※本ページ内の情報は2026年3月時点のものです。

個人クリエイターがインターネット上でコンテンツを提供し、収益を得る「クリエイターエコノミー市場」が急速な拡大を続ける中、SNSを起点としたクリエイター共創型マーケティング支援で独自の存在感を示す株式会社Natee。同社は才能が集まる場所を象徴する「家」をモチーフにしたロゴマークを掲げ、クライアントとクリエイター、双方の才能をかけ合わせる「共創」の場を提供している。現在同社を率いるのは2025年11月に代表取締役CEOに就任した大江祐介氏。今回は同氏に、これまでの軌跡と事業の核心、そして同社が描く未来について話を聞いた。

観光業からの転身とNateeへの参画 危機で見出した使命

ーー社会人としての最初のキャリアについてお聞かせください。

大江祐介:
キャリアの始まりは、ベネッセグループが運営する株式会社直島文化村です。拠点は、アートの聖地として世界的な注目も集める香川県の直島にあり、私はこの地で約6年間、ホテル運営や店舗経営、さらには人事まで、事業運営に関わるあらゆる業務に携わりました。

私は、この美しい場所がとても好きでした。一方で、次第に「自分自身の手で、このような素晴らしい価値や仕組みを生み出す仕事がしたい」と思うようになりました。直島での日々を通じて痛感したのは、自分がいくら現場で奮闘しても、それは創業者や諸先輩方が心血を注いでつくり上げた「すでにある素晴らしい場所」でオペレーションをしているに過ぎない、という事実でした。

いつか自分もゼロから新しい価値や仕組みそのものをつくり出せる人間になりたい。そのためには、まずは何事も成し遂げられるだけの圧倒的な「個の実力」を身につける必要があると考え、島を出る決意をしました。

ーー直島での経験を経て、次なるステップとしてどのような環境を求めたのでしょうか。

大江祐介:
自分自身の実力を磨く修行の場として、株式会社リクルートへ入社しました。入社後はとにかくがむしゃらに仕事に打ち込む毎日でした。その結果、全営業社員の中でもわずかしか選ばれない通期表彰(1年目は年間10名の新人賞、2年目は年間11名の営業賞)を獲得することができました。

ただ、実績を重ねる中で、「社内でキャリアアップしても、既存の完成された仕組みの中でマネジメントの規模が大きくなっていくだけだ」ということに気づきました。リクルートは素晴らしい仕組みを持つ偉大な企業ですが、そこに留まっている限り、自分が「仕組みをつくる側」に回ることは難しいと感じました。そう考え、自らの手でゼロから事業や組織をつくり上げるために、次のステージへ進むことを決意しました。

ーー最終的に貴社へ入社された理由を教えてください。

大江祐介:
リクルートのような大企業では実現できないことを、自分たちの手でつくりたかったからです。当時の弊社はまだ十数名の規模で、拠点もマンションの一室に構えており、組織としても多くの課題を抱えている状況でした。決して整った環境ではありませんでしたが、創業者の大國領剣やメンバーと話す中で「人類をタレントに。」「Great Companyを創る」というビジョンに強く心を動かされました。すでに完成された組織に入るよりも、「ここなら私が貢献できる余地がある」と思えるほうが、挑戦しがいがあると感じました。その直感が、入社を決めた理由です。

再現性を追求してつかみ取った「TikTok売れ」の衝撃

ーー入社後はどのような業務を経験されたのでしょうか。

大江祐介:
入社後は営業を中心に、コンテンツのディレクションやクリエイターとのやり取りなど、事業に関わるあらゆる業務を担当していました。

その中で特に注力したのが、成功事例の創出と再現性の構築です。私が入社した2021年は、ちょうど、TikTokを起点に商品が爆発的に売れる「TikTok売れ」という言葉が注目され始めるタイミングでした。あるコスメ案件で、徹底的に工夫を凝らしたプロモーションを手がけたところ、3年分の在庫がわずか1ヶ月で完売するという大きな成果が出たのです。

この成功体験を起点に「TikTok売れ」を再現すべく、顧客基盤を固めながら営業活動を展開しました。その結果、入社1年目の売上高は前年比で約6倍にまで成長させることができました。

ーーCEOに就任されたのには、どのような背景があったのでしょうか。

大江祐介:
創業者の大國が次の事業(アカツキAIテクノロジーズ)に挑戦するため、既存事業を安心して任せられる存在が必要になったことがきっかけです。

私は以前から、「2つ上の視座」を持って仕事に取り組んできました。役職に就いてから視座を上げるのではなく、常に高い視座で仕事をしているからこそ、自然と役職がついてくるものだと考えていました。

「自分がこの会社を経営できるようにならなければ、会社は前に進めない。」そう覚悟を決めて仕事をしていたこともあり、2024年の年末に打診を受けた際は、迷うことなく引き受けました。CEOになってからは、オフィスの設備配置一つから会社の未来まで、全てが自分の責任範囲だと感じるようになり、見える景色が一変しましたね。

才能が響き合う「共創」の場と次代を担うプロデューサー集団

ーー貴社の強みをお聞かせいただけますか。

大江祐介:
最大の強みは、ブランドとクリエイターの双方と深い信頼関係を築き、両者の魅力を最大限に引き出し、新たな価値を生み出す「共創」の力です。私たちは単に案件を仲介するのではなく、ワークショップなどを通じて、企業のマーケターとクリエイターが直接対話し、一緒に企画を練り上げる場を提供しています。こうして生まれたフラットな共創関係が、相互の深い理解とプロジェクトへの熱量を生み出し、ブランドの事業成長に寄与するという成果へとつながるのです。これこそが、他社にはない私たち独自の強みだと自負しています。

ーー今後、貴社をどのような会社にしていきたいですか。

大江祐介:
個々の才能を支え、その価値を世の中に送り出すプロデューサー集団でありたいと考えています。私たちは、一人ひとりの才能が開花することが、世界をよりよくすると信じているからです。

弊社のロゴマークが「家」をモチーフにしているのも、ここを「すべての才能が集まる場所」であり、「挑戦するメンバーがエネルギーを得られる原点」にしたいという願いを込めているからです。その才能をビジネス面で支え、社会に大きなインパクトを与えられるプロデューサー集団になることが目標です。

ーー最後に、今後のビジョンについてお聞かせください。

大江祐介:
「面白い仕事を頼むならNateeだよね」と、世の中に広く認知される存在になりたいですね。私たちが目指しているのは単なる事業拡大だけでなく、200年先の子孫たちが笑っていられる世界をつくることです。

そのためにも、弊社を卒業した人たちが各界で名を馳せる状態をつくりたいと考えています。これは私の古巣であるリクルートがそうであるように、弊社で経験を積んだ優秀な人材が、卒業後も起業家やリーダーとして各界で活躍し、互いに刺激し合える強固なネットワークを形成している状態を目指します。「Natee出身の人はすごいね」と言われるような人材を輩出し続けること。それが社会への貢献であると同時に、関わってくれるメンバーのキャリアを豊かにすることにもつながると信じています。

編集後記

「一人ひとりの才能を支援し、世界をよりよくしていく」。大江氏の言葉からは、クリエイターへの深い敬意と、仕組みづくりにかける並々ならぬ覚悟が伝わってきた。企業のマーケターとクリエイターが対等に向き合う「共創」の場を広げ、次代のリーダーを輩出し続ける同社の挑戦は、既存の広告業界の枠を超えた新たな価値を生み出していくに違いない。才能が開花する「家」としてのさらなる飛躍に、今後も注目していきたい。

大江祐介/島根県出身。株式会社リクルートにて全社MVPなど表彰歴多数。2021年、「人類をタレントに。」「Great Companyを創る」というミッションに共感し、株式会社Nateeに入社。豊富な経験と卓越した営業スキルを活かし、ナショナルクライアントに向けた第一線での提案活動をリード。2024年8月に執行役員/SNSマーケティング事業本部の本部長に就任。翌年11月より代表取締役CEOに就任。