※本ページ内の情報は2026年4月時点のものです。

株式会社MS-Japanは、会計士や弁護士をはじめとする管理部門・士業に特化した人材紹介事業を展開している。法改正や制度改正といった時代の変化を的確に捉え、他社に先駆けて新たな市場を創造することで、業界内での確固たる地位を築いてきた。創業者の有本隆浩氏は、独立を前提に入社したリクルートで、常識外れの営業スタイルを武器に全国トップの成績を収めた経歴を持つ。常に時代の先を読み、変化を恐れず事業を変革し続ける同氏の経営における信念、そしてAI化と海外展開で見据える未来について話を聞いた。

リクルートで全国1位を獲った営業術

ーー社会人としてのキャリアの原点と、入社当時に掲げていた目標についてお聞かせください。

有本隆浩:
実家が商売を営んでいた影響もあり、幼い頃から「将来は自分で商売をするんだろうな」と、ごく自然に考えていました。365日年中無休で働く父の姿を見て育ち、家業を継ぐ意思こそありませんでしたが、自分の中で「独立」以外の選択肢はなかったのです。

一方で、会社員という世界が全くの未知数だったため、独立に向けた訓練ができる環境を求め、株式会社リクルート(現・株式会社リクルートホールディングス)への入社を決めました。

入社時に掲げた目標は、独立のための大前提として「全国1位」になることでした。その目標を達成し、自らの裁量権を確保するために、入社直後、上司に3つの質問を投げかけました。具体的には「トップセールスは誰か」「その売上額はいくらか」。そして「その数字を超えたら自由にやらせてもらえるか」という内容です。倒すべきライバルと、超えるべき具体的な目標数値を明確に設定し、その結果と引き換えに、自らの手法を貫くための約束を取り付けたかったのです。

ーーどのようにして、「全国1位」の目標を達成されたのでしょうか。

有本隆浩:
人とまったく違うことをしました。他の営業担当者は、人事部へ「来年の新卒採用でリクルートブックを使いませんか」と提案していました。しかし私は、社長にしかアポイントを取りませんでした。そして、商品を売り込むのではなく、まず社長の夢を聞くのです。

事業の展望を熱心に語る社長の話をじっくり聞き、「その夢を実現するためには、会社を引っ張る優秀な人材の採用が必要ですよね」と提案します。夢を共有したうえで「経営者なら、ここで決断すべきです」と背中を押すと、数千万円の契約がその場で決まりました。このように、新しいお客様と出会い、その場で大きな金額の契約をいただく「新規・即決・大型」というスタイルを貫き、入社2年目には全国1位の成績を収めました。

時代の変化を捉え新たな市場を創造する

ーー貴社の事業で、特に大切にされていることは何ですか。

有本隆浩:
世の中の変化に合わせて、会社も常に変化し続けることです。人材ビジネスの世界では、かつての「紙媒体」が今や「ネット」へ置き換わったように、時代のニーズは絶えず移り変わります。特に、法改正や制度改正といった大きな変化には、必ず新しいビジネスチャンスが眠っています。そうした変化を誰よりも早く捉え、いち早く事業として形にするのは、経営者として当然の役割です。

時代の流れに適応できず、変化を掴めないのは、経営者として「センスがない」と言わざるを得ません。弊社が今持っている業界トップの事業は、私たちがそうした変化を捉えてつくってきたものです。

ーー具体的には、これまでどのように新しい市場をつくられてきたのでしょうか。

有本隆浩:
私は、バブル崩壊やナスダック・ジャパンの上陸といった社会の変革期に、新たな市場を次々とつくってきました。制度が変わったり、新たな法改正があった領域には、必ず「まだ誰も手をつけていないニーズ」があるからです。

今では、会社の中に会計士や弁護士がいるのは当たり前のように思えるかもしれません。でも、昔はそうではありませんでした。当時、会計士といえば監査法人で働くのが一般的で、「企業の中で働く」という選択肢はあまり広がっていなかったのです。しかし、ベンチャー企業が増え、上場(IPO)を目指す会社が多くなると、社内で会計の専門知識を持つ人材が必要になりました。また、海外に進出する企業では、国際的な会計基準に対応できる人材も求められるようになりました。

私たちは、こうした「これから必要になる人材」の動きをいち早く感じ取り、企業と会計士をつなぐ新たなマーケットをつくってきました。弁護士についても同様で、国内でロースクール制度が始まり、その卒業生の進路として企業内のマーケットを開拓したのです。その結果、今では企業の中で専門家が活躍することは珍しくありません。私たちはこれからも、社会が変わるタイミングで生まれる新しいニーズを見つけ、その市場を切り拓いていきたいと考えています。このように、社会の変革期に生まれる潜在的なニーズを的確に捉えることが、弊社の市場開拓における基本姿勢となっています。

ーー貴社が情報プラットフォームを戦略の柱に据えているのはなぜでしょうか。

有本隆浩:
弊社は、士業や企業の管理部門の方々が必要とする情報を提供する情報プラットフォームを構築したことで、この領域で圧倒的な地位を築いています。多額の広告費を投じて求職者を集めるのが業界の常識でした。しかし、弊社は10年以上にわたるメディア運営を通じて、すでに市場のインフラを握っています。管理部門の方々が情報を求めて弊社のメディアに集まり、転職を考える際にはまず弊社に登録していただくという「自発的な流れ」ができあがっているのです。

一度このインフラを握ってしまえば、後発の競合が追随することは極めて困難です。先行して市場を独占的に獲得しているからこそ、私たちは常に他社の先を行くことができるのだと考えています。

AIの全面導入と海外展開を軸に事業をさらなる進化へと導く

ーー事業を進化させるためにどのような戦略を推進されているのでしょうか。

有本隆浩:
最も注力しているのは、AIの全面的な活用です。これからの時代、AIへの対応で遅れを取る企業は、間違いなく淘汰されていくでしょう。AIは24時間365日、休みなく稼働して膨大なデータを処理してくれます。この圧倒的なテクノロジーをいかに使いこなし、適応していくかが企業の存続を左右します。

大切なのは、人がAIに取って代わられるのではなく、AIを使いこなし、コントロールする側に回ることです。弊社では、個人でも当たり前にAIを使いこなせる状態を目指しています。私たちがこの変化の流れをいち早く掴み、AIを組織の力に変えていくことで、事業をさらなる進化へと導いていきます。

ーー海外展開については、どのようなビジョンをお持ちですか。

有本隆浩:
もう1つの大きな柱が、海外展開です。すでにオーストラリアの企業を買収し、世界の経営管理プラットフォーム構築に着手しています。自社単独での展開ではなく、現地の有力企業とパートナーシップを結び、M&Aを進めていく計画です。海外には日本よりも、はるかに大きなマーケットが広がっています。まずはオーストラリアを足がかりに、カナダ、ドイツ、イギリス、アメリカといった主要なマーケットで確固たる地位を築き、世界市場を獲りにいきます。

ーー経営者として、事業承継についてはどのようにお考えでしょうか。

有本隆浩:
事業承継はきわめて重要であり、私自身はすでに次の世代にバトンを渡していく段階だと考えています。強烈なトップが一人で引っ張るワンマン経営では、組織は育ちませんし、世界では通用しません。優秀な人材に任せていくことで、人と組織が育ち、会社は永続できる。そのための持続可能な仕組みづくりを、常に追求しています。

編集後記

リクルートへの入社直後、自ら高い目標を掲げ、独自の営業スタイルで全国1位へと駆け上がった有本氏。同氏のキャリアの原点には、常識にとらわれない発想と、それを実行する強い意志があった。その姿勢は、法改正などの社会変化をビジネスチャンスとして捉え、新たな市場をつくってきた同社の歩みそのものに重なる。AIの導入や海外展開といった未来への挑戦も、すべては時代の流れを鋭敏に感じることで生まれる必然の一手なのだろう。変化の激しい現代において、同氏の語る「時代の潮流を掴むセンス」の重要性は、未来を切り拓くための確かな指針となるに違いない。

有本隆浩/1961年大阪府生まれ。実家が商売を営む環境で、将来の実業家を夢見る。大学卒業後、将来の独立を志し、株式会社リクルート(現:株式会社リクルート ホールディングス)に入社。多数の経営トップと出会い経営を学ぶ。1990年に企業と人のより良い出会いを創造するために株式会社日本MSセンター(現:株式会社MS-Japan)を設立し代表取締役に就任。2016年12月、ショートレビューから1年9カ月でマザーズ上場し、それから1年という最短で一部上場。士業・管理部門特化型エージェントとして業界No.1の実績を誇る。