した後は、一度父の会社でサラリーマンとして働いていました。その傍らで、当時流行していた「ニコニコ生放送」での配信やイベント運営に趣味として熱中していたのです。転機は、営業回りの最中にカーナビで目にした「笑っていいとも!」の最終回です。画面越しに伝わるテレビの圧倒的な力に衝撃を受け、「自分もこの世界へ行きたい」とその日のうちに会社を辞めると伝えました。翌日には制作会社を探し、テレビの世界へ飛び込んだのです。
当時はテレビ局がSNS活用を模索し始めた時期で、現場はまだウェブに詳しくなく、ニコ生の経験を持つ私は重宝されました。本来、プロデューサーになるには15年ほどかかります。しかし私は、ウェブ連携番組のコアメンバーとして実績を重ねることで、4年という異例の速さでその座に就くことができました。テレビの洗練された仕組みを学びつつ、最先端のウェブを融合できたことは大きな強みです。
テレビの知見とウェブのデータを融合し「ホラーの総合商社」を設立

ーー貴社を設立されるまでの経緯をお聞かせください。
関口ケント:
テレビの世界で学んだ仕組みを、ウェブの世界に持ち込もうと考えたのが原点です。当時、私はアニメ「妖怪ウォッチ」のYouTubeプロデューサーを務めていました。そこで、テレビ放送の翌週に内容を公開する「見逃し配信」を日本で初めて実施したのです。
当時は、テレビは見ないがウェブは視聴するという子どもたちが急増していました。この施策により、それまでリーチできていなかった層へ一気に作品を届けることに成功したのです。その後、別の会社で役員を務めましたが、生放送主体の事業内容にリスクを感じ、独立を決意しました。
ーー数あるジャンルの中で、なぜホラーに特化されたのですか。
関口ケント:
実は、私は怖いものが非常に苦手です。しかし、テレビ時代に最も視聴率が良かったのがホラー系の番組でした。独立後、50チャンネル以上の芸能人チャンネルをプロデュースした中でも、島田秀平さんや関暁夫さんのようなオカルトやホラー系が圧倒的に伸びたのです。
これほど縁があるのなら、この道で生きていこうと考えました。そこで4年ほど前に「ホラーの総合商社」としてやっていくことを決めました。
「コワオモろい」で平和を ホラーの総合商社が貫くロジックと信念
ーー貴社の事業内容と、他社にはない強みについてお聞かせいただけますか。
関口ケント:
私たちは「ホラーの総合商社」として、YouTubeやテレビ番組の制作、イベントや怪談バーの運営など、ホラーに関わるあらゆる事業を展開しています。国内で年間約1000件ある怪談イベントのうち、1割以上を弊社で手がけ、出演等を含めると全体の約3割に弊社が関与している計算になります。
私たちの強みは、徹底した理論に基づいた制作体制にあります。感性だけに頼ることなく、蓄積されたデータを基に逆算して企画を立てているのです。たとえばYouTubeでは、過去7年分のデータを基に広告単価の変動を分析します。その結果、時期ごとに最適なコンテンツを投入しています。成功が不明瞭になりがちなIPビジネスにおいて、この堅実な手法は弊社の大きな武器です。
ーー企業のミッションやビジョンに込められた思いをお聞かせください。
関口ケント:
私たちは「人々の心に平和と余裕と楽しいスリルを」をミッションに掲げています。ホラーは平和な国にしか存在しません。日常が恐怖にさらされている場所では、娯楽はファンタジーに向かうからです。つまりホラーは、平和だからこそ楽しめる文化だといえます。だからこそ、恐怖だけでなく、平和や心の余裕も提供する責務があると考えています。
目指すのは「コワオモろい」世界です。不安を煽るだけのものはつくらず、怖くて、かつ面白い。「怖いだけのものは絶対にやらない」と決めています。この信念で会社を成長させ、ホラーを悪用した霊感商法などを業界からなくしたい。そう強く思っています。
裏方が輝く「そで活」で世界へ Jホラーで挑むナスダック上場
ーー業界のさらなる発展に向け、どのような課題を感じていますか。
関口ケント:
楽しみ方の文化を新しく塗り替える必要があると考えています。以前、イベントでカプセルトイを販売した際、ファンの方は一回引いて「外れた」と帰ってしまいました。
いわゆる「推し活」では、何度も挑戦したりファン同士で交換したりするのが醍醐味です。しかし、当時はその楽しみ方がまだ浸透していないことに気づきました。こうした楽しみ方をガイドし、魅力を丁寧に伝え、新しい文化をつくっていくことが私たちの役目です。
ーー今後の事業展開と、その先に見据える夢を教えてください。
関口ケント:
事業としては、映像制作の利益を全てホラー事業に投資しています。3年以内にホラー映画部署を立ち上げ、制作委員会に頼らない自社映画をつくることが直近の目標です。それをNetflixやAmazon Primeなどと独占契約して世界へ販売し、実績をつくります。最終目標は、その実績をもって米ナスダックへ上場することです。海外から資金を調達し、日本のJホラーを世界に届けていきたいと考えています。
こうした大きな夢の実現には、志を共にする仲間の存在が欠かせません。私は、演者を応援する「推し活」に対し、舞台袖から支える側の情熱を「そで活」と呼んでいます。単に映像をつくるのではなく、誰かを売れさせるために一生懸命になれる方を求めています。裏方も主役として輝ける環境を整え、業界全体を盛り上げていきたいですね。
編集後記
音楽から映像、ウェブからテレビ、そして再びウェブの世界へ。関口氏のキャリアは、常に時代の流れを読み、自らの強みを最大限に活かす場所を求めて挑戦を重ねてきた軌跡そのものである。「ホラーは平和の象徴」という逆説的でありながら深い理念は、エンターテインメントの本質を鋭く捉えている。データに基づく冷静な戦略と、業界全体を盛り上げようとする熱い情熱。その両輪で、同氏は単なるコンテンツメーカーではなく、新たな文化の創造者として、誰も見たことのない「コワオモろい」未来を切り拓いていくだろう。

関口ケント/1989年10月27日生まれ。音響芸術専門学校卒業。ニコニコ生放送黎明期から活動。その後テレビ番組制作会社での経験を通して、2018年に株式会社Webnesdayを創業、代表取締役CEOに就任。YouTubeを軸にメディアDXやホラーエンタメ事業を展開。2025年令和の虎オーディションに勝ち抜き、新虎として活躍。