※本ページ内の情報は2026年4月時点のものです。

レトロで落ち着いたカラーと可愛いデザインで人気のキッチン家電ブランド「Toffy(トフィー)」を展開する株式会社ラドンナ。同社は雑貨店から家電量販店を含む幅広い販売ルートと、企画からデザイン、商品開発まで一貫して手がける開発力が強みだ。また、親会社であるキングジムグループの相乗効果を活かし、変化の速い市場で存在感を放っている。

2025年6月、同社の新たなトップに就任した木次谷健氏は、開発者としてのキャリアを経て、顧客と直接向き合うEC事業を経験。その中で培われた顧客目線の商品開発のもと、同社を次なるステージへと導こうとしている。同氏のこれまでの歩みと、事業にかける思いに迫った。

ヒット商品を生む開発者が語る 顧客視点に立つ企画の真髄

ーーこれまでのキャリアの歩みと、ものづくりに対する原点を教えてください。

木次谷健:
大学ではデザインやエンジニアリングを学び、ものづくりに携わりたいという思いから、新卒で株式会社キングジムに入社しました。同社は文房具・事務用品メーカーですが、当時から既存の枠にとらわれない幅広い企画に挑戦できる環境があると感じたことが、入社の決め手です。

入社後は開発部門に配属され、約10年間にわたって商品の企画開発を担当しました。私が主に担当したのは、創業以来の主力であるファイルやノートといった従来の「文房具」の枠に収まらない、全く新しいカテゴリーの製品開発です。

既存の概念にないものをつくるため、実績のあるデザイナーや共同開発先、生産工場を探し出し、共同で開発を進めるスタイルを多く取り入れてきました。この手法から生まれた製品で特に印象に残っているのは、自動手指消毒器の「tette(テッテ)」です。コロナ禍以前に発売しましたが、時流に乗って多くのお客様に支持される商品へと成長しました。また、海外からの仕入れ製品だった電子メモパッド「ブギーボード」を、日本市場向けにデザインして販売したことも、手応えを感じた仕事の一つです。

ーーキャリアの中で、大きな転機となった経験はありますか。

木次谷健:
最初の転機は、キングジムの開発本部からグループ会社のラドンナへの出向でした。もともと在籍していたキングジムの主力商品は文房具が主体ですが、出向先のラドンナは雑貨やキッチン家電を主力商品としており、客層も販路も全く異なりました。営業と開発が一体となり、市場の流行を素早く商品に反映させる。そのスピード感こそ同社ならではの強みだと確信しました。この経験が、私のメーカーとしての視野を大きく広げてくれました。

その後、キングジムに戻り、EC事業に携わったことで、意識はさらに大きく変わりました。メーカーでは代理店や小売店を通して販売するため、エンドユーザーであるお客様の顔を直接見る機会は限られます。しかしECサイトでは、お客様と初めて直接向き合うことになります。「どうすれば店舗に来ていただけるか」「ご購入いただけるか」を常に考え、お客様の視点を強く意識できたことは、非常に得難い経験でした。

「売れる」を追求し事業規模を拡大へ ヒットブランドを生み出す開発の指針

ーー社長に就任された際、どのような心境でしたか。

木次谷健:
開発としての出向経験や、キングジムでのEC事業立ち上げで得た知見を、再びラドンナで活かしてほしいという期待を感じ、身の引き締まる思いでした。現在の雑貨業界は非常に変化が速く、EC化の波も押し寄せています。こうした変化に素早く対応し開発力と販売力を強化していかなければならないと、気持ちを新たにしました。

そのうえで、私はメーカーにいる以上、「商品が売れることが最も大切」だと思っています。どれだけ良いものを作っても、お客様の手に渡らなければ意味がありません。商品がたくさん売れることで、従業員はもちろん、お取引先、そして購入してくださったお客様、関わる人すべてにメリットが還元される循環が理想的です。作り手の自己満足ではなく、お客様が本当に求めているものは何かを突き詰め、売れる商品を増やしていくことこそが、私の使命だと考えています。

ーー貴社の事業内容と、強みについて教えてください。

木次谷健:
もともとはフォトフレーム専業で高いシェアを誇っていましたが、現在はキッチン家電ブランド「Toffy」を中心としたインテリア雑貨・キッチン家電が事業の柱です。レトロで可愛らしいデザインと手に取りやすい価格帯が支持され、ブランド誕生から2026年で10周年を迎えました。

強みは、営業・企画・デザインが一体となり、スピーディーに商品開発を進められる点にあります。ニーズを即座に企画化し、ブランドコンセプトを軸に、市場競争力のあるプロダクトへと形にします。また、グループ会社であるキングジム深圳事務所と連携した中国工場の開拓力や品質管理体制も、私たちのものづくりを支えています。

企画から販売まで全工程を担う 売上高倍増に挑む現場の醍醐味

ーー今後の展望や目標について、どのようにお考えですか。

木次谷健:
これからは、単に商品を売るだけでなく、その商品があることで生まれる豊かな生活、つまり「コト」を提案していくことが重要だと考えています。たとえば、私たちの調理家電を使えば「こんなに美味しい料理が手軽にできる」といった、ライフスタイルの提案です。SNSやインフルエンサーの力も借りながら、お客様の生活に彩りや安らぎを添えるブランドイメージを確立していきたいと考えています。

また、生活全般を彩る提案として、現在はキッチン家電にとどまらず、掃除グッズや収納用品領域の商品展開も強化しています。生活全般に関わる領域で、「Toffy」ブランドの商品を広げていくことで、お客様の毎日がもっと便利で、もっと楽しくなるような提案を続けていきます。

これらを実践することで売上高を大きく引き上げることを当面の目標としています。キッチン家電の市場は非常に大きく、市場の大きさを考えれば、私たちのブランドにはまだ大きな成長の余地があると考えています。より多くのお客様に「Toffy」を知っていただき、より多くのお客様に選んでいただけるよう、妥協のないものづくりを追求していく決意です。

ーー貴社で働く魅力と、理想とする会社の在り方について教えてください。

木次谷健:
弊社はものづくりに深く関わりたい人にとって、非常に面白い環境です。大企業では業務が細分化されがちですが、弊社では商品のアイデア出しから工場の選定、商品企画と営業で連携した店舗への提案まで、ものづくりの全工程に携わることができます。自分の手で商品を生み出し、それが売れていく喜びをダイレクトに感じられるのが最大の魅力です。

会社の理想としては、個々の目標を達成していくことで、「成長する喜び」を社員全員で分かち合いたいと考えています。会社が成長し、利益が生まれ、それが社員を含むステークホルダーに還元されていく。その好循環をつくることが経営者である私の仕事です。成長の喜びを共有できる会社を目指していきます。

編集後記

開発者としてキャリアをスタートし、EC事業で顧客視点を体得、そして現在は経営の舵取りを担う木次谷氏。同氏の言葉の端々からは、現場感覚を失わない冷静な視点と、メーカーとしての温かい矜持がうかがえた。単なるものづくりにとどまらず、商品を通じたライフスタイルの提案で次なる成長を目指す同社。営業・企画・デザインが一体となって市場のニーズに応えるスピード感と、グループの相乗効果を最大限に活かす戦略は、これからも同社の歩みを力強く支えていくに違いない。「良いものを届けることで、関わるすべての人を笑顔にしたい」という情熱。その先には、さらなる飛躍と明るい未来が広がっていることだろう。

木次谷健/2009年大学卒業後、株式会社キングジムへ入社。商品開発部にて、デジタル文具やオフィス事務用品の開発に従事。その後、グループ会社の株式会社ラドンナへ出向し、季節家電やキッチン家電の企画開発を牽引。キングジムEC事業部企画課長を経て、2025年、株式会社ラドンナ代表取締役社長に就任。長年にわたり、文具から家電まで幅広い製品の企画・開発、およびEC戦略の最前線に携わる。