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現実世界と仮想世界を融合し、新しい体験を創造する「XR(クロスリアリティ)」。この技術を駆使して地方創生や企業の課題解決に挑むのが株式会社NeoRealXだ。同社は高精細な映像技術と心を動かす演出力を掛け合わせた独自のコンセプト「XRテインメント」を掲げる。そして、観光や防災、企業研修など多岐にわたる分野で新たな価値を提供している。新卒で日本テレビ放送網に入社後、常に時代の変化の最前線に身を置いてきた代表取締役社長、安藤聖泰氏。同氏がXRの可能性に着目し、社会課題の解決を目指すに至った経緯と、その先に描く未来像に迫る。

ネット黎明期から始まった未来を見据えるキャリア

ーー社会人としてのキャリアのスタートについて教えてください。

安藤聖泰:
学生時代、特にテレビ局を強く志望していたわけではありませんでした。理系の学生として大学院への進学を考えていましたが、当時感じていたのが、2つの大きな技術的変化です。一つはPHSの登場によるモバイル通信の時代の到来。もう一つは、衛星放送の開始に伴う映像コンテンツの爆発的な増加でした。これからの時代、CG技術がテレビ制作に不可欠になると考え、就職活動の一環でテレビ局を受けたところご縁があり、この道に進むことになりました。

ーーテレビ業界ではどのような経験を積まれたのですか。

安藤聖泰:
私が入社した頃は、まさにインターネットが普及し始めた時代でした。学生時代からネットに触れていたため、これが世の中を大きく変えるという確信がありました。入社後は、放送と通信関連の業務の後、動画ビジネスの先駆けとなる「第2日本テレビ」というプロジェクトに参加。当時はまだ通信環境も整っておらず、ビジネスとしては非常に厳しい状況からのスタートでした。

テレビとネットの連携からXRへ続く挑戦の軌跡

ーーその後、立ち上げた「株式会社HAROiD」についてお聞かせください。

安藤聖泰:
株式会社HAROiDでは、テレビ放送が持つ圧倒的なリーチ力とインターネットを連携させるサービスを開発しました。たとえば、キリン「氷結」のテレビCMで、視聴者がスマートフォンを操作するとリアルタイムでCM映像に反映される、双方向の企画などを実施しました。また、テレビの視聴データを活用したビジネスも展開。その基盤は後にTVerへ事業譲渡し、放送業界全体の共通基盤へと発展させていきました。

ーー事業を譲渡された後、次はどのようなことに取り組まれましたか。

安藤聖泰:
テレビ連動事業をTVerに託した後、2019年に「株式会社LivePark」を設立し、ライブ配信事業を始めました。一貫してこだわったのは、一方的に見るだけでなく誰もが「参加」できる体験です。その仕組みは地方創生と結びついた「ライブコマース」へと発展しました。これは、視聴者の商品購入が配信を盛り上げる企画などを通じて、地域に貢献するモデルです。コロナ禍を経て事業を再編し、次なる挑戦の舞台としてXR(クロスリアリティ)の会社、株式会社NeoRealXを立ち上げました。

心を動かす独自コンセプト XRテインメントの神髄

ーー貴社の主力事業について教えてください。

安藤聖泰:
私たちの主力事業は、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)といったXR技術を活用したコンテンツ制作です。メンバーは私を含めテレビ局出身の映像制作に強い人材と、ゲーム開発経験者で構成されています。そのため映像品質には特にこだわっており、世の中では4K解像度が主流ですが、私たちは主に8Kでの制作を行っています。360度のVR映像では、人間の視野角に合わせて映像を切り取ると画質が落ちてしまいます。そのため、8K以上の高解像度でなければ真の臨場感は得られないと考えているからです。

ーーXR技術は、どのような分野で活用されているのでしょうか。

安藤聖泰:
最近特に増えているのが、地方自治体との連携です。テレビ局時代のつながりから全国の地方局経由でお仕事をいただくことが多く、沖縄県南城市の観光促進や、愛媛県の防災VR制作など、地域の課題解決に貢献するプロジェクトを手掛けています。また、企業向けにも活用が広がっており、危険な作業を安全に学ぶ研修や、遠方の顧客に工場のこだわりを伝えるプロモーション、ベテランの技術継承など、業界を問わず導入が進んでいます。

ーー貴社が掲げる独自コンセプト「XRテインメント」とは何ですか。

安藤聖泰:
「XRテインメント」とは、XRとエンターテインメントを組み合わせた私たちの造語です。エンターテインメントは、人の心を動かし、行動へと結びつける力を持っています。私たちは単に技術を提供するだけではありません。テレビ業界で培った企画力や演出力を駆使し、心を動かす体験をXRで実現すること。それが私たちの目指す姿です。この技術、企画、演出を高いレベルで併せ持つ点に、私たちの独自性があると確信しています。

「三方よし」の信念を胸にした社会課題解決への決意

ーー今後の事業展望についてお聞かせください。

安藤聖泰:
今後は企業向け事業をさらに拡大させるとともに、全国の地方自治体が抱える課題解決に引き続き注力していきます。愛媛県で制作している防災VRは、日本中どこでも起こりうる課題であるため、全国に展開できると考えています。また、将来的にはARグラスをかけることで見えない危険を可視化するなど、人々の安全を守る新しい仕組みも構想しています。

ーー事業を通じて、社会にどのような価値を提供していきたいですか。

安藤聖泰:
私の根底には常に、近江商人の「三方よし」の考え方があります。作り手と買い手だけでなく、その先にある地域や社会全体に貢献できる事業でなければ意味がないと考えています。たとえ大きな利益が出ても、世の中の役に立っているという実感なしに会社の存在意義はありません。社会課題に対し、多様な引き出しを持って解決策を提示できる会社であり続けたいです。

ーー最後に、どのような方と一緒に働きたいとお考えですか。

安藤聖泰:
ゼロからイチを生み出すプロセスを楽しめる、クリエイティブな発想を持つ人材を求めています。特に、地方や企業の課題に対し、私たちの持つ技術やノウハウを組み合わせて解決策を提案できる、企画構想力のある方が必要です。XRはまだ決まった正解がない新しい分野だからこそ、さまざまなチャレンジを楽しめる方と一緒に未来を創造していきたいです。

編集後記

テレビの登場、インターネットの普及、そしてスマートフォンの浸透。安藤氏は、常にメディアとデバイスの進化の最前線で、人々の生活がどう変わるのかを体感してきた。その鋭い洞察が、次なるプラットフォームとしてXRに向かうのは必然だったのだろう。単なる技術革新の追求ではなく、「三方よし」の考えを胸に、エンターテインメントの力で社会課題解決に挑む同社の挑戦は、私たちの未来の体験価値をより豊かなものにしてくれるに違いない。

安藤聖泰/1974年東京都生まれ。同志社大学卒業後、日本テレビ放送網株式会社へ入社。地上デジタル放送やワンセグ放送の立ち上げ、インターネット関連サービスの企画や放送通信連携サービスに携わる。2015年、日本テレビ放送網株式会社と株式会社バスキュールの合弁会社「株式会社HAROiD」を設立。代表取締役社長に就任。事業の一部を株式会社TVerへ事業譲渡し、2019年、株式会社LiveParkを設立。2023年株式会社NeoRealXを設立し、代表取締役社長に就任。XR分野を軸に地方創生など、新たな価値創造に取り組んでいる。関西学院大学社会情報学研究センター客員研究員。静岡大学情報学部客員教授。