
日本を代表する大企業の新規事業開発を支え、次々とイノベーションを生み出している株式会社Relic。同社は、プロダクト・人材・投資という3つの側面から事業を共創する独自のスタイルで、5000社以上の支援実績を誇る。創業から10年でグループ売上高100億円を達成し、次なる目標として「売上高1000億円、海外比率50%以上」を掲げる同社。その急成長を牽引するのが、代表取締役CEO/Founderの北嶋貴朗氏だ。
起業への思いを原点に、数々の現場で事業を自分ごととして捉え、成果を出し続けてきた北嶋氏。「唯一無二のパートナー」と評される同社の強みや大切にしている誠実さ、そして今後の展望について話を聞いた。
新規事業開発の原点と大規模サービスでの成功体験
ーー社会人としてのキャリアはどのようにスタートされたのですか。
北嶋貴朗:
大学卒業後、当時勢いがあった人材系のベンチャー企業へ入社し、キャリアをスタートさせました。もともと起業を考えており、それを見据えての選択でした。ところが、入社直後にリーマン・ショックの煽りを受けて業績は急悪化。私は起死回生を図るための新規事業チームへ配属となりました。
そこで痛感したのは、既存のビジネスモデルに乗って成果を出すことと、ゼロから事業を生み出すことの決定的な違いです。何もないところから事業をつくれる人材にならなければ生き残れない。そう考え、1年半勤めた後に、スキルを磨くべく新規事業専門のコンサルティング会社へ転職しました。そこでは外部の人間としてではなく、顧客企業に常駐し、一員として現場に入り込み、事業立ち上げに奔走しました。その後DeNAでもキャリアを積みましたが、この複数の企業での経験が、今の私の原点であり土台になっています。
ーーその中で、特に印象に残っているプロジェクトはありますか。
北嶋貴朗:
3社目で経験した、国内最大手通信キャリアによるスマートフォン向けポータルサイトの立ち上げプロジェクトです。当時はガラケーからスマートフォンへの移行期という、市場の大きな転換点でした。私はニュースサービスの企画などに携わったのですが、ユーザー数が数百万、数千万と拡大し、PV数が億単位で伸びていくダイナミックさを肌で感じました。
自分が企画したサービスを、電車の中で多くの人が使っている光景を見たときの感動は今でも忘れられません。自分の取り組みが世の中に届いているという実感と、ITサービスが持つ社会的影響力の大きさを学んだ、非常に重要な原体験です。
三位一体で支援する「唯一無二のパートナー」

ーー貴社の事業内容と、その特徴について教えてください。
北嶋貴朗:
弊社は「事業共創カンパニー」として、日本企業の新規事業創出やスタートアップの支援を行っています。最大の特徴は、お客様の課題に合わせて必要なリソースをワンストップで提供できる点です。
具体的には、3つの事業の柱があります。1つ目は「インキュベーションテック」。新規事業開発に特化したSaaS(※1)型プラットフォームなど、自社開発のテクノロジーを用いてお客様の課題を解決します。2つ目は「事業プロデュース」。これはいわば、コンサルティング会社、広告代理店、システム開発会社、デザインファームが一体となったようなサービスです。「ビジネス」「テクノロジー」「クリエイティブ」の各専門人材がチームを組み、企画だけでなく開発・実装まで一貫して伴走します。
そして3つ目が「オープンイノベーション」。単なる支援にとどまらず、弊社自身もリスクを取り、出資をして合弁会社をつくったり、収益分配モデルで参画を行います。
自社プロダクト、クライアントワーク、そして共同事業。この「三位一体」で総合的に支援できる体制こそが、弊社の独自の強みです。
(※1)SaaS:クラウド上のソフトウェアをインターネット経由で利用できるサービス。
ーーお客様からはどのような評価をいただくことが多いですか。
北嶋貴朗:
「唯一無二のパートナー」と言っていただけることが、何よりも嬉しいですね。単にアドバイスをするだけではなく、仲間として一緒になって事業をつくる「当事者意識」を評価していただいていると感じます。
私たちは常に「もし自分たちがこの事業のオーナーだったらどうするか」という視点を持ち続けています。自ら意思決定できる場面とできない場面が当然ありますが、自分ごととして捉え、時にはお客様以上に熱量を持って取り組む。その姿勢が信頼につながっていると思います。
信頼を構築する行動指針とグローバル市場への挑戦
ーー仕事をする上で、最も大切にされている価値観は何でしょうか。
北嶋貴朗:
弊社の大切にしている5つの価値観「Relic-ism」の一つに、「Integrity(大切な人や後世に誇れる高潔さと誠実さ)」があります。事業は一人ではできません。多くの人を巻き込んでチームで成果を出すために、嘘をつかず、約束を守り、人に対して誠実であることが不可欠です。
どれほど優秀な戦略があっても、ベースとなる信頼関係がなければプロジェクトはうまくいきません。当たり前のことかもしれませんが、これを徹底することこそが長期的な成功の鍵だと確信しています。
ーー最後に、今後の目標や課題についてお聞かせください。
北嶋貴朗:
弊社は創業からの10年で、グループ売上高100億円を達成することができました。これからの10年は、ホールディングス全体で売上高1000億円を目指し、さらには、その売上の50%以上を海外市場でつくるという目標を掲げています。
現在、日本発の新規事業でグローバル市場に勝負するために、最も注力しているのが「採用」と「認知向上」です。弊社は黒子として支援する立場が多いため、事業規模に対して一般的な知名度がまだ高くありません。特に採用市場においては、弊社の魅力や可能性をもっと伝えていく必要があると感じています。認知度を高め、志ある仲間を増やすことで、「事業共創カンパニー」として、世界へ挑戦する企業を力強く支えていきたいと考えています。
編集後記
「自分たちがオーナーだったらどうするか」。北嶋氏の言葉からは、クライアントワークの枠を超えた、圧倒的な当事者意識が感じられた。創業10年で売上高100億円という急成長は、その「誠実さ」と「熱量」が多くの企業の信頼を勝ち得てきた証だろう。次は1000億円、そして世界へ。認知度の向上という課題さえも、さらなる飛躍への伸びしろに見える。同社が日本の「新規事業インフラ」として世界で存在感を放つ日は、そう遠くないはずだ。

北嶋貴朗/慶應義塾大学を卒業後、組織/人事系コンサルティングファーム、新規事業特化の経営コンサルティングファームにて中小・ベンチャー企業から大企業まで幅広く新規事業開発や組織変革を支援。その後、株式会社DeNAに入社し、新規事業開発責任者を歴任。2015年に株式会社Relicを創業し、2021年には株式会社Relicホールディングスを設立。大阪大学大学院 招聘教員。著書に「イノベーションの再現性を高める新規事業開発マネジメント」がある。