
25年の歴史を刻む株式会社太田不動産。賃貸、売買、管理、開発を自社で完結させる「総合不動産業」として地域に根を張る同社が今、劇的な変貌を遂げようとしている。牽引するのは、三代目代表取締役の太田啓斗氏。大手玩具メーカーでの経験、アパレル事業や温浴関連事業での起業という異色の経歴を持つ若きリーダーは、老舗の伝統にどのような新風を吹き込むのか。「第二創業期」を掲げ、組織改革とブランド再構築に挑む太田氏に、その原点と勝算を聞いた。
「夢中」を届ける仕事がしたい 異色のキャリアの原点
ーーまずは、太田社長のキャリアのスタートについてお聞かせください。
太田啓斗:
幼少期は、寝食を忘れるほど恐竜に没頭し、本気で古生物学者を志していました。しかし成長と共に、その熱源から離れていく寂しさを味わいました。だからこそ、大人になっても「夢中」になれる時間を届けたい。それが、私の就職活動における唯一の指針でした。
新卒で株式会社バンダイに入社した後は、営業企画やプロモーションなど最前線の現場を経験しました。華やかなイメージとは裏腹に、泥臭く数字を追い、顧客と信頼関係を築く日々。そこで叩き込まれた徹底的な「現場主義」は、現在の経営判断においても私の根幹として活きています。
ーーその後はどのようなキャリアを歩まれましたか。
太田啓斗:
「夢中になれるもの」を提供したいという思いから、独立して新たな事業を立ち上げました。最初は順調に推移していましたが、コロナ禍により対面コミュニケーションが制限され、事業の在り方を問われる局面に立たされたのです。
また時を同じくして、創業社長である父が急逝しました。当初、私自身の事業があり、事業も拡大をしており、脳裏には事業承継という選択肢は一切ありませんでした。しかし、内部に入り実情を目にすると、そこには父が遺した看板を守ろうと必死に奔走する社員たちの姿がありました。創業者の思いとそれを支える現場の熱量を目の当たりにし、残された事業を継ぐことを決めたのです。そう腹を括ったのが2022年のことでした。
デジタル化は手段 目指すは「老舗の信頼」と「ベンチャーの機動力」の融合
ーー社長就任後、どのような改革に着手されたのでしょうか。
太田啓斗:
弊社は土地の仕入れから管理までを一貫して手掛けられる点が強みですが、25年の歴史ゆえに、紙文化を中心としたアナログな業務プロセスが根強く残っていました。そこでまずは、業務のデジタル化を実行しました。
しかし、デジタル化はあくまで手段に過ぎません。効率化によって捻出した時間を、顧客と膝を突き合わせた「対話」に充てることこそが真の目的です。老舗としての信頼や温かみは守りつつ、ベンチャー企業のようなスピード感を実装する。変革と伝統のバランスを最適化させていくことが重要だと考えています。
ーー現在の課題と、描いている未来図をお聞かせください。
太田啓斗:
最大の課題は、ブランドの再定義と認知拡大です。「総合不動産」という言葉は便利ですが、裏を返せば「何が得意な会社か」が伝わりづらい。地域での知名度はあっても、一歩外に出れば埋没してしまうのが現状です。
今後はマーケティング機能を強化し、単なる「街の不動産屋」としてではなく、顧客のライフステージに寄り添い、最適な資産運用や住まいを提案できるパートナーとしての地位を目指します。現在は25名ほどの規模ですが、3年から5年後を目処に、現在の倍となる50名体制へ拡大させ、一人ひとりがよりお客様と向き合える時間を増やしていきたいと考えています。
実力主義で挑む未来 共に「第二創業期」を楽しむ仲間を

ーー組織拡大に向け、どのような人材を求めていますか。
太田啓斗:
現在、弊社では仕入れの営業担当やマーケティングの強化を進めています。不動産業界の経験はなくても、他業界で培った知見で新しい風を吹き込んでくれる方、あるいは「会社を大きくしたい」という強い向上心や努力できる気概を持つ方を歓迎します。
弊社に年功序列はありません。年齢や性別に関係なく、実力が正当に評価される環境を整えています。不動産業界は、女性が長く活躍しにくいといわれる業界ではありますが、弊社ではトップセールスとして活躍する社員や、管理職として組織を牽引するメンバーにも女性が数多く在籍しています。
ーー最後に、求職者へのメッセージをお願いします。
太田啓斗:
弊社は今、変革の過渡期にあります。完成された組織に入るのではなく、会社が変わっていく過程を自分事として楽しみ、共に組織をつくり上げていく。そんな野心を持った方には、非常にやりがいのあるフェーズでしょう。
社員が「太田不動産で働いている」と周囲に胸を張れるような組織にすること。それが私の使命だと考えています。歴史ある弊社の基盤を活かしつつ、時代の変化に合わせた挑戦を続けていく。そんな前向きな向上心を持つ方との出会いを楽しみにしています。
編集後記
「論理的でありながら、情熱的」。太田氏との対話で圧倒されたのは、その絶妙なバランス感覚だ。大手企業での厳しい現場経験と、起業家としてのゼロイチの開拓精神。双方が、老舗企業の舵取りという難局において遺憾なく発揮されている。父から受け継いだバトンを、単に守るのではなく「第二創業期」として進化させる姿は、かつて彼が憧れた「夢中」そのものを体現しているようだった。新生・太田不動産の躍進から目が離せない。

太田啓斗/1993年生まれ横浜市出身。青山学院大学卒業後、株式会社バンダイにて営業や企画、プロモーションに従事。2018年に恐竜アパレルブランド「DIN.」を立ち上げ、退職後はフリーランスとして独立。アパレル加工業、恐竜で有名な福井県の地方創生、お風呂やサウナなどのコンサルティングやイベント企画運営などを手がけ、好きなことを事業へと昇華してきた。2022年に家業である株式会社太田不動産に入社し、2025年に同社代表取締役に就任。