※本ページ内の情報は2026年4月時点のものです。

1966年の設立以来、「CREATE-創造-」を理念に掲げ、カー用品業界を牽引し続ける株式会社カーメイト。ルーフキャリアやチャイルドシート、ドライブレコーダーからスノーボードアイテムまで、その製品群は多岐にわたる。しかし今、同社は創立以来の大きな転換点にある。「良いモノを作るだけでは、これからの時代は生き残れない。むしろ、その“良さ”をどう価値に変え、どう届けるかが問われていると感じています」。そう語るのは、2019年に代表取締役社長に就任した徳田勝氏だ。農学博士として大学でロボット研究に没頭していた研究者出身の徳田氏。いかにして研究室の技術をビジネスの現場で開花させ、そして今、何を危機感として抱いているのか。業界のトップランナーが挑む、新たな「顧客体験」の創造についてお話をうかがった。

大学の研究室から企業の現場へ 「技術」を「価値」に変えた原体験

ーーまずは徳田社長のこれまでの歩みと、カーメイトへ入社された経緯をお聞かせください。

徳田勝:
元々は研究職志望でした。京都大学農学部大学院での研究を経て、神戸大学で8年ほど助手として教育研究生活を送っていました。専門はロボット開発や画像認識技術です。30年以上前の話ですが、当時から農業の高齢化を見据え「スイカ収穫ロボット」など、ロボットによる自動化や、カメラで対象物を認識する画像処理の研究に没頭していました。

転機は2003年、33歳の時です。それ以前に創業者の家族になるという家庭環境の変化もありましたが、直接的な理由は自身が関わった大学の研究を続けていく中で、これから自分はどこで研究成果を活かすべきかを意識するようになったことでした。そして「大学でかなり先の研究を突き詰めるより、企業の現場ですぐに必要とされる技術を研究し、実践してみたい。」と思うようになり、カーメイトへの入社を決断しました。

ーー入社後はどのような業務に着手されたのでしょうか。

徳田勝:
最初に取り組んだのは、工場の生産効率改善です。当時、放電灯(HIDバルブ)の製造ラインで電極の位置決めに課題があり、品質が安定していませんでした。そこで私は、市販のカメラを改造し、独自に作成した画像処理プログラムを導入しました。

結果、品質の歩留まりは大きく改善しました。次に着手したのは、社内に眠っていた膨大な「車種と製品の適合情報」を活用したデータベース開発で、現在カー用品と車両のマッチング情報を検索できる仕組みとして活用されています。自分の研究技術や取り組みが、実際のビジネス現場で「利益」や「効率」という価値に変わる。その瞬間を目の当たりにし、技術が即座に成果へ直結する実業の面白さに強く惹き込まれました。これが私の原体験です。

ーーその後は、どのような経験を積まれたのでしょうか。

徳田勝:
工場など社内向けの仕事もやりがいはありましたが、やはり「直接お客様に使っていただけるモノ」にも関わりたかった。そこで自身の強みであるソフト開発に取り組み、2010年のCES視察をきっかけにiPhoneアプリ開発に挑戦。同年にリリースした燃費管理アプリや速度警告アプリは、黎明期のスマートフォン市場で多くの支持をいただきました。実は、2017年頃の市場を牽引した代表的製品である360度ドライブレコーダー「d'Action 360(ダクション 360)」の技術的基盤も、私の大学時代の画像認識研究や、一緒に研究してきたアプリ開発メンバーの知見が源流になっています。点と点が繋がり、新たな価値を社会に提案できたと感じています。

「遊び心」を支える「品質」とは

ーー貴社が長年支持され続ける理由は、どこにあるとお考えですか。

徳田勝:
「CREATE-創造-」という企業理念の通り、世の中にないものを生み出す企画力と、それを具現化する技術力です。たとえば、弊社創立のきっかけになった1965年発売の「オートピロー」は、今や必ず車に装備されている「ヘッドレスト」のもとと言える製品です。また、近年発売した360度ドライブレコーダーは、あおり運転が社会問題化する前に市販モデルを開発し、新たなカテゴリーを作るに至りました。

ーー新しいものを生み出す際、品質面ではどのような点に注力されているのでしょうか。

徳田勝:
私たちは市販カー用品のほかに、自動車メーカーの純正品も手掛けています。品質評価においては、国内・国外の安全規格に加え独自の厳しい基準を定め、繰り返しのテストにより、事故や不具合が起きないよう信頼性担保を徹底しています。チャイルドシートでは、自社内に試験機を設けるなど安全設備にも拘っています。また弊社では、年間数十台の車両を調査しており、その調査はルーフキャリア、チャイルドシート、タイヤチェーン、ペダル等々、最大で800項目近くに及びます。新しいことに挑戦すれば失敗もあります。しかし、これらの「品質基盤」があるからこそ、開発者はとがったアイデアや遊び心のある「モノづくり」に取り組むことができると思います。

既存の枠を超えた「新創商品」への挑戦 デジタル感度で加速する企画・技術の進化

ーー今後の展望と、現在感じている課題についてお聞かせください。

徳田勝:
国内の自動車市場は成熟しており、今後は海外展開、国内向け新開発やEC、そして「車」の枠を超えたライフスタイル提案が必須です。実は、ルーフキャリアの「INNO(イノー)」や、消臭剤の「Dr.DEO(ドクターデオ)」など、各ジャンルでトップシェアを持つブランドをいくつか抱えています。海外でも著名なブランドとしては、スノーボードのバインディング「FLUX(フラックス)」もあります。しかしそれらに安住することなく、「新創商品・新規チャネル・新規カテゴリー」への挑戦を重要なテーマとして掲げています。これまでの開発にとらわれず、その3つの柱に挑戦し、育てることが課題だと思っています。

ーーそうした課題の解決に向け、現在はどのような人材を求めているのでしょうか。

徳田勝:
弊社は2018年から経営理念に「未来に向けた信頼品質でeモノづくり」を加えました。そこに取り組む技術者や企画者には、デジタル感度が高い方に来ていただきたいですね。これからは、生成AIやRPAを活用し、定型業務を極限まで削減する“ゼロタスクDX”によって、開発者が「創造」に使える時間を増やしていきたいです。製品の真価を最大限に引き出し、Web・SNS・動画などデジタルプレゼンスを活用した訴求も充実させていきたいです。

「モノづくり」をもっと進化させる。そんな熱意ある仲間との出会いに期待しています。そして、国内だけにとどまらず、私たちと一緒にカーメイトというブランドを世界に再定義できる人材を求めています。

編集後記

「研究者」の冷静な眼差しと、「経営者」としての熱い意志。徳田氏の言葉からは、その両面が色濃く感じられた。スイカ収穫ロボットの研究が、巡り巡って最新のドライブレコーダーやDX戦略に繋がっている事実は、まさにイノベーションにおける「結合」の好例だ。確かな技術と品質を基盤に、デジタルを介してその真価をいかに社会へ届けていくか。創立60年を迎える同社が、新たな才能と出会ったとき、どのような化学反応が起きるのか。同社の「第2創業」とも言える挑戦に注目したい。

徳田勝/1969年12月31日長崎県生まれ。1988年京都大学農学部農業工学科へ入学。1994年神戸大学に就職し助手として教育・研究に従事する傍ら、1997年に京都大学大学院にて農学博士を取得。2003年に同大学を退職し、株式会社カーメイトへ入社。技術研究所に在籍し、2010年に同社初のスマホアプリを開発。様々な開発を経て2019年に同社代表取締役社長に就任。2021年米MBA(経営学修士)取得。経営理念に「未来に向けた信頼品質でeモノづくり」を掲げ、DX×生成AIの活用促進に注力している。