
経営戦略の立案から実行までをワンストップで支援し、創業からわずか3年でグループ売上50億円規模を誇る株式会社koujitsu。同社を率いる代表取締役CEOの柴田雄平氏は、元料理人という経歴を持つ経営者だ。19歳で「経営者になる」と志し、パソコンも触れない状態からビジネスの世界へ飛び込んだ柴田氏。今回、柴田氏の原体験、「スキルの掛け合わせ」という考え方、そして事業戦略の第一人者として描く未来について話を聞いた。
欧州での体験が促した転機と経営者への決意
ーーまずは、キャリアの原点についてお聞かせください。
柴田雄平:
私の家は祖父の代から続く経営者家系で、父も製造業の会社を経営しており、家と事務所が一体になった環境で育ちました。そのため、いわゆるサラリーマン家庭の文化がなく、父がスーツを着ている姿を見たことがありません。作業着で現場に立ち、夜遅くまで働き、銀行の方と親しく話すような光景が日常でした。
そうした環境の中、明確に経営を志したのは19歳のときです。調理師学校を卒業して就職しましたが、体調を壊して半年で辞めることになり、その後、欧州6カ国を渡り歩きました。そこで出会ったのが、第一次産業に従事するフリーランスの人たちです。彼らは皆、「俺の街は世界一だ」「このエリアなら俺のワインが最高だ」と、仕事や商品に強烈な誇りと自信を持っており、プロ意識の高さに感銘を受けました。そして、「自分も何かのプロになりたい、経営者になりたい」と経営者の道を目指すようになりました。
ーーその後、どのようにしてビジネススキルを身につけられたのでしょうか。
柴田雄平:
日本に戻り、経営を最短で学ぶために、飲食店の運営や立ち上げ、マーケティングなどを手掛けるベンチャー企業に入社しました。面接では「27歳で独立するので、それまでに辞めます」と宣言し、「7年間で覚えられることはすべて覚える。その代わり、身を粉にして働きます」と伝えました。
そこからは文字通り仕事に没頭し、7年間で丸一日休んだのは、おそらく5日ほどです。入社当時はそれまで包丁一本の世界で生きてきたので、パソコンすら触ったことがありませんでした。最初は何もできず、上司から364日怒られるような日々でした。それでも続けられた原動力は、日々できることが増えていく喜びと、厳しく言われていた上司への反骨精神があったからです。「結果を出していつか見返してやる」という強い思いでした。
また、その会社が「結果がすべて」という実力主義だったことも私には合っていました。結果さえ出せば年齢に関係なく評価される環境で、必死に食らいついたことが今の糧になっています。
ーーこれまでに、大きなターニングポイントはありましたか。
柴田雄平:
24歳のときに、当時の社長に「君は一店舗の主になることを選ぶのか、それとも何十店舗もまとめる経営者になりたいのか」と問われたことです。それまでオーナーシェフを目指していましたが、その言葉で視座が変わりました。「多くの人を雇い、事業を拡大する側に進もう」と決めたのです。そこから多店舗展開の統括やマーケティング、商品開発まで幅広く任されるようになり、20代半ばにして経営者に近い視点で事業を動かす経験を得ることができました。
戦略立案から実行まで内製で完結する事業体制

ーー貴社の事業内容と、強みについてお聞かせください。
柴田雄平:
弊社は、マーケティング事業、ブランディング事業、Web制作・開発事業など事業を多角的に展開しています。最大の強みは、経営戦略の上流から、Webや広告運用といった下流の実行までをすべて社内で完結できる点です。お客様の課題に対して、戦略から実行まで一貫して伴走できる体制こそが、他社にはない私たちの武器です。
私たちは顧客からの依頼に対し、「できない」とは言わず、ニーズに応え続けてきました。その結果、気づけば20近い事業を内製化していました。外部へ再委託することなく、すべて自社のチームで対応できるため、スピード感が違います。機能的な価値だけでなく、コミュニケーションの密度といった情緒的な価値も大切にしています。
ーー人材育成については、どのようにお考えですか。
柴田雄平:
私は「100人の中で1位になれるスキルを3つ持てば、100万分の1の人材になれる」と考えています。私自身、料理人としての経験、マーケティングの知識、そして事業戦略のノウハウという異なる領域のスキルを掛け合わせることで、独自のポジションを築いてきました。
何か一つを極めることも素晴らしいですが、複数の専門性を掛け合わせることで、代えの利かないプロフェッショナルになれます。社内でも、この「スキルの掛け合わせ」を意識して人材育成を行っています。
実行可能な戦略思考を伝える教育事業への注力
ーー組織づくりにおいて大切にされていることはありますか。
柴田雄平:
社長と社員の距離が近く、フラットな関係性を築いていることです。役職で呼び合うことはほとんどありませんし、プライベートでも食事に行くなど、コミュニケーションが手厚いのが特徴です。
仕事においては「お客様ファースト」という共通認識を全員が持っています。「お客様のためになるなら、社内の予定よりも優先していい」と伝えており、プロとして結果にコミットする姿勢を共有できる仲間が集まっています。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
柴田雄平:
現在は、事業戦略スクール「知足(CHISOKU)」に注力しています。これは、私がこれまで培ってきた実行可能な戦略思考を体系化し、経営者や事業責任者に伝えるもので、開講10ヶ月で受講者数130名に参加いただくなど、手応えを感じています。
世の中には素晴らしい技術や想いを持ちながら、戦略不足で伸び悩んでいる企業が多くあります。そうした企業をマーケティングと事業戦略の両輪で支援し、成長を後押ししていきたいですね。
グループとして売上100億円規模は十分に目指せる数字です。しかし、私たちが本当に大切にしているのは、目の前のお客様の幸せの総量を最大化することです。その積み重ねの先に、「事業戦略といえば『知足』」と広く認知される未来を描いています。
ーー最後に、読者へのメッセージをお願いします。
柴田雄平:
私には「これがやりたい」という強い自我はなく、ただ、相手に必要とされることをやり続けてきました。私には「利他の心」という行動原理があります。相手が求めている期待値に対して、1%でも上回る価値を提供して、相手を幸せにする。それを愚直に繰り返してきた結果が今に繋がっています。
社名の「koujitsu(好日)」には、「今日も明日も、好い日にする。」という想いを込めています。たとえ失敗した日でも、何か一つ学びがあれば、それは自分にとって「好ましい日」になります。目標が見つからなくても焦る必要はありません。目の前の人を幸せにすることに没頭していれば、必ず道は開けます。私たちに関わるすべての人にとって、毎日が「好日」になるよう、これからも全力を尽くしていきます。
編集後記
元料理人という経歴を持ちながら、事業戦略の第一人者を目指す柴田氏の言葉は、激動の現代を生き抜くための確かな指針となる。パソコンも触れない状態からビジネスに飛び込み、圧倒的な没頭力でスキルと経験値を積み重ねた。同氏の強さは、その飽くなき反骨精神と「利他の心」にある。「相手の期待値に対して1%でも上回る価値を提供する」という愚直な姿勢こそが、事業成長の根幹だ。その生き様が、多くのビジネスパーソンに勇気を与えるメッセージである。

柴田雄平/1986年埼玉県生まれ。2022年に株式会社koujitsuを設立。経営戦略・ブランディング・広告運用・Web/アプリ制作・自社メディア・D2C・外食事業まで、企業成長を上流から下流まで一貫支援する体制を構築。事業戦略スクール「知足」は経営者や次世代リーダーに“実行できる戦略思考”を体系化して伝え、学びと実践を往復できる教育を提供。2024年にはグループ全体で売上約50億円を達成。