
大使館の駐在員や来日したプロスポーツ選手などが居住する、マンションや一戸建て向けに高級家具のリースを手がける株式会社東京リースコーポレーション。代表取締役社長の林絵理氏は、かつて漫画家を志していたという異色の経歴を持つ。父親の強い意向で家業に強引に呼び戻され、倉庫の整理からキャリアをスタートさせた林氏は、バブル崩壊という苦境を乗り越え、今あるものをいかす堅実な経営を貫いてきた。いち早く電気トラックを導入し、サステナブルな社会の実現に向けた取り組みを推進する同氏に、これまでの歩みと次世代への思いをうかがった。
漫画家志望からの転身と倉庫整理からのスタート
ーーまずは、貴社に入られた経緯をお聞かせください。
林絵理:
実は、小さな頃から会社を継ぐつもりは全くなく、漫画家になりたかったんです。出版社に作品を投稿していた時期もありましたが、プロの道は厳しく挫折を味わいました。そんなときに、父親の強い説得で入社して、渋々スタートしたのが正直なところです。
ーー入社後はどのような業務から始められたのですか。
林絵理:
最初は、倉庫に散乱した家具の山を整理するところからのスタートでした。当時の倉庫は、返却されたソファやベッドが無造作に立てかけられ、足の踏み場もないような状態。それを綺麗に組み立て、見えるように整理していくのが最初の仕事です。そこから育児などを経て、在庫管理システムのIT化など、会社にとって必要なことを一つひとつ形にしていきました。また、留学の経験はありませんでしたが、学生時代の英語研究会(ESS)での経験を頼りに、働きながら海外取引や外国人との折衝に慣れていきました。
高級・大型家具への特化と「中古に見えない」メンテナンス技術
ーー貴社の事業の強みについて教えてください。
林絵理:
弊社のメインターゲットは、大使館の駐在員や海外のプロスポーツ選手など、100平米を超える住宅にお住まいの方々です。そうした大きな家具を必要とするお客様に特化している点が、独自の強みです。また、リースから戻ってきた中古家具を新品同様に綺麗にする、「中古に見えない」メンテナンス技術にも日々向上すべく努力をしています。
ーーメンテナンスには相当なこだわりがあるのでしょうか。
林絵理:
業務用の特殊な掃除機を使い、丁寧にクリーニングしています。過去には大手が参入したこともありましたが、メンテナンスの困難さのためか、多くが撤退されたようです。弊社は長年培ってきた知識と技術をもとに、お客様に満足いただける商品をお出しできるよう心がけて法人のリピートにつなげています。
サステナビリティへの使命感と「今ある資源を最大限利用する」堅実経営

ーー環境問題にも取り組まれているのですか。
林絵理:
気候危機に真摯に取り組むため、待ちに待った三菱ふそうの電気トラック「e-Canter」を導入しました。当時はトラック用の充電インフラなど課題も多く、現場は戸惑っていましたが、今では電気トラックの特性に慣れて、重宝しています。また、倉庫の屋上に太陽光発電設備を設置し、化石燃料に頼らない輸送をめざしています。
ーー環境問題に関心を持つようになったきっかけは何だったのでしょうか。
林絵理:
30年以上前、生まれたばかりの子どもがひどい喘息を患ったことが、環境問題を考えるきっかけになりました。当時は大気汚染がひどく、子どもの健康を守るために「排気ガスや排煙が原因であれば、電気自動車や太陽光発電に転換できないか」と痛感しました。それが今のサステナブルな活動の根源になっています。
ーー経営において大切にしている考え方はありますか。
林絵理:
身の丈にあった、社会貢献としての経営です。社長就任前にバブル崩壊の教訓を得て、不動産の価値が下落して負債が残る恐ろしさを目の当たりにしました。そこで個人保証の重みを痛感したため、無理に会社を大きくするのではなく、身の丈に合った、それでいて人の役に立つ経営を貫いています。
自ら考え行動できる「自走型組織」を目指して
ーー今後どのような組織を目指していきたいとお考えですか。
林絵理:
時代の変化に適応し、社長に頼るのではなく自ら考え行動できる「自走型組織」を目指しています。たとえばコロナ禍で外国人が来日できず、家具が倉庫に溢れたとき、「社長、どうしましょう」と指示を仰ぐのではなく、現場から「空き物件に家具を置いてモデルルームにしましょう」と次々にアイデアを出してくれました。すでに多くの社員がそのように動いてくれており、次世代の成長をとても頼もしく感じています。
ーー最後に記事を読む方へメッセージをお願いします。
林絵理:
弊社には、ファッション業界やデザイン系など、さまざまな業界から集まった個性豊かな社員が働いています。英語力も大切ですが、それ以上に自分で調べて解決していく力や、インテリアを楽しむ心が重要です。変化を恐れず、私たちと一緒に「サステナブルでかっこいいライフスタイル」を広めていける方をお待ちしています。
編集後記
バブル崩壊という試練を乗り越え、堅実な歩みを進める林氏。その根底には、子どもへの愛情から生まれた地球環境への強い危機感があった。充電インフラの課題に直面しながらもいち早く電気トラックを導入し、他社が撤退するほど手間のかかるクリーニングで中古家具を徹底的に再生する姿からは、信念を持って挑戦し続けるリーダーの強さが感じられる。コロナ禍の危機をもアイデアで乗り越えようとする同社の「自走型組織」への進化は、変化の激しい現代において、一つの理想的な企業のあり方を示している。

林絵理/1961年兵庫県生まれ、1983年慶応義塾大学卒業。1986年株式会社東京リースコーポレーションに入社。育児休暇、アメリカ不動産管理、シンガポールでの家具仕入業務を経て、2004年より本社に戻り、2014年、同社代表取締役社長に就任。「クライメート・リアリティ・プロジェクト ジャパン」のメンバーとして、地球温暖化対策として、太陽光発電、リジェネレーションなどに取り組んでいる。