
全国にスポーツ専門店を展開し、人々の健康的な生活を支える株式会社メガスポーツ。創業から30年を経て、同社は今、大きな変革の時を迎えている。これまで親しまれてきた店舗ブランド「スポーツオーソリティ」の運営ノウハウを活かしつつ、現在は、社名を冠した「メガスポーツ」への刷新を始動している。スポーツ用品の販売という枠を超え、心身の健やかさをトータルで提案する「ウェルネス企業」への進化を掲げている。自ら手を挙げ、変化を恐れずに挑戦を続けてきた代表取締役社長の三浦隆司氏に、これまでのキャリアと、地域に根ざした新たな成長戦略について話を聞いた。
自ら手を挙げ挑んだキャリア、アパレルと中国で磨いた現場適応力
ーー社会人としてのキャリアはどのようにスタートされましたか。
三浦隆司:
新卒でジャスコ株式会社(現・イオン株式会社)に入社しました。イオンには3つの魅力がありました。
1つ目は、生活者に直接価値を届ける小売業ならではの面白さです。製造業などの企業間取引とは異なり、商品の良し悪しがお客様の反応で即座に分かります。このダイレクトな手応えこそが、商売の本質だと感じて惹かれました。
2つ目は、実力主義を支える充実した教育制度です。同社は当時から「教育のジャスコ」と呼ばれ、人を育てる文化が根付いていました。自ら学んでチャンスを掴めば、着実にキャリアを築ける。この公平で意欲を重視する環境が、入社の決定打となりました。
3つ目は、当時から20日間連続休暇を取得できる制度です。余暇を有効活用できる環境も整っていました。仕事に全力で打ち込みつつ、趣味も大切にできる環境は非常に魅力的でした。
ーー入社後はどのようなキャリアを歩まれたのでしょうか。
三浦隆司:
入社後、店舗で販売課長を務める経験を通じて、ファッションビジネスの可能性と魅力に気づきました。グループ内でアパレル事業の公募があった際、自ら手を挙げて挑戦することにしました。
その後は商品部長として、商品発注の業務に従事しました。1年先の需要を予測して発注を行う必要がありました。しかし、当時は現在ほど予測精度が高くなく、予測が外れれば、膨大な在庫の山を抱えることになります。適正な在庫を持ちながらヒット率を上げる難しさを痛感する日々でした。このときの「予測と計画」の経験は、店舗拡大や事業運営の土台となり、現在の経営にも生きています。
ーー仕事観が変わるような大きな転機はありましたか。
三浦隆司:
その後、自ら希望して中国での事業に挑戦しました。現地では「郷に入っては郷に従え」を地で行く日々でした。当時の中国は成長市場でしたが、日本とは商習慣が異なり、単に店をつくるだけでは、ビジネスは成功しません。政府や現地の方々と良好な関係を築き、良い立地を紹介してもらうことが成功の鍵を握っていたのです。
そこでまずは、私たちが提供できる価値を真摯に伝えました。現地の視点を取り入れ、信頼関係の構築に注力したのです。日本流が通用しない環境で適応した経験は、私の財産です。自分の経験を過信しない姿勢は、この時に磨かれました。
「第一想起」される存在へ 現場の提案力で描く店舗の未来

ーー経営に参画された際、会社に対してどのような印象を持たれましたか。
三浦隆司:
2023年に経営に関わり始めました。弊社はイオングループの強力な基盤を持ち、競合他社と比較してもポテンシャルの高い会社だという印象を受けました。一方で、長年続いた大型店舗の形式が、現在のショッピングセンターという立地特性や顧客ニーズに合っていないという課題もありました。他社と同質化し、独自の差別化が図れていない現状を変えていく必要があると考えたのです。
そこで、創業30周年の節目に、企業ブランドを「メガスポーツ」と再定義しました。目指すのは、お客様の「第一想起」を獲得することです。「健康のために何か始めたい」と思ったとき、真っ先に「メガスポーツに行こう」と思い出してもらえる存在になりたい。単にモノを売る場所ではなく、健康への意識を高める場所への改革を進めています。
ーー貴社の強みや特徴を教えてください。
三浦隆司:
弊社の店舗はショッピングセンター内にあるため、最初から特定の商品を買う目的で来店される方ばかりではありません。だからこそ、スタッフの接客力にこだわっています。お客様との会話からニーズを引き出し、最適な商品を提案する力こそが、他社との最大の差別化要因です。人材のレベルアップに投資し、お客様に寄り添った提案ができるスタッフを育成することで、ネット通販にはないリアル店舗ならではの価値を提供しています。
地域に根ざしウェルネスを届ける 心躍る体験を生む変革の全貌
ーー地域ごとのシェア拡大に向け、具体的にどのような戦略をお持ちですか。
三浦隆司:
全国一律の施策ではなく、地域特性に深く入り込み、シェアを獲得していくことを重視しています。地域によって盛んなスポーツや求められる商品は異なるため、その土地の部活動需要に合わせた品揃えの強化や、地元のプロチームと連携したイベント開催など、地域色を打ち出すようにしています。
出店戦略では、新たに「アーバンステージ」の展開を加速させます。これは、都市部のニーズに特化した中型・ライフスタイル型の店舗です。大型店の出店が難しい100坪程度のスペースでも、柔軟に出店が可能です。地域で人気のあるスポーツカテゴリーに絞り、出店スピードを上げていく方針です。多様な店舗形態で価値を届け、地域の一員として信頼を築き、その地域になくてはならない存在を目指します。
ーー最後に、貴社が最終的に目指す姿を教えてください。
三浦隆司:
私たちが目指すのは、お客様にワクワク・ドキドキを提供するウェルネス企業です。店舗に来れば何か新しい発見がある、面白い体験ができる、親切なスタッフに会える。そうした感動があって初めて、お客様はネットではなくリアル店舗を選んでくださいます。スポーツ用品を売るだけでなく、お客様の心と体の健康をサポートし、人生を豊かにするパートナーとして、常に変化し続ける企業でありたいと考えています。
編集後記
「自分の経験を過信しない」。数々の変革を主導してきた三浦氏の言葉は、驚くほど謙虚だ。その根底には、現場への深いリスペクトと変化への柔軟な姿勢がある。現在進めるリブランディングは、単なる名称の変更ではない。社員一人ひとりが「メガスポーツ」というブランドの担い手として、地域のお客様と向き合う覚悟の表れだろう。地域に根ざし、人々のウェルネスを支える同社の挑戦が、どのようなワクワクを生み出していくのか。その未来に期待したい。

三浦隆司/1985年、ジャスコ株式会社(現・イオン株式会社)に入社。2012年よりイオンリテール株式会社の取締役を務めるなど、グループ内で要職を歴任。2019年にはトップバリュコレクション株式会社の代表取締役社長に就任。2023年よりイオン株式会社にて専門店担当責任者を務め、同年5月に株式会社メガスポーツの取締役に就任。2024年3月より、現職である株式会社メガスポーツ代表取締役社長として指揮を執る。